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静養

誘拐から助け出したアルミは、かなり衰弱していただけでなく、直ぐに高熱を出してしまい、パティが付きっきりで看病してくれることになった。護衛を失敗した責任を感じていたラミューレも、騎士団の仕事を免除されてパティを助けてくれている。

あの後、第3騎士団と衛兵隊が倉庫を制圧し、50人以上の犯罪者を捕縛したそうだ。

取り調べによると、スラムの犯罪組織の一つと、アンデオンの闇ギルド、それに加えて、何故か王都近郊の街道を狩場にしている盗賊団の3つの組織が組んで、総勢80名からなる犯罪者集団が出来上がっていたらしい。

俺が倉庫の2階で殺したのは、男の方がスラムのギャングのボスで、女の方がアンデオンの闇ギルドのナンバー2だったようだ。その他に、スラムのボスの家の前で大勢殺したが、これは、スラムとアンデオンのギャングだったらしい。

街道の盗賊のボスは、生け取りにされ、金で雇われただけだと言い張っているが、取り調べが終われば縛首になるそうだ。

もっとも、俺たちはこの捕縛劇には加わっていない。それは、王都の治安を預かる騎士団や衛兵隊の仕事だからだ。

俺達は何の権限もないだだの一般人で、誘拐された身内を取り戻すという一点でだけ、ああいった行動が許されただけのことだ。それもテレナリーサの一存で、かなり大目に見てもらってのことだから、テレナリーサがいなければ、俺達は何もさせてもらえなかっただろう。

この事件で疲れ切った俺達は、暫くは騎士団の宿舎から一歩も出ないことにして、静養することにした。


アルミを誘拐した女からドレインしたスキルは、地形戦術というものだった。

地形戦術?ラノベによく出てくるマップじゃないんだよな。

鑑定を使って調べみると、


地形を戦術に活かす力が高まる。


戦術家としての力が高まるわけだ。軍師みたいになれるのか?

と思って、使ってみようとしたが使えない。

頭の中にマップでも出てくるのかと思ったが、出てこなかった。

そうかといって、地形を思い浮かべてみても、それに相応しい戦術が頭に浮かんでくるわけではない。

困ったときのオーリア頼みで、

「オーリア、地形戦術というスキルを知っているか?」と聞くと、

「知らないね。何もかも私に聞くんじゃないよ。私は、悪党ならこうするってことなら答えられるけど、他のことは知らないからね」

頼みの綱が切れた思ったが、クレラインが、

「スキルは知らないけど、軍隊で地形戦術の演習があると聞いているよ」と言ってくる。

「どんな演習をするんだ?」と聞くと

「地形を生かした戦い方を学ぶらしい」

「具体的に言うと、どんなことだ?」

「私は傭兵で、軍人じゃないからよく知らないけど、例えば、高い土地と低い土地があれば、高い土地に陣取る方が有利だけど、ただ高い土地に陣取るだけじゃ効果が薄い。そこで、高い土地に陣取った利点をもっと活かす方法を考えるらしいよ」

「例えば?」

「例えば、そうだね、高低差があるから、上から石を落とす。陣地の高さを生かすために石垣を築く。低い陣地を水攻めにする。そういったことを組み合わせて、勝利をより確実なものにしていく方法を学ぶらしいよ」

「なるほど、野戦には必要な技術だな」

「野戦だけじゃないよ。街の中でも、同じ理屈さ。何処の通りに兵を伏せたり、何処の通りから攻勢に出るか、どうしたら地形を十分に生かした攻守が出来るかを考えていくのさ」

「要するに、地形を生かした戦術ということだな」

「まあ、そんなところだよ」

『アルミの誘拐の手際が良かったのも、俺とテレナリーサが洞窟の中で水攻めにあったのも、このスキルが働いていたせいか?スキルというのは、目に見える形で働くスキルばかりじやないんだな。これは要注意だ。


人工呼吸の形でキスをしてしまったテレナリーサだが、PTSDはもう治ったようで、人工呼吸のリクエストは、残念だがあれからない。

普段は、そんなことは無かったように澄ましている。もっとも仮面のせいで表情が分からないが。

俺に気があるのかないのか、全く分からない。もやもやが消えないが、テレナリーサに言い寄る素振りを見せると、斬り掛かろうとするアンドレラがいつも傍にいるので、話掛ける機会もない。


ところがその日の午後は、テレナリーサの方から

「そなたは土魔法は得意か?」と聞いてきた。

「得意のいうほどでもないが、使えることは使えるぞ」というと

「団員の1人が土魔法の練習をするので、見学してはどうだ。土魔法のいい勉強になるぞ」と誘ってきた。

「土魔法はあまり使うことがないけど、どういった練習をするんだ」

「行けば分かる」とだけ言われて、詳しいことは教えてもらえなかった。

テレナリーサに付いて練兵場に行くと、敷地の端に、土が盛ってある。

そしてその盛土の横に、細身の女騎士が立っていた。

「アリシアだ。第3騎士団きっての土魔法使いだ」と紹介された

「アリシアです」と挨拶されたので、

「ダブリンです」と挨拶を返した。この女性もかなり美人だ。もっとも第3騎士団は、貴族の娘ばかりなので、美人揃いで有名だとか。


「それでは始めます」と、アリシアが、盛り土に向かって手を翳すと、土の一部が勝手に盛り上がり始めた。

どうなるのかと見ていると、土は人型になって、自分で歩いて、10メートルほど離れた所まで歩いて行って、形を崩して土に戻った。

「ゴーレム魔法だよ。久しぶりに見た」とオーリアが俺の後ろで呟く。

細身の騎士が手を翳し続けると、盛り土は、次々と人型の土人形になって、自分から10メートル程離れた場所まで行って、形を崩して土に戻った。

ほんの10分ほどで、元の盛り土は無くなり、その横に、新しい盛り土が出来上がっていた。

テレナリーサが、俺の方を向いて、

「これは土魔法のうちで、ゴーレム魔法と呼ばれているものだ。熟練度が上がれば、土のゴーレムだけではなく、石のゴーレムも操れるようになる」と教えてくれた。

「土魔法に、種類があるのか?」と聞くと、

「それは、分かりやすいように、勝手に分類しているだけだ。例えば、土魔法に熟練すると、このようにゴーレムが創り出せる。するとその魔法は、ゴーレム魔法と呼ばれるが、魔法の分類としては土魔法だ。ゴーレムを創り出すから、ゴーレム魔法と呼ばれているだけだ。同じように、土魔法で城壁を創ると城壁魔法と呼ばれる」

「なる程、使い方で名前が変わるわけか」

「そういうことだ」

「スキルも使い方で、名前が変わるのか?例えば、戦術スキルとかいうような、区別はあるのか?」

「スキルも熟練度が上がれば、様々な使い方が出来るようになる。例えば、剣術の熟練度が上がれば、新しいスキルのような斬撃や太刀筋が使えるようになる。

どんな斬撃や太刀筋が出来るようになるのかは、人それぞれだ。だから、熟練者を相手にするときは、相手が、どんなスキルを生み出しているか分からないから、油断が出来ない。自分のスキルは、人に教えないからな」と説明してくれた。


テレナリーサの言葉で、俺のスキルドレインの限界が見えてきた。

結論から言えば、ゴーレム魔法はドレイン出来ない。それは土魔法の応用に過ぎないからだ。同じように、基本となるスキルを応用して生まれたスキルは、基本のスキルはドレイン出来るが、応用スキルの方はドレイン出来ないということになる。

そう言えば、俺のソナー魔法や衝撃波魔法も、ステータスには出てこない。音魔法や風魔法の応用技だからだ。

そうなると、応用技の魔法やスキルは、鑑定でも分からない、厄介な存在だということになる。

今まで、割と簡単に魔物や盗賊を倒してきたので、この世界を甘く見ていたのかも知れない。

魔物や盗賊よりも、真面目に鍛錬して熟練度を上げている人間、例えばテレナリーサのような存在が、本当は恐ろしいのだということを知った。


そう言えば、今の俺のステータスはどうなっているだろう。


名前 ダブリン

種族 人間

性別 男

年齢 8

ジョブ 捕食者4→6(魔物を捕食する者)、進化者7(魔石によって進化する者)

筋力 A→A+

耐久 B-→B

俊敏 B→B+

魔力 B→B+

抵抗 C--→C-


固有スキル スキルドレイン(接触時) 魔石進化(魔石吸収時) 魔力ドレイン(接触時)


武器系

大剣術5→6、剣術6→7、短剣術2、棍棒術3、斧術1、槍術1、暗器術1、盾術2、投擲2、強打1、強襲1、鎧袖一触1→2、弓術1→3

格闘・身体系

無双1→2、瞬動1→3、回避1→2、格闘1、喧嘩1、噛み付き4、跳躍2、突進1、逃げ足1、蹴り1、踏みつけ1、頭突き2、後ろ回し蹴り1、あびせ蹴り1、空中回転1

能力上昇系

怪力6→7、剛力4→5、敏捷4、身体強化6→7、皮膚硬化5、頑丈5、金剛1、聴覚強化2、夜目3、俊足2、長駆1、無呼吸耐性4→5、潜水4→5、強靭身体1、生命力1

技能系

航海術1、操舟1、穴掘り1、陶芸1

隠蔽系

隠密1、隠蔽2、目くらまし1、騙し討ち1、裏切り1、詐欺1、誘拐1、横走り1、岩這い1

探査系

気配察知6、魔力探知3、聞き耳1、方向知覚1、熱感知1→3、超音波1

魔法系

風魔法8、音魔法6→8、土魔法4、火魔法4、水魔法4→5、闇魔法4、魔力回復3、雷撃魔法1

支援系

気力譲渡1

召喚系

ゼネラルアーマー召喚、ゼネラルソード召喚、眷属召喚1、オーク召喚2

支配系

統率3、眷属強化1、仲間呼び1

精神制御系

マインドブロック2、警戒1、威圧1、脅し1、フィア1、精神統一1

耐性系

異常耐性1、毒耐性1、酒豪1

呪い系

バインドワード1、ファントムファイア1、魔法阻害1、ファントムウォーター3

調剤系

操毒1、毒薬調合1

その他

鑑定2、無敵1、天賦の才1、悪食4、成長加速1、床上手1、分裂3、再生1

魔物スキル(使えない)

飛行1、羽刃1、嘴攻撃1、鉤爪1、狼爪斬1、遠吠え1、雄叫び1、繁殖力1、陸上呼吸1、ハサミ撃ち1、脱皮1、多足1、巻き付き1、毒牙1


称号 

ゴブリンの捕食者

(ゴブリンに対しての攻撃が防御無視になる。ゴブリンからの攻撃はダメージが半減する)

将軍(眷属を統べる)


ステータスのパラメーターは全てワンランクアップした。

使いまくったり、よく使ったり、訓練したスキルは、さすがに熟練度が上がっている。驚いたのは、魔物系スキルの横走り1と岩這い1が、隠蔽系スキルとして使えるようになったことだ。魔法系は、音魔法が8になり、水魔法が5に、無呼吸耐性も5になった。最近は、この3つが無ければ、あっさり死んでいたものな。異常耐性1、毒耐性1、酒豪1は耐性系に分類できた。酒豪が耐性?酒好きなら疑問に思うだろうが、医学的には毒だと言われているものな。最後に精神統一、これは、テレナリーサを人工呼吸したときに、無意識にドレインしてしまったものだ。少し後ろめたいが、謝るわけにもいかない。テレナリーサには、黙っておくしかない。

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