大誘拐団 9
その後、パティ達の元に行った。
「お帰り」とパティ。
「やっと帰ったかい」とオーリア。
「女が増えたね。この部屋のベッドは8つあるけど、直ぐに、足りなくなりそうね」とクレライン。
「お帰り、だけど、遅いよ」とアルミが膨れる。
「すまんすまん、皆のことを放っておいた訳じゃないんだ。仕事だからな。それとデュエットが今日からここに住む。仲良くしてくれ」
「分かっているわよ。アルミが、上に移動してくれるから、デュエットは、この下のベッドを使ってもらうわ」とパティが面倒見の良さを発揮している。俺が戻る前に、話し合っていたようだ。
「皆は、この部屋に閉じこもっていて退屈じゃなかったか?」
「アルミに陶芸を教えているから、私達は、大丈夫だよ」とパティ。
「私達も、騎士達から剣を習っているから、気晴らしになっている。デュエットも一緒に剣を習うってさ」とクレライン。
「今回のことで、エレナさんから、たっぷりと報酬が出るらしいから、お祝いをしましょうよ」とパティ。
「えっ、報酬の話は、してなかったな」と俺が言うと、
「代わりに、私がしておいたわよ」と上機嫌なパティ。すっかり、しっかり者の奥さんになっている。
そのとき、扉が開いて、ヴィエラとアリシアが入って来た。
「皆、揃ってるわね」とアリシアが部屋を見渡して、
「家族が増えたから、いえ、まだ増えるみたいだから、部屋替えをしなさいって、テレナ様の指示が出ましたわ」とアリシア。
「家族?」
「こんなに女を増やしておいて、家族じゃないと言う気?」とアリシアが睨む。
俺はビビって、
「いや、家族だ。そうだ、俺達は家族だ」と、慌てて合槌を打つ。
「皆、あなたの女なんだから、自覚を持ってよね」とヴィエラ。
そんなことを言われても、ヴィエラとアリシアは、俺の女という気がしない。俺の方が、この女達の情夫にされているような気がしてならない。
「部屋を替えると言っても、何処に行くんだ?」
「案内するから付いて来て。荷物は、置いておいて」とアリシア。
ゾロゾロと廊下を歩き、階段を上って3階に行く。この建物は3階建で、1階は会議室や集会場、食堂や調理場、2階と3階が騎士の部屋と執務室で、寝室だけでも60以上あり、屋敷と城の中間位の規模がある。
3階はエレナの執務室と寝室を始め、幹部達の部屋がある。
アリシアは、3階の奥にあるエレナの寝室の隣の部屋の扉を開けた。
中に入ると、スイートルームのようになっており、真ん中がリビングルームになっていて、左右にドアが1つずつある。そのとき、ラミューレが部屋に入って来て、「アルミちゃん、甘いものがあるから一緒に食べましょう」と声を掛けて、アルミを連れ出していった。
アリシアは、片方のドアを開けると、その奥はキングサイズのベッドが3つ置かれた寝室になっていた。
「このベッドは4人用よ。この部屋で、一度に12人が寝られる。ここが、今日から私達の部屋になるわ。リビングの反対側の扉はエレナ様の寝室に繋がっていて、こちら側からは開かない。エレナ様から呼ばれたら、お相手をしてね」とアリシアが俺に微笑む。
「個人のベッドはないのか?」と聞くと、
アリシアが、「あなたには要らないでしょ。第一、あなたに、そんな暇は無いわよ。皆、飢えているんだから。さっ、さっそく、ベッドを試してみましょうよ」と言いながら、俺達が入ってきたドアを閉める。
『えっ、部屋に閉じ込まられたのか?』と驚いていると、ヴィエラとアリシアにベッドに引き倒される。その後は、6人の女が次々と俺に跨ったり、覆い被さったりして、夕食の時間まで、女達が止まらなかった。
「ふ~、ちょっとだけ満足したわ。何日もご無沙汰だったからね~」とパティが言う、
「まだ、足りないね~」とオーリア。
「ねえ、夜はテレナ様のお相手をするんでしょう。だったら、その前に、私達とたっぷりやってよ」とアリシア。
結局、テレナが寝室のドアを開けて、俺を呼びに来るまで、6人の女は止まらなかった。本当に、この世界の女は肉食獣だ。しかも、その後、俺はテレナに手を引かれて寝室に連れ込まれ、朝までしっかり搾り取られた。いや、テレナに搾り取られるのは大歓迎なんだが、言葉でのコミュニケーションが出来ていない。一方的に、誰かのペースで事が進んでいく。その誰かとは、他でも無いテレナなんだが。
翌日、俺はテレナのベッドでゆっくり眠らせてもらった。あの部屋に戻ると、肉食獣の檻に投げ込まれたような感覚になるので、テレナ以外誰も入って来ないこの部屋は居心地がいい。惰眠を貪っていると、ラミューレに起こされた。ラミューレは、騎士でありながら、テレナの付き人も兼ねているそうで、掃除をするからと、テレナの部屋を追い出された。
腹が減ったので、食堂に行くと、パンが残っているだけたったが、そのパンをもらって食べていると、
「やった起きて来たのかい」とオーリアが横に座る。
「朝は早かったのか?」と聞くと
「日の出から訓練が始まる」と教えてくれた。
「アンデオンの闇ギルドから、何か仕掛けてきていないか?」と聞くと、
「今のところはね。でも、まだ油断は出来ない。それに、あんた、今度は、貴族の同盟相手に喧嘩しようとしてるんだって?」
「それは、成り行きでそうなっただけだ。そういえば、オーリアの意見を聞きたいことがあった。桟橋で情報屋というのに出会ってな、攫われた子供は海賊に渡されているという情報を買った。金貨3枚だ。そいつは何者だと思う?」
「そいつは情報屋だと名乗ったのかい?」
「そう言われてみると、名乗らなかったな。ただ、俺が情報屋かと聞いたら頷いて、手を差し出して、情報が欲しかったら金を出せっていう感じだった」
「たぶん、そいつは情報屋なんかじゃないね」
「やっぱりそうか。なら、何者だと思う?」
「王都の影じゃないか」
「王都の影?」
「国の隠密部隊だ。もう目を付けられて・・・、いないわけはないな。厄介だな」
「何が厄介なんだ?」
「あんたが熱を上げている女さ。公爵家の者なんだろう?もう、国のゴタゴタに巻き込まれ始めているぞ」
「ああ、それは感じている」
「あんたが、ここまで夢中になっていなけりゃね」
「いなけりゃ、何だ?」
「高嶺の花だから諦めなって諌めるところだけどね~。まあ、今更、仕方がないか。気をつけて付き合いなよ」
オーリアの忠告は分かるんだが、確かに、今更だ。もし、エレナが底なし沼だとしても、俺はもう、首までどっぷりと浸かってしまっているような気がする。
「こちらで独自に調べた情報だと、ゼネーブ川を使って相当な子供が運び出されているようだ」と、テレナリーサが書類を机の上に置いた。その書類には、宰相のサインが入っていた。
第5騎士団の団長は、その書類を読むと、
「確かに、我々は街道で誘拐犯を捕まえたし、街道の監視は続けなけらばならない。しかし、第5騎士団の員数は多い。川岸の捜索に少しぐらい人数を割いても、街道の捜索に影響は出ない」と結論を出した。
この決断で、第5騎士団から100人余りの加勢を受けた第3騎士団は、ゼネーブ川の河岸の倉庫を片っ端から捜索して、子供が捕らえられていた倉庫を幾つか発見し、総勢で150人近い子供を保護した。そして、それらの倉庫の持ち主と、倉庫を借りていた商会が、捜索を受け、180人余りの関係者が捕縛された。これが世間に、王都の大誘拐団として知られる事件となった。




