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1.プロローグ

桜がひらひらと舞い、春の温かい風が墓地を通り抜けていく。手入れの行き届いた小さな花束を手に、一人の男が静かに歩み寄ってくる姿があった。彼は桶を持ち、水を並々と注ぎ込むと、ゆっくりととあるひとつの墓の前に立ち止まった。


彼は水を柄杓ですくい上げ、地面にそっと打ち、静かに息をつく。その墓に花を添えると、穏やかに手を合わせ、目を閉じた。しばらくの沈黙の後、ふと彼の表情が緩み、少し照れたように微笑みながら口を開く。


「久しぶり」


彼はそっと花束を墓前に置き、しばらく佇んだ。季節の花々が鮮やかに色づき、静かな墓地の一角に新たな彩りを添える。風が彼の頬を撫で、遠い記憶を蘇らせるように木々の間をすり抜けていく。

彼は墓前に立ち、静かに目を閉じて一息ついた後、口を開いた。


「そっちは元気にしてるか?こっちは相変わらずだよ。なんだかんだで少しは慣れてきたよ」


ふと風が吹き、彼の髪をさらりと撫でていく。彼は小さく笑い、続ける。


「またここで報告しに来るから、そっちでちゃんと見守ってくれよ。俺も、こっちでしっかり頑張るからさ」


言葉を締めくくり、最後に彼はそっと目を閉じ深く祈るように頭を垂れた。そして、去り際に振り返り、静かに歩み去っていった。




「ありがとう」



その声が風に乗ってふわりと広がるように感じた。

そう、今日はちょうど、私がこの世を去ってから一年になる日だ。

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