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バッハエンデの海戦 2

今、俺達は村の入口に立って警戒をしている。

村を護る防御壁の外側には、入り口を中心に左右に5メートル程の間隔で篝火が焚かれており、左右それぞれに100メートル程、篝火の炎が並んでいる。その篝火の明かりに、自警団員質達の緊張した顔が浮かび上がっている。総勢、30人程。横並びで海を見張っている。

その中央にはダッグエイドが立ち、俺とクレラインはその横に並んでいる。オーリアは組合の建物にある部屋で、アルミを見てもらっている。

「強引に、俺に依頼を引き受けさせたよな」と嫌味を言ってやると、

「あんたにはどうしても引き受けてもらいたかったからな。ちょっと強引だが、あんな風に、話を持って行った。悪かったな」といって、ニヤリとしている。

喰えない奴だ、と思いながら、

「今回の海賊との戦いのことを教えてくれ」というと

「俺達も、たいして知っちゃいない。軍は、俺達、下々には何も教えてくれないからな」

「しかし、大体のことは分かっているんだろう?」

「昔、この辺りが海賊の根城だったことは、あの爺さんから聞いていたな」

「法螺話じゃなかったのか?」

「お宝の話は法螺だが、海賊がいたって話は本当だ」

「それで?」

「どういうわけか、海賊どもが、またやって来るらしくてな。領主様の軍が、その情報を掴んだらしい。それで、海軍の出動となったわけだが、もうすでに前哨戦はあったみたいでな。数日のうちに大規模な会戦があるらしい。当然、領主様の海軍が勝つだろう。すると、逃げた海賊がこの辺りに上陸することがあるから、それを見張れということだ。もちろん見つけたら殺してもいいいし、捕まえて軍に突き出してもいい」

「ふ~ん、それは命令なのか?」

「ご領主様の命令だ」

「いつまで、こうやって見張るんだ?」

「会戦が終わって、逃げた奴がいないと分かるまでだな」

「それはいつぐらいになる?」

「そうだな、一月先になるか、二月先になるか。心配しなくても、日が伸びた分の報酬もちゃんと払うぞ」

「期待しておくよ。それはそうと、あのナデューンという騎士は何者だ?」

「軍の偉いさんだ」

「偉いさんね」

「騎士のことは、気にしない方がいい」とダッグエイドに諫められた。

その日の海は静かだった。この日の会戦はなかったようだ。


次の日の夜、数艘の小舟が闇に紛れて近づいて来た。まだ会戦は行われていないから、逃亡兵ではない。斥候だろうか。闇の中を火を灯さずにいる船を、村人たちが気付くわけがない。夜目スキルを持つ俺だけが気付いて、ダッグエイドにだけそっと教えたが、小舟は、陸に接近せずに沖に戻った。

「会戦に負けたときの逃亡経路を確認しに来たのだろう。これは、明日は会戦かもな」とダッグエイドが呟いた。


次の日の朝早く、沖で会戦があるらしいとダッグエイドから聞いた。

沖を見ても船の姿が見えないということは、水平線の向こう側で会戦が行われているということだ。水平線の距離は、陸地の高さにもよるが、ここの浜辺からだと5キロちょっというところか。かなり沖で戦っているんだなと思った。

その後、軍からの情報はなかったが、夜の見張りは60人程に増えていた。

「見張りを増やしたのか」とダッグエイドに聞くと、

「逃げた奴がいるなら、今夜、来るはずだ。小舟で逃げても、飲み水が無いからな」

「なるほど。さすが海の男だな。海賊の事情が分かっている」と俺が感心して言うと、

「昨日みたいに見つけてくれよ」

「見つけたら音を出すのか?」

「いや、引き返しても間に合わないぐらいに、十分引き付けてからでいい」

「それは具体的にはどれくらいだ?」

「そうだな、船から降りて数歩歩いたぐらいのところだ。水の中で動きが鈍いから弓で狙い撃ち出来るからな」

「誰も弓を持っていないじゃないか?」というと、

「あんたの奥さんが任せてくれと言ってたぜ」

俺は唖然としてクレラインを見ると、村人から弓矢を受け取っており、こちらを向いて、「任せて」といいながら、親指を上げて来た。

「1人じゃ無理だろう」

「あんたの風魔法も当てにしているぞ。漁師に飛び道具は使えないからな」

「自慢するところか、それ?」と、言い合っていても仕方がない。

そのまま夜の海の監視を続けていると、波の合間に、数艘の小舟が沖からやって来たのが見えた。

「来たぞ」とダッグエイドに囁く。

「何艘だ?」

「6艘、いや、2艘が、まだ沖に居る。合わせて8艘だ」

「8艘か、多いな。よし、行くぞ」とダッグエイドが手を上げると、いつの間にか弓矢を持った10人程の漁師とクレラインが、弓を手に頷く。

ダッグエイド自身も、他の漁師から弓矢を受け取って浜へと駆け下り、クレラインと弓を手にした漁師が後に続く。

「弓が使えないと言ってたんじゃんないのかよ」と思いつつ、俺もその後を追いかけた。


浜辺の手前で身を伏せ、小舟が近づくのを持つ。

とうとう先頭の小舟が浜辺まで来て、海賊の数人が海に飛び込んで、腰まで海に漬かりながら、小舟を陸地迄引っ張って行こうとする。

その瞬間を狙って、俺は立ち上がり、小舟を狙って衝撃波魔法を放つ。

ドーンと、腹の底に響く音が鳴り、正面の小舟と海賊が吹っ飛んだ。

同時に

「撃て~」というダッグエイドの掛け声とともに、立ち上がったクレラインと漁師たちが矢を放つ。

ヒュン、ヒュンと風音がして、浜辺に近づいた船に矢が降り注ぐが、ほとんど当たっていない。舟が見えていないからだ。

仕方がないので俺はファイアーボールをそれぞれの小舟に打ち込んだ。

「おい、火を消せ」

小舟に飛び込んだ火を消そうと、海賊たちが焦る声が聞こえてくるが、これで相手が見えるようになって、矢が海賊に当たるようになる。

「ギャー」

「グァー」

と悲鳴が上がる。

その時には、俺の衝撃波の魔法を聞きつけた村の応援が100人程駆け付けて来た。

何人かに1人は弓を持っていて、海賊目掛けて矢を放つ。

空から降り注ぐ矢の数が一気に増えて、海賊たちは海に飛び込んで泳いで逃げようとする。

しかし、俺がファイアーボールを一面にばらまいているので、泳いでいる海賊は丸見えだ。

それを弓の上手い村人が撃ち抜いていく。

俺も、風魔法で何人かやっつけたが、ここの手柄は村人たちに譲った。

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