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ロリコン疑惑 3

次の日は雨が降っていた。俺達が、雨除けの皮のフードを被り、冒険者ギルドの前を通りかかったときだ。ギルドの扉が開いて、中から子どもが転がり出て来て、水溜まりに顔から突っ込んだ。

「2度と来るな」と怒鳴り声が聞こえた。どうやら冒険者かギルド職員に追い出されたようだ。暫く倒れていた少年は、立ち上がって、もう一度ギルドのドアを押して入ろうとしたが、誰かが中からドアを押さえているのか、ドアが開かなかった。

最初は、何事かなと他人事として見ていたが、ようやく、その少年がダヤンだと気づいた。

すぐに気づかなかったのは、顔がどす黒く変色して、腫れあがっていたからだ。

俺が足を止めて子どもの様子を見ているので

「どうしたんだい?」とクレラインが聞いてくる。

「あの少年に、事情を聞いてやってくれないかな」と頼むと

「理由を聞いていい?」とクレライン。

「私が聞いて来てあげようか?」とオーリア。

「2人とも協力してくれるか?」と俺が2人を交互に見ると、

「もちろんよ」とクレライン。

「頼まなくても、命令してくれたらいいのよ」とオーリア。

「理由は後でゆっくりしたときに話す。今は、2人であの少年にどこかで飯を食わせてやって、事情を聞いてやってくれ」

「あんたは行かないの?」

「俺のことは秘密にしてくれ。特に俺の名前を少年の前で言わないように頼む」

「分かったわ」

「任せて」

2人は、ギルドの扉を叩いている泥だらけの少年に近づいていった。

「ねえ、キミ、ギルドに用事があるの?何なら私たちが聞いてあげようか?」

とクレラインが、屈みこむようにして少年に声を掛けた。

その声に振り向いたダヤンは、綺麗な女の人が、屈みこむようにして自分に語り掛けてきたことに気が付いた。

「助けてほしい」

「なら、話を聞こうか。ここは雨で濡れるから、向かいの食堂に行こうか」と言いながら、少年の手を取って道の向かい側にある食堂に連れていった。


「何か食べるものを頼みな。奢ってやるから」とクレラインに勧められて、ダヤンは、炙り肉とスープとパンを頼んだ。

クレラインは少年の隣に、オーリアはその向かいに座って、酒とあてを頼んだ。

料理が運ばれてくると、昨日から何も食べていないダヤンは、肉にむしゃぶりつくようにして食べた。スープを飲みつつ、パンにもかぶりつく。

「たっぷり食べな」と2人は、ダヤンが食べ終わるまで待った。

やがて、ダヤンは口と手を動かすのをやめたので、

「そろそろ話してくれないかい」とオーリアが促した。

少年は、「アルミが売られちゃうんだ」と泣きそうな顔をして答えた。

「アルミって誰だい」とクレライン。

「一緒に暮らしていたんだ」とダヤンが小さな声で答える。

「へ~、あんたのスケかい。小さいのにやるねえ」とオーリアが冷やかす。

「そ、そんなんじゃねえやい」

「それで、アルミって子がどうしたの?」とクレラインが話を元に戻す。。

「ギャングに脅されて、アルミをボスの家に連れて行ったんだ」ダヤンは、目に涙を浮かべている。

「あんたが連れて行ったの?」

「ギャングに見張られて、仕方なくやったんだ」

オーリアが口を開きかけたが、クレラインが手で制して

「それは、いつのこと?」

「昨日の夜」

「ギャングのボスは、そのアルミって子をどうするつもりか知っているのかい?」

「きっと、奴隷に売り飛ばすつもりだ」

「それは大変だ。それで、あんたは助けを求めて、ギルドに行ったのかい」

ダヤンは頷いて、

「でも、ブルックに攫われたと言ったとたんに追い出された」

「ブルックって誰だい?」

「スラムのギャングのボスだ」

「そいつが攫ったのは確かなのかい?」

「俺はブルックに命令されて。何度も断ったんだけど、殴られて蹴られて。最後には、怖いギャングが一緒に俺達の小屋までやって来て、俺にアルミを連れていけと脅したんだ。それで、仕方なくアルミをブルックの家に連れて行ったんだ」

「アルミって子は、大人しく付いて行ったのかい?」とクレラインが聞くと、ダヤンは声を上げて泣き出した。そして泣きじゃくりながら

「俺が縛り上げて、袋に詰め込んで持って行ったんだよ」と告白した。

クレラインとオーリアは顔を見合わせて、

「それじゃ、あんたが誘拐したんじゃないか?」

「脅されて、仕方がなかったんだ」

「それでギルドで、その話を全部喋ったのかい?」

ダヤンは、だまって頷いた。

「それじゃ、ギルドを叩き出されても仕方がないね」

「むしろ、よく衛兵に突き出されなかったもんだ」

「スラム内で何があっても、衛兵は手を出さないんだ」とダヤン。

「そうなのかい?」

「それで、あんたを助けてくれる奴は、誰もいないのかい?」

ダヤンはまだ目に涙を貯めながら頷く。

「ここでちょっと、待ってな。オーリア、この子を見ててくれるかい。私は、主に聞いてくるから」と言ってクレラインは1人で店を出た。


俺は、クレラインから話を聞いて、アルミを助けに行くことにした。

「よし、これは俺に任せてくれ。2人は、あの少年と一緒に待機だ」と言うと、

「あの子とはどういう関係?」とクレラインが聞いてくる。

「俺が8歳だというのは前に言っただろう。あの少年は、俺が魔石を食って大きくなる前に、一緒の小屋に居た子だ」

「ふ~ん。なら。そのアルミって子が、あんたの彼女だったわけ?」

「正直、それは分からないんだが、かなり仲がよかったような感じだった」

「あら、妬けるわね」とクレライン。

「それで、お姫様を助けに行くわけね。なら、私たちは、邪魔よね」とオーリア。

「何を言ってるんだ。相手は10歳位の子どもだぞ」

「10歳でも、女は女よ」とクレライン。

「それに助けたら、手元に置いておくつもりでしょ」とオーリア。

いかん、話が変な方向に進みだした。

「いや、俺が1人で行くのは、お前たちがスラムの奴らに目を付けられたら、後々厄介だからだ。それに今回は、あの魔石を食う」

「やっぱり、あれをやるのかね?大丈夫かい」とオーリアが心配そうに眉を寄せた。

洞窟の盗賊達の持っていた財宝の中に、大きな魔石が一つあったのだ。ハイオークの魔石よりも大きい。その魔石を鑑定すると、キュラウデスという魔物の魔石だということが分かった。キュラウデスという魔物がどういう魔物か分からない。クレラインもオーリアも聞いたことがないといっていたし、魔石を食いすぎて俺自身が魔物化するのも怖いので、取っておいたのだ。もちろん、強い魔物の魔石が手に入ったら、全て俺自身の強化に使うつもりなので、元々売る気はなかった。


俺だけは宿に戻らず、街をうろつきながら夜が来るのを待つ。

夜になってすっかり暗くなってから、俺はスラムに近い真っ暗闇の裏道で、キュラウデスの魔石を食った。

身体が熱くなり、また、体が大きくなっていく。筋肉がミチミチいうだけでなく、骨もミシミシと鳴っている気がする。今度は大きくなるのが、なかなか止まらない。暫くして変化が収まると、今まで来ていた服はピチピチになり、袖は二の腕の途中までしかなく、ズボンも脛の下半分が出ているほど背が伸びていた。革鎧は脱いでいたが、もう着られないだろう。靴もサイズが合わなくなって足が痛いので脱いで裸足になった。

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