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王都へ 1

アンシオンの砦は、アンデオンの街から3日のところにあると聞いていたが、2日目に襲撃を受けた為、予定より1日遅れて、砦に着いた。

砦の入口で、アンデオンの刻印が刻まれた冒険者の金属プレートを見せると、そのまま砦に入ることが出来た。

砦の規模は思っていより大きく、500人程が暮らしているとのことだ。

この砦に駐留している領兵の名称は、アンシオン警備隊というらしく、総勢で100名程度。3ヵ月単位で交替しているとのことだ。とはいえ、全員が1度に交替するのではなく、30人単位で交替するローテーションが組まれているらしい。

領兵の家族は、基本的に砦にはいない。砦に住まいを持っている領兵の幹部達でも、家族と離れて単身赴任の状態らしい。家族ごと住んでいるのは、飯屋兼宿屋、食料品屋、武器・道具屋、解体屋、毛皮屋、服・雑貨屋、厩舎、娼館などを営む民間人だけだ。もっとも、砦の住人としては、この他に、冒険者ギルドのアンシオン支部の職員と、この砦を拠点にしている冒険者達がいる。

砦の内部に入ると、冒険者の比率が高いのが目についた。

5人に1人が領兵なのは当然だが、冒険者は5人に1人どころか、もっと多い。


俺達は、厩舎に馬車を預け、宿屋を探して2人部屋と3人部屋を取った。アレックスとバートは、砦に入るだいぶ前に召喚を解除している。オークを連れているのを人に見られたら厄介なことになるからだ。


その後、ギルドの支部に行き、この砦の事情を聞いた。

「冒険者が多いが、特別な事情があるのか」

「ここは大物の魔物が多いので、良い稼ぎになるんですよ。でも、この辺りの魔物は強いから、気を付けて下さいね」とのことだった。

宿に戻って

「ここで滞在するとして、その間に、次の刺客が来るだろうか?」と俺。

「何とも言えないけど、ここで時間をくうと、王都に行ったときに闇ギルドが準備を終えて待ちかねているかも知れないよ。ここで滞在するのはお勧めできないね」とオーリア。

「王都にも闇ギルドがあるのか?」

「たいていは王都に本部があるものだよ」

『刺客を倒して手に入れたスキルを強化しておきたいが、ここで時間をくって問題が出て来ても困る』と、なかなか答えを出せずに俺が悩んでいると

「ここで、ぐずぐずしてたら、急いでアンデオンを出た意味がないよ」とオーリアが言い切る。

「そうか、それなら明日の朝に出発するすか」

「その方がいいよ」

「今日のうちに準備しておくことはあるか?」

「食料の買い足しは、私とオーリアで行ってくるから、あんたはパティさんとアルミちゃんの相手をしてやりな」とクレライン。


「大変なことに巻き込んじゃたわね。みんな私のせいだよね。ごめんよ」とパティが沈んだ声で言う。

「パティのせいじゃないから、謝らなくてもいい」

「いっそのこと、この陶器の欠片を返したらどうだろう?」

「殺しに来てる連中に、そんなことをしても仕方がないさ。欠片を返したら、その場で、口封じに殺されるだけだ」

「ねえ、ダブ、闇ギルドって、スラムの悪い奴の仲間?」と、アルミが怯えたように言う。

スラムのギャング、ブルックに誘拐されて、地下の檻に閉じ込められた記憶がフラッシュバックしたのだろう。

俺は、「護ってやるから、怖がらなくてもいい」とアルミを優しく抱きしめた。アルミは少し震えていたが、俺の腕の中で、その震えが消えていった。

「私も抱きしめて」とパティが甘えてくるので、パティも迎え入れて、2人を抱きしめた。

その夜は、隣のベッドにアルミを寝かせつけてから、パティとお互いを貪り合った


次の日の朝にはアンシオンの砦を出て、街道の北側にあるハリトラム砦に向かった。ハリトラム砦は、この街道の北端にあるハリトラムの街と同じ名前だが、街と区別するために、ハリトラム砦と名前の後ろに砦を付けて呼ばれている。最初の数日で消費した食料や飲料は、昨日のうちに補給した。

この2つの砦の間の街道は、砦同士の距離が近いために頻繁に討伐が行われているので、魔物はほとんどいない。

俺達も、特に魔物に出くわすことなく、ハリトラム砦に到着した。

ハリトラム砦の入口では、俺達の冒険者の金属プレートにハリトラムの街の刻印が無いので、1人銀貨2枚ずつの税金を取られた。

この砦も、アンシオンと同じで、100人の領兵を含めて500人程が住んでいる。砦内の配置はもう一つの砦と同じで、特に言うことはない。

この砦も1泊しただけで出発したが、この砦の北にあるシロアム村までは3回の野営が必要になる。ナンガブール山の東側を迂回する街道の一番の難所は、実はこのハリトラム砦からシロアム村までの4日間だと言われている。


街道のこの部分ではグレイランドールという魔物がよく現れるらしい。グレイランドールは、森の中に住む肉食のゴリラの様な魔物で、体長は3メートルもあり、力はオークよりもはるかに強い上に、動きが速い。強い冒険者でも、6人以上いないと、グレイランドール1匹で全滅すると言われている。

そして、ハリトラム砦を出てすぐに、俺はこのグレイランドールの強さを身をもって知ることになった。


そいつは、野営をしているところに、樹の上から飛び降りて来た。野営のときはサイレントの魔法を、魔物避けに使っているが、そいつには効果がなかったようだ。俺は直ぐにサイレントの魔法を止めて、

「俺に任せろ。皆、手を出すな」と叫んでから、無双を発動させてタックルし、そいつを皆の居る所から遠ざけた。

俺は、新しく得たスキルを試すいい機会だと思ったので、今まで戦闘時に頼っていたゼネラルアーマーもゼネラルソードも召喚せずに、腰の剣を抜いて、瞬動を発動させて、斬り掛かった。

グレイランドールは、俺の剣を硬い毛皮と筋肉で跳ね返し、大木のような右腕で殴りかかってくる。俺は、回避スキルを働かせて回避する。すると、空振りした右腕の遠心力を利用して、そのまま頭を下げるように体を斜めに回転させて、左脚で浴びせ蹴りを放ってくる。これを避けると、更に腰を捻って右脚の蹴りと、アクロバットのような動きで連続の蹴りを放ってくる。今度もスキルかが働いて、回避できたが、今までの俺ならその蹴りを食らっていただろう。

グレイランドールは、さらに俺の頭を狙って右腕を振り下ろしてくる。バックストップで避けると、そのまま前方宙返りをして、またもや浴びせ蹴りだ。それを回避すると、足が地面に着いた反動を利用して、左腕の振り下ろし、それが空振りすると、その勢いを生かしてタックル。このタックルを、ジャンプして躱すと、そいつはタックルの姿勢から下半身だけを上向けに捩じって、まだ空中にいる俺の脚を、手のようになっている足で掴まえた。グレイランドールは、足を手のように使って、俺を地面に叩きつけようとする。俺は、咄嗟に、剣を手放して金剛を発動し、受け身を取るために体を捻りつつ、三半規管を潰す超音波魔法を撃つ。グレイランドールの動きが止まり、俺の脚が解放された。俺は、瞬動スキルで直ぐに剣を拾い上げ、相手に踏み込みつつ、鎧袖一触を発動して右袈裟に斬り掛かった。鎧袖一触が効果を発揮したのか、グレイランドールの鎖骨と肋骨と肺を斬り裂いた。そいつが死ぬ前にスキルをドレインしてから、首を斬り落とした

アクロバチックな動きで、息もつかせぬ攻撃をしてくるやつだった。俺はと言えば、スキル頼みの戦いで、魔法を使わなければ負けていたかもしれなかった。グレイランドールの縄張りには、盗賊でさえも出没しないという理由がよく分かった。

ドレインしたスキルは、後ろ回し蹴り1、あびせ蹴り1、空中回転1だった。

グレイランドールは魔石と心臓を取り出して食い、残りは土魔法で穴をつくって埋めた。グレイランドールは上位種ではないので、魔石を食っても進化はしなかった。今の俺は、ハイオーク以上の上位種の魔石を食わないと進化しなくなっているのだろう。それでも、強い魔物の魔石を食ったことは、俺自身の強化に繋がる筈だ。


次は日は、グレートスネークに出くわした。グレートスネークは、長さが30メートルを超え、太さが1メートルもある蛇で、街道の先で、道を塞ぐようにして鎌首をもたげており、その鎌首だけでも3~4メートルの高さがある。

そのまま進むと馬車ごと襲われるので、俺は1人で馬車から降りて、グレートスネークに立ち向かう。

グレートスネークは、剣を構えた俺を目掛けて凄い速さで咬みついてくるが、回避スキルで躱す。

すると、いつの間にか、そいつの胴はとぐろを巻いていて、尻尾で横殴りの攻撃をしてくるので、これは剣で防ぐ。

前からの咬みつきと尻尾の横殴りを、躱したり剣で防いだりしていたが、鱗が硬く、剣で胴体に斬りつけたときに、刃こぼれしたので、剣は諦めた。直ぐにゼネラルソードを召喚して、無双、鎧袖一触、瞬動を発動して斬り付けると、一撃で首が飛んだ。首を飛ばされても、胴体はグルグルと身を捩っているので、触ってスキルをドレインする。

熱感知1、毒牙1、毒耐性1、強靭身体1、生命力1のスキルを得た。

『毒持ちだったのか。咬まれていたら危なかったな』

こいつも魔石と心臓を食って、残りは穴に埋めた。この魔石を食っても、進化はしなかった。

刃こぼれした剣は、馬車に積んでいる予備の剣と取り換え、馬車の中で改めてスキルを確認すると、鎧袖一触が1から2に、回避が1から3に、熟練度が上がっていた。回避は、昨日、今日と、使いまくったから、上がっていても不思議はない。鎧袖一触が上がったのは、天賦の才の効果かもしれないと思った。

その日は、もう一度、魔物と出くわしている。

街道の横にある大岩に、デカいムカデの魔物が4匹張り付いていて、俺達に向かって飛び出して来た。

俺もムカデに向かって駆け出し、鎧袖一触、強打、強襲を使って、前から来たムカデの頭を縦に斬り裂く。

右横から、俺に覆い被さるように襲って来た奴を、グレイランドールからドレインした後ろ回し蹴りで蹴り跳ばす。

左横から襲ってきた奴の頭を左足で蹴り上げ、頭が浮き上がったところを、頭のすぐ下の節を横薙ぎに切断する。次に襲って来た奴を回避し、胴体の節目を断ち斬る。

頭を斬り落とした奴の体を触ってスキルをドレインしたが、新しいスキルはドレイン出来なかった。ムカデの魔石は食う気がしなかったので、取り出して腰の袋に入れておく。

死体は、土魔法で穴を掘って埋めた。


3日目の野営の準備をしているときは、蝙蝠の魔物の群れに襲われた。

体長が1メートル程、翼を広げると3メートルもある蝙蝠の魔物が10数匹、森の中から頭上に現れたと思うと、そのまま俺達を襲ってきた。

野営の護衛として召喚していたアレックスに、パティとアルミを護らせながら馬車の中に避難させた。

クレラインが両耳を押さえてしゃがみ込んだので、超音波攻撃だと気づき、三半規管破壊用の超音波を蝙蝠の魔物にぶつけてやると、次々と墜落して来て、残りの奴らは逃げ出していなくなった。気絶して地面に墜ちた蝙蝠の魔物からスキルをドレインしてから殺した。超音波1を手に入れた。

殺した蝙蝠の魔物から魔石を取り出して、幾つか食べた。

これで超音波攻撃の手段が、魔法とスキルの2種類から選べるようになった。超音波スキルの方はレベルを上げないと、まだまだ使い物にならないが。

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