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ロリコン疑惑 6

俺は宿屋の裏路地でクレラインから大きめの予備の服を受け取り、ゼネラルアーマーを解除して、着替えをした。それでも、体が大きくなり過ぎているので、服の袖とズボンの裾の長さが足りない。

「この体つきだと、もう別人だな。この宿にはもう泊まれないから、別の宿に泊まることにするよ」

「私も一緒に行くよ」

「何故だ?」

「あんたが宿を決めたら、皆でそこへ引っ越すからね」

「皆で、来るのかよ」

「当り前じゃない、あの子たちはあんたのものなんだから、あんた以外に誰が面倒見るんのよ。それに、アルミって子のこともあるし」

「えっ、俺が面倒見るのかよ」

「当り前じゃない」

「しかし、それじゃロリコンみたいじゃないか」

「ロリコン?」

「いや、それはどうでもいいんだが。大勢いるだろ、どうすりゃいいんだ?」

「宿屋じゃなく、貸家を借りることね」

「あんなちびっこが大勢いたら、何もできないぞ」

「じゃあ、奴隷商に売る?」

「それは嫌だな」

「なら、一緒に暮らすことね」

「孤児院はないのか」

「孤児院ね。その手はあるかも」

「そうしよう。孤児院に預けよう」

「寄付金を取られるかもよ」

「俺が面倒を見るよりいいだろう」

「で、アルミって子はどうするの?」

「俺がダブリンだってことを言っても、無理があるよな」

「私には、何とも言えないわ」

「困ったな」

「とりあえず、新しい宿を探しましょうよ」


こうして新しい服に着替えた俺とクレラインは、新しい宿を探し、新しい宿で部屋を3つ取った。

その後、クレラインがオーリアと子ども達を呼びに行き、全員がこの宿に来て、3つの部屋に分かれて泊まった。子ども達は、クレラインとオーリアの部屋に3人ずつ分かれて泊まった。アルミは、ダブリンに会わせてとごねていたが、助けるために嘘をついたのだとオーリアが言って聞かせたので、泣きながら眠ったということだった。

何故、俺がそのことを知っているかって、オーリアは今俺の上に跨っているからだ。

喘ぎ声の合間に、あれこれと伝えてくれる。これが、睦言というやつか。

「これで1件落着だな」と俺が呟くと

「暢気すぎるね」とオーリアから、意外な答えが返って来た。

「どういうことだよ」と俺が聞き返すと、

「考えてもみなよ。スラムの犯罪組織が一晩で潰れたんだよ。誰がやったかって、みんな血眼になって嗅ぎまわるわよ。今夜、急に現れたあんたが怪しいと思わない奴は、裏の世界じゃ生きていけないよ」

「俺が疑われるってことか?」

「疑われるんじゃなくて、確信を持たれるのさ」

「何で、確信が持てるんだ」

「だって、子どもを6人も連れて来たじゃないか。もう宿屋の親父が、店に来た客に話してる筈だし、飲み屋の常連客の半分は裏社会の人間だからね。情報が早い組織なら、今頃は、あんたが何者か、あの子たちがどこから連れて来られたのか、洗い始めているはずさ」

「おい、怖いことをいうな。それなら、こんなことをしてないで、さっさと街を出よう」と身体を起こそうとすると。

「ダ~メ。朝まで、たっぷり楽しませてもらうからね」

「明日の朝、子ども達を孤児院に預けて、そのままこの街も出るか」

「それがいいわね」


翌朝、子ども達を宿屋の前に集めて、この街に来た時に乗って来た馬車に乗せようとしたら、アルミが俺の顔を見るなり「嘘つき~」と叫んで、すぐにオーリアの後ろに隠れた。

その後は、オーリアを盾にするように、俺の動く方向から隠れ続けた。

子ども達は、宿屋の親父に教えてもらった、街の端にある孤児院で無事に預かってもらった。もちろん、かなりの寄付金を渡したし、口約束だけだが、定期的に寄付金を届ける約束もした。

孤児院から出発しようとしたときのことだ、アルミが孤児院の入り口まで走り出て来た。

そして、思いつめたような顔をして、大声で叫んだ。

「ダブリン」

アルミは、一旦息を止めると

「あんた、ダブリンなんでしょう。隠しても分かるんだから」と言いながら、俺の方に走って来た。

皆があっけに取られているうちに、アルミは俺のところまで走って来て、俺の腰にしがみつき

「ダブリン。ダブリン。ダブリン。なんで私を置いて行くのよ。何でダブリンじゃないなんて嘘を付くのよ。あんたはダブリンよ。私の鼻は誤魔化せないんだから。あんたから、ダブリンの匂いがするんだから」

この展開に、一番びっくりしたのは俺だ。

アルミと目の高さが合うようにしゃがんで

「アルミには分かっていたのか?」と聞くと、

「当り前よ。あんたのアルミだもん」と言って、嬉しそうに笑った。

『まずい、この笑顔にはやられた』

「そうだ。俺はダブリンだ。騙して、ごめんよ」と謝ると

「じゃあ一緒に連れ行ってくれるね。だって、私は、ダブリンのお嫁さんになるんだもん」


実は、俺に「嘘つき~」と叫んだ後、アルミは、俺からダブリンの匂いがするのは何故と、オーリアに聞いたそうだ。

オーリアは、その小さな恋心を叶えてやりたいと思って、

「アルミちゃん、これから言うことをよく聞いて。信じるか信じないかは、あなた次第よ。実はね、彼は、体は大人に見えるけど、まだ8歳なの。そして名前はダブリンよ。私たちがあった頃は、今の半分ほどの背しかなかったわよ。何日間で、急に背が伸びているみたいよ」

「じゃあ、私の知ってるダブリン?」

「きっと、そうよ。彼はあなたを助けるために、1人でギャングに立ち向かったんだから」

「私を助けるために?」

「そうよ。彼は、きっとあなたの大切なダブリンよ。間違いないわ」

「でも、私たちを置いて行っちゃうんでしょ」

「あなたがダブリンと一緒に行きたいなら、作戦があるわよ」

「作戦?」


そして、オーリアが教えた通りにアルミが行動したことが、俺のハートを射抜いた。

えっ、ロリコンだって。俺だって、まだ8歳だぞ。

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