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峡谷

翌朝、馬車とディアスは厩舎に預けて、テントや寝袋代わりの毛皮と食料などをロープで括ったり、袋に入れて背負い、街を出た。

街の南東には、ナンガブール山の北西側から西側に向かって広がる、低い山と峡谷からなる起伏に富んだ一帯がある。森林もあれば、岩山もあり、多種多様な魔物が潜み、いくつもの亜人の集団が潜んでいる。

俺達の目的は、強い魔物の魔石を吸収して、自分達を強化することなので、出来るだけ森の奥まで入って、強い魔物を探すつもりでいる。

森の入口付近は特に変わったことはない。イエローエイプが石を投げつけてきたり、フォレストウルフが襲ってきたりと、散発的に魔物と遭遇するだけだ。

その先に進むと、ナンガブールの山麓から、魔物や亜人がナザニエールの街に雪崩れ込んでくるのを防ぐ役目をしている細長い峡谷がある。

街からこの峡谷まで、近い所で半日、遠い所では3日程の距離があるが、金になる大物を狩るには、この峡谷を越えて森や岩山の奥まで足を伸ばす必要があるらしい。峡谷に行かずに街の近くで狩りをしている初心者の冒険者は、この街にはほとんどいないらしい。

俺達は夕方の少し前に峡谷に着いたが、峡谷を渡るのは明日にして、その手前で野営をすることにした。

翌朝、峡谷の淵から降り口を探すと、崖は蔦や植物に覆われていて、どこからでも降りて行けそうだ。

とはいえ、崖の下までは20メートルはあり、いきなり降りてしまうのも危険なので、土ゴーレムを創って、試験的にゴーレムだけで崖を降ろしてみた。

いくら蔦や植物が隙間なく生えて、体重を支えるものがあるといっても、足場の悪い崖でゴーレムを降ろしていくのは無理だったようで、10メートルほど降ろしたところで足場が崩れて、ゴーレムは崖の底まで落下していった。

すると、そのゴーレムを目がけて、巨大な黒い帯が襲い掛かった。その黒い帯はゴーレムを包み込んだように見えたが、ゴーレムがただの土だと悟ったのか、すぐに離れて行って崖下の蔭に姿を隠した。

「あのデカいムカデのような奴は、ランディエンゴか?」と俺が声を漏らすと、

「ジャイアントランディエンゴだ」とルビー。

「確かあいつは、剣も火魔法も効かなかったよな?」とルビーに確認する。

「単純に、節のところを斬ればいい」と、ルビーが素っ気なく答えた、

「簡単に言うなよ。前に、ランディエンゴを退治したときは、剣が効かないから、モーニングスターと盾を使ったぞ」

「剣が効かないのは、殻に斬りつけるからだ。節を狙って斬り落とせばいい」

「あんなに動き回っているのにか?」

「剣の熟練度が15もあれば出来る」

「俺の熟練度はまだ10でしかないぞ」

そのとき

「あっ」という声が上がって、クレラインが足を滑らせたように崖から落ちかけた。

俺が「危ない」と叫びながらクレラインの革鎧を掴んで、落ちるのを引き留めて、その体を無理に引き上げると、クレラインの足首に何かが巻き付いていた。

「人食い蔦だ」とルビーが言いざまに、クレラインの足首に巻き付いていた蔦を剣で断ち斬る。

そのとき、崖の淵から何本もの蔦がはいあっがって来て、俺達に伸びて来た。

「退け」俺は、クレラインを抱きながらバックステップで、後ろに下がった。

オーリアとルビーも後ろに下がる。

更に後ろに下がりながら、俺達の足元に伸びて来る蔦を剣で斬りながら10数本斬り捨てると、人食い蔦は諦めたのか、崖の下に戻っていった。

「もう少し下がろう」

俺達は崖の淵から20~30メートル下がったところで警戒する。

「油断も隙も無いな」と俺。

「さっきは、助かった」とクレライン。

「気にするな。それより、この崖は危険だ。本当に、この峡谷を越えて行く冒険者がいるのか?」

「ああ、かなりいると聞いている」ルビー。

「崖の下にいる大ムカデは、どうする?」と俺は、またルビーに話しかける。

「土ゴーレムであいつの動きを邪魔しながら節を狙え。行くぞ」

と言うなり、ルビーは左手の剣を振り上げ、崖に駆け寄ると駆け降りて行った。

「おい、待て。くっ、仕方がない、俺も行く。オーリアとクレラインは、俺達が安全を確保したてから降りてこい」

俺は、オーリアとクレラインに上で待つように指示してから、ゼネラルアーマーを召喚して、ルビーを追いかけて崖を駆け降りた。

ルビーは既に、崖の下の蔭から現れた大ムカデと戦っている。

長さが50センチはある交錯する長い牙を、ルビーが剣で弾いて、固い殻の節に斬り込んでいく。

そのとき、後ろから、新手の2体の大ムカデが現れて、俺に襲いかかって来た。

俺は、すぐに2体の土ゴーレムを創って、大ムカデへの盾にする。

ガチガチ、ガチガチと、大ムカデの牙が土ゴーレムに咬みつく音がする。

俺は、近い方の1匹に狙いを定め、瞬動と鎧袖一触を発動させて、直径1メートルもある頭に剣を打ち込み、硬い殻ごと頭を2つに斬り裂いた。

そのときには前の大ムカデを片付けたルビーが、俺の横を抜けて、もう1匹の大ムカデ頭を節のところから切断した

周囲から人喰い蔦が伸びて来るが、火魔法で火炎を放射して、蔦を燃や尽くす。こうして大ムカデを3体を倒したので、オーリアとクレラインに崖を降りて来るように合図をした。

大ムカデから魔石を採り出し、まずルビーが右手で吸収する。俺も、嫌だったが、魔石を食べた。そこへ崖を降りて来たオーリアもルビーから魔石を受け取って食べた。

ルビーとオーリアは、その魔石から、俺は既に持っている岩這い1、耐耐性1、夜目1,人間には使えない毒牙1を得た。それは、以前に俺がランディエンゴからドレインしたスキルと同じスキルだったので、俺のスキルは増えなかった。


ルビーとオーリアが無事に強化されたので、峡谷の底を反対側まで歩く。

峡谷の底といっても、平らではなく少し上り下りしなければ進めない。50メートルくらい歩くと反対側の崖の下に着いたが、その崖から何かが崩れて来た。

ルビーが「蜘蛛だ燃やせ」と叫ぶ。

その声に応えて、俺が前方にファイアウォールを展開する。

雪崩のように落ちて来たのは、大きさが30センチもあるタランチュラのような蜘蛛の大群で、ファイアウォールで燃やされながらも押し寄せて来て、新しくアースウォールを地面からせり上げる。

しかし、アースウォールも越えて蜘蛛の雪崩が押し寄せて来ようとしたので、ファイアトルネードを前方の崖に打ち込んだ。

壁に張り付いていた蜘蛛の大群が、左右に分かれて逃げ出した。俺は、ファイアトルネードの数を増やして、蜘蛛の大群を燃やし、周囲50メートル程を、燃やし尽くした。

蜘蛛が燃えた後には、焼け焦げた岩と土だけが露出している反対側の崖が見えていた。

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