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耐火ゴーレム

フレイラは見た目は元気になったが、内臓の傷がまだ完治していない。

医者にも診てもらったが、内臓の縫合手術を行えるような医療は、この世界にはない。そうかといって、ラノベのような回復魔法やポーションのような便利なものも無い。この世界の最高の医療薬でもある薬酒は、地球の薬より遥かに効き目が高いが、それでも、千切れた内臓が見ている間に再生するような効果はないので、内臓に達したフレイラの刺し傷が治るのには数カ月程かかるだろうという見立てだった。

その傷口も、俺のブラッドスライムが包み込んでいなければ、この世界の医療レベルでは、フレイラを救う手立てが無く、とっくに死んでいただろう。俺のブラッドスライムは、どういう原理か分からないが、損傷した内臓や血管の替わりを務めているようだった。

ステータスに、浸食中という表示があるので、ひょっとしたら、その部分は既に人間の身体ではなくて、ブラッドスライムに置き変わっているのかもしれない。

そういう訳でフレイラは、この宿屋でフロディアとテミスを護衛に付けて、長期療養させている。


その間、俺は、この宿屋と騎士団宿舎を行き来している。明るいうちは、騎士団宿舎に居て、夜はフレイラの宿にいる。もちろん、女達の相手は、ちゃんと務めている。


午前中は、もっぱらルビー相手に、剣の訓練をしている。

ルビーの剣術も熟練度が17にまで回復しているし、俺の剣術熟練度も、ようやく10になった。もう少しで、ベテランを脱して上級者になる。

クレライン達も剣の腕を上げていて、クレラインは剣術が13に、オーリアは短剣術が12になっている。デュエットも腕を上げているが、上達は俺より遅い。デュエットは、眷属でも奴隷でもないので、ステータスを見ることが出来ないが、剣術は8か9というところだろう。


ある日、パティが

「刺客が居なくなったから、図書館に行きたい」と言ってきた。

「図書館?」俺がおうむ返しに聞くと、

「付いて来てくれるかい?」と聞くので、

「もちろんだ。まだ、安全とは限らないからな」

「じゃあ、明日にでも行ってみようよ」

「私も行きたい」とアルミが手を挙げながらアピールする。

「よし、アルミも一緒に行こう」

「それなら、護衛に私も行かないとね」とルビー。

「私も行ってみたい」とデュエット。

「皆で出かけてしまうと、ここが手薄になるだろう?ダブは、ここの護りも頼まれているんだろう」とオーリアは全員を見回して、

「仕方がないね、私たちが残るよ。クレライン、あなんたも残るんだよ」

「えっ、私も?仕方がないわね。残るわよ」とクレライン。

こうして、次の日は、朝から王都の図書館に行くことになった。

パティは王都で工房をつくるために、まず、図書館で工芸の本を探した。

曜変天目に似た焼き物は、この世界にもあるようで、陶芸の本には、それについて書かれていたそうだ。


数日後、パティが漸く新しい窯の設計図を描き終えたと言ってきた。図書館で学んだ知識が随分役に立ったということだ。

アンデオンから運んで来た窯はそのまま使って、その周囲を覆うように、もう一つ窯をつくるらしい。そして、外側の窯でセンネンブナを燃やし、内側の窯をその熱で熱くして、間接的的な熱で焼き物を焼くつくりにするそうだ。


その外側の窯を作るのは俺も手伝わされた。土魔法と火魔法で、耐火煉瓦を造らされたのだ。普通の煉瓦ならともかく、耐火煉瓦は鉄が溶ける温度でも大丈夫なはずだから、それを造るには1100度を遥かに超える熱が必要なはずだ。

だが、この世界でそんな高温に耐える設備を造ろうとすれば、貴族でないと破産してしまう程、金が掛かる。そこで、金がかからない、俺の魔法の出番になったというわけだ。

煉瓦の元になる粘土を、土魔法で整形して固めながら、火魔法で土の温度を上げいく。しかし、出来上がった煉瓦を鑑定すると、普通の煉瓦しか出来なかった。

結局、3日かけて、やっと耐火煉瓦が出来るようになった。

その後、4日間かけて、必要な数だけの耐火煉瓦をつくった。

しかし、この作業のおかげで、土魔法4が6へと、火魔法4が8と熟練度が上がった。同時に、応用魔法である耐火煉瓦魔法を覚えた。

するとパティが、「耐火煉瓦魔法だって。素敵!耐火煉瓦魔法が使えたら、それだけで大金持ちになれるよ。旦那にした男が、耐火煉瓦魔法が使えるようになるなんて、私は何て運が良いんだろう」と言って、大喜びで、俺に抱きついてきた。

新しい窯は出来たが、窯を始動するには、まだ3カ月程かかるそうだ。


パティは、ルビーと一緒に行った冒険者ギルドで耐火煉瓦づくりの仕事を見つけてきて、俺に耐火煉瓦を造る仕事をさせるようになった。

耐火煉瓦は20個焼いて金貨1枚になる。60個焼くと金貨3枚だ。

金貨3枚は、日本円にすれば、45万~60万円位だ。午後の仕事だけで、これだけ稼げれば、確かにパティの言った通り、大金持ちになれそうだ。

毎日、安定してそれだけ稼ぐとパティは喜んでくれるんだが、気持ちまでサラリーマンのようになってしまいかねない。


土ゴーレムを創る魔法を見せてもらった土魔法使いのベテランのアリシアから指導を受けて、応用魔法のゴーレム魔法を使えるようになった。しかし、ただの土ゴーレムを創るだけでは物足りなかったので、耐火煉瓦づくりで身に付けた耐火という性質を土ゴーレムに与えることで、耐火ゴーレムを創り出せるようになり、耐火ゴーレム魔法を覚えた。さらに同時に、火魔法で火炎ゴーレムを創り出せるようにもなっていた。

耐火ゴーレムは、土ゴーレムに比べて、かなり硬く、グラスウルフの牙くらいでは、文字通り歯が立たない。火炎ゴーレムは火魔法での攻撃ができる。この2種類のゴーレムは、野営を襲って来る魔物との戦闘に威力を発揮しそうだ。


また、フォグという奴が使った霧魔法の練習もしている。

『霧の発生の原因は何だったっけ?空気中の水分が飽和したときに霧が発生するんだったよな。ということは、水魔法で出す水を、噴霧するように出すか。それとも、火魔法で火を出してから、風魔法で冷やすかだな』

掌に乗るような、ミニサイズの魔法でいろいろと実験を繰り返した後、ついに霧をつくることに成功した。

まず、掌の上にろうそくの炎ぐらいの火を創り出す。そして、その火を中心に、直径10センチのミニトルネードを創る。

小さな火の熱量を上げ、ミニトルネードが温まったら、水魔法をミニトルネードに混ぜ込み、水分を含んだミニトルネードを創る。そこで火魔法を消して、新しい風をミニトルネードに混ぜ込んでいく。ミニトルネードの温度が下がり、含まれていた水分が、霧となって放出された。これで霧の発生が魔法のプログラムに書き込まれたのか、次からは、トルネードを創らずに、いきなり霧を創り出すことが出来るようになった。ステータスには現れないが、応用魔法の霧魔法を習得した瞬間だった。


そうこうしているうちにテレナリーサが戻って来て、俺も煉瓦焼きばかりしていられなくなった。

テレナから、後で呼ぶから待機していてくれと言われたので、俺は今、スイートルームで待機している。

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