デスマスター
遂に、テレナが閃光剣と呼んでいた次元斬を修得した。これで余程のスキルや魔法に出くわさない限り、負けることはないだろう。
金剛や無敵のスキルを使っていても、ゼネラルアーマーでも、空間ごと斬られたら無力だ。チートオブチートといってもいいスキルが手に入った。
しかし、このスキルは強力過ぎて、人に知られるとヤバイ気がする。囲いこもうとする貴族や、抹殺しようとすると貴族が現れそうだ。
よっぽど切羽詰まらない限り使わない方がいいだろう。
さて、取り敢えずは、頭目の尋問だ。
「お前達は何者だ?」
「トラディション伯爵家の影だ」
「どういう命令を受けた?」
「他国のスパイが鉱山のことを探りに来たから、始末しろと命じられた」
「影は、お前の他に何人いる?」
「分からない。影は、互いのことを知らない」
「鉱山の中に子供を隠しているのか?」
「知らないが、そういう噂を聞いたことはある」
俺は皆に向かって
「よし、今度は当たりだ。後は、どうやって潜入するかだな」
『私がこいつに憑依して案内することにしよう』
ルージュから念話が入り、ほどなくして、死体が立ち上がった。
「オ、オレハ、サウス、ダ」
死体が喋った。
「斬れていない鎧に着替えさせよう」
俺達は、倒した男達の死体を漁って、損傷の少ない鎧を探し出し、サウスの鎧を着替えさせた。
こうしてサウスに前を歩かせてカスタリング鉱山の坑道を守っている砦に着いた。
俺はノーボディを使いながら、サウスと一緒に門まで行き、勝手門から中に入る。
サウスは、この砦の上官として顔を知られているので、誰にも話しかけられることなく、坑道の入り口に着いた。
坑道の入り口を覆っている建物も問題なく入り、坑道の奥へと進んだ。
坑道では、誰にも出会うことなく3層まで進んで、子供達を見つけた。
同時にこの場所を支配している魔物に、俺達が見つかった。
それは、死して尚、妄執に駆られる亡者、リッチだった。
ここの子供達は、リッチの生贄となる子供達だったのか?
「ふむ、妙なものを連れて来おったの」
髑髏に空いた黒い眼窩の奥に、赤い火を灯しながら、リッチが呟く。
俺は直ぐに魔法阻害を発動して、リッチの魔法攻撃を防ぎ、縮地で駆け寄って、その首を跳ねた。
しかし、その首は地面には落ちず、宙に留まって
「カカカカ」と笑った。
そして、首の無い胴体が杖を振ると、ケルベロスが召喚された。体長が3メートルもある3首の地獄の番犬だ。そいつが3つの口からブレスを吐く前に、閃光剣で肩口から2つの首を斬り落とし、返す刀で、宙に浮くドクロにも斬り付けようとしたが、極意スキルだけあって連発は出来なかったので、スタンを召喚して、首が一つになったケルベロスに向かわせた。
首なしの胴体がまた杖を振ると、20体のスケルトンが召喚されてこちらに向かって来るので、俺もアレックスとパートを召喚してスケルトン軍団に向かわせた。数々の戦闘で活躍してきたこの2体のオークは、既にオークの域を超えた強さを持っていて、スケルトンの集団を蹴散らす。
俺はそのままリッチの胴体に近づき、杖を持つ腕を斬り落とした。
しかし、胴体から斬り離された腕は杖を持ったまま、宙に浮いた。
魔法阻害を使ってリッチの魔法を防いでいるので、俺自身も衝撃派魔法が撃てない。お互いに魔法阻害の影響を受けない召喚スキルでの応酬になっている。
ケルベロスは首を2つ失っても、スタンと互角に戦っているし、スケルトン軍団はアレックスとパートに蹴散らされた尻から、新しい軍団が召喚されて、次々とアレックス達に襲い掛かっていた。
その間、俺は何度もリッチに斬り付け胴体をほぼバラバラにしたが、リッチの頭だけには剣を躱されて、空振りを繰り返していた。
しかし、とうとう閃光剣のクールタイムが終わったので、温存しておいた無敵を使い、鎧袖一触と閃光剣を同時に使って剣を振り抜くと、剣から放たれた青白い光線が扇状に広がってリッチの頭を飲み込んだ。
閃光剣の新しい能力か?と驚いていると、リッチもケルベロスもスケルトン軍団も消え、禍々しい闇が内部で脈打つ大きな魔石が、坑道の床に落ちていた。
この魔石を見た途端、俺は『食いたい』という衝動に駆られ、思わず駆け寄って拾い上げては、齧り付いた。
夢中で魔石を食べた。食べ終わると、ドクンと心臓が鳴った。身体の中で、何かの力が暴走し、立っていられなくなって蹲った。
気がつくと、体内を駆け巡っていた力の暴走が終わり、周囲にはアレックスとパートとスタンが俺を護るように立っていた。
立ち上がって身体を調べると、外観上の違いは無いようだった。ライトボールを出して、ゼネラルソードに自分の顔を写して見たが、顔にも変化は無いようだった。髑髏のようになっていなくて良かったとホッとする。
続いて、ステータスを確認した。
名前 ダブリン
種族 人間
性別 男
年齢 8
ジョブ 捕食者7(魔物を捕食する者)、進化者7→9(魔石によって進化する者)、デスマスター
筋力 A++
耐久 B+
俊敏 B++
魔力 B++→A+
抵抗 C→B++
固有スキル スキルドレイン(接触時) 魔石進化(魔石吸収時) 魔力ドレイン(接触時)、アンデッド復活(死亡時)、ヘルゲート
スキル
武器系
両刀術1、大剣術9→11、剣術10→11、短剣術2、棍棒術3、斧術1、槍術1、暗器術1、盾術2、投擲2、強打4、強襲4、鎧袖一触4→5、破城斬1、弓術5、回転斬り1、飛斬1、3点突き1、大盾術1
格闘・身体系
無双2→5、瞬動6、回避6、格闘1、喧嘩1、噛み付き4、跳躍4、突進3、逃げ足1→3、蹴り1、踏みつけ1、頭突き2、後ろ回し蹴り1、あびせ蹴り1、空中回転1、スリップ1、バックステップ3、サイドステップ3、縮地1、木登り1、枝渡り1、体当たり1
能力上昇系
怪力9→10、剛力7→8、敏捷6、身体強化9、皮膚硬化5、頑丈5、金剛1、聴覚強化5、夜目7→8、俊足4、長駆1、無呼吸耐性8、潜水5、強靭身体2、生命力3、皮膚筋肉硬化2
技能系
航海術1、操舟1、穴掘り1、陶芸1、目利き1、錬金術1、薬草採取1、酒造1、鉱物精錬1、鍛冶1、木工1、調理1、裁縫1、織物1、彫金1、交渉術1、暗算1
隠蔽系
隠密2、隠蔽3、目くらまし1、騙し討ち1、裏切り1、詐欺1、誘拐1、横走り1、岩這い3、インビジブル1、待ち伏せ1
探査系
気配察知10、魔力探知3、聞き耳1、方向知覚1、熱感知7、超音波5、警戒1
魔法系
風魔法11、音魔法11、土魔法6、火魔法9、水魔法7→9、闇魔法5→8、魔力回復3、雷撃魔法1、閃光1、闇弾1、雷撃1、光魔法1、冥界魔法5
支援系
気力譲渡1
召喚系
ゼネラルアーマー召喚、ゼネラルソード召喚、眷属召喚1、オーク召喚2、スタンジー召喚1、リッチ召喚1
支配系
統率3、眷属強化1、仲間呼び1、魔物テイム1、獣テイム1、精神干渉2→5、ノーボディ1→3、威圧1→3、脅し1、フィア1→4、束縛1、冥界支配
精神制御系
マインドブロック2、精神統一3
同調系
以心伝心2
耐性系
異常耐性1→4、毒耐性1、酒豪1、熱耐性1
呪い系
バインドワード1、ファントムファイア2→3、魔法阻害1→3、ファントムウォーター3、呪い無効、カース1→6、セイントファイア1、ブラックファントムファイア1、アンデッド化
調剤系
操毒1、毒薬調合1、調剤1、調薬1
回復系
再生1、癒し1、起死回生1、ブラッドスライム5、超再生2
その他
鑑定2、無敵1、天賦の才1、悪食5→6、成長加速1、床上手1
魔物スキル(使えない)
飛行1、羽刃1、嘴攻撃1、鉤爪1、狼爪斬1、遠吠え1、雄叫び1、繁殖力1、陸上呼吸1、ハサミ撃ち1、脱皮1、多足1、巻き付き1、毒牙1、雲霞1、擬態1、刺突舌1、咆哮1、風斬爪1、毒針1、羽音1、鉄鎧1、創毒1、毒牙、悪臭1
称号
ゴブリンの捕食者
(ゴブリンに対しての攻撃が防御無視になる。コブリンからの攻撃はダメージが半減する)
将軍→王
(眷属を統べる)
インビジブルの捕食者
(相手のインビジブルを無効に出来る)
デスマスター
(冥界属性の眷属支配)
今度の魔石は劇薬だった。一瞬、食べなきゃ良かったと後悔したぐらいだ。
デスマスターっていうジョブと称号が付いてしまった。そのせいなのか、アンデッド復活(死亡時)なんていう物騒な固有スキルが現れている。死んだら、アンデッドとして復活するだと。これは何か、俺には安らかな死が訪れないということか?これはもう呪いじゃないのか?
禍々しい闇が内部で脈打っていたから、普通の魔石じゃないとは思ったが、ここまでとは思わなかった。だか、まあ、死ななければいいだけの話だ。取り敢えず、そう思っておこう。
とはいえ、よく考えたら、これくらいのリスクは負わないと、この魔石進化に付き合えないのだろうと考え直した。もう、こうなったらとことん進化してやるさと、開き直らざるを得なかった。それほどの変化があったのだ。
次がヘルゲートだ。これは地獄の門を開けるスキルか?ヘルゲートを開くと何が起きるのか?説明には、地獄の門を開くとしか書いていない。でも、これって次元魔法の一種だよな。
この魔石を食った効果は、デメリットが多くないか?
しかし、メリットもあった。リッチが召喚出来るようになった。それと魔法が増えた。アンデッドを操る冥界魔法だ。闇魔法の熟練度も跳ね上がっている。
さて、もっと自分のステータスを確認していたいが、この階層には子供達が閉じ込められているので、助けなければならない。
しかし、どうやって子供達を連れ出せばいいのか?その手段に頭を捻った俺は、リッチを召喚することにした。




