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アンテローヌの献策

「旦那様、ご無事で何よりです」

アンテローヌが、馬を降りて、まず口を開いた。

「テレナ様のご下命の首尾はいかに?」

と続けて聞くので、

「ロデリアの北側は、アウロラが治めることになった」

「アウロラが治める?旦那様は、どうなさるのですか?」

「大森林の中は寒すぎて、俺が生きていくのは無理だ」

「アウロラは平気なのですか?」

「ベツレム族とドゥーム族は、あの寒さの中でも平気だそうだ。神の加護があるらしい」

「ロデリアの街でもあの寒さでしたから、大森林の中ではもっと寒いのでしょうね。神の加護でも無ければ、あの寒さの中では生きていけないのは頷けます。それでは、ロデリア領の北半分は諦めることにされたのですか?」

「いや、アウロラは族長として、あの土地を治めて、そのまま俺に臣従するらしい」

「それなら領地の北半分は大丈夫ですね。南半分は、どういたしますか?」

「実は、アンデッドフィールドは、もう解除しておいた」

「えっ、もうアンデッドは消えたのですか?」

「ああ、もういない」

「そうなると、領地の南半分にいろんな勢力が侵入して来ると思いますが」

「そうなるのか。あまり深く考えていなかったな」

「アウロラは、どれほどの配下がいると言っておりましたか?」

「10万ほどが集まるだろうと言っていたな」

「それを聞いて安心しました。それだけの兵力があれば、領地を治めるのは問題ないでしょう」

アンテローヌはここで少し考えて、

「領都ロデリアの南にカグリアという街があった筈です。そこを目指して拠点としましょう」

「拠点?そこで、何をするんだ?」

「まずは、街の復興ですね。ロデリアの領地は、ベツレム族の侵攻とアンデッドの原の出現と災厄が続いたので、生存者は少ないでしょうが、生き残りがいれば街を目指すでしょう。領都ロデリアが寒過ぎるので、寒くないところまで南下したところには、再び人が集まって来るでしょう。カグリアなら、その可能性があります」

「アンデッドフィールドのせいで、生き残りは全滅したのか?それなら、この土地の人々には悪いことをしたな」

「その前に蛮族が皆殺しにしているから、気に病むことはないよ」とオーリアが慰めてくれる。

「そうです。もともと戦争を始めたのは、ロデリア辺境伯ですし、その後に蛮族が攻め込んでこの土地を蹂躙したので、その時点で生き残っている者はほとんどいなかった筈です。旦那様が気に病む必要はありませんとも。それよりも、街を再建して、避難していた者が帰る場所をつくってやることの方が大事です」

「なるほど、そういう考え方も出来るのか。気持ちが軽くなったよ」

アンテローヌの献策で、前向きに考えることが出来るようになった。

「それなら、これから西を目指そう。ところで、アリシア達は?」

「一時的なグレナーデ様の親衛隊として、隊列の先頭にいます」

「グレナーデか。あいつは苦手なんだが、会わないといけないか」

「報告も必要でしょうし、さあ、行きましょう」

アンテローヌは愛馬のディアスに乗っていたので、俺も乗り込み隊列の先頭に向かった。


隊列の先頭にアリシア達の姿を見付けたので、

「アリシア」と叫ぶと、アリシア、シモーヌ、ヴィエラの3人は振り返って俺を見付け、笑顔を見せて馬首をめぐらせて、こちらにやってきた。

「ご無事で何よりですわ。あなた」と、アリシアが真っ先に俺に近付いて声を掛けてきた。

この様子を見ながらグレナーデも3人を追って馬を寄せて来た。

「ほっほ〜い、追いついたか居候クンよ。テレナは居ないぞ。寂しいだろう。だから、今夜は私のテントに来い。待ってるぞ」

相変わらず軽い調子で声を掛けてきた。しかも、内容が、大きな声で言うような話ではない。騎士団の団長としての品位はどうしたと問い詰めたくなる。

「いや、それより、俺達はこれから西に向かうので、アリシア達を迎えに来たんだ」と言い返すと、

「西へ向かう?そうか、キミはアンデッドが平気だったな」

「アンデッドフィールドは解除したから、ロデリアの南側はもう安全だぞ」

「むむっ、そんな便利なことが出来るのだったな。テレナが離さない訳だな」

最後が小声になったので聞き返すと、

「いや、何でもない。こちらの話だ」と首を横に振りながら、

「我が隊はこのまま避難民の護衛をして南に向かう。一緒に来てもいいんだぞ」と誘ってきたが断った。

「ところで、蛮族の件はどうなったか教えてくれないか」と催促されたので、アウロラが領都の北側の大森林を治めて、俺に臣従することになったと伝えると、

「蛮族を従えるのか。まあ、辺境伯なら、ままあることだな。それで、南半分は、どうするつもりかな?」

「これからカグリアに向かって、そこを再興することにした」

「兵力はあるのか?」

「アウロラが集めるのを待つよ」

「キミは、ロデリア伯爵領を女王陛下から賜ったんだぞ。領主としての自覚を持ってやってくれ」

そこまで言うと、さも楽しそうに笑って隊列の先頭に戻っていった。

こうして俺達は、グレナーデの第4騎士団や避難民達と別れ、馬首を西に向けた。

俺とアンテローヌを乗せたディアスを先頭に、アリシア、シモーヌ、ヴィエラ、オーリア、クレライン、ルビーの6人が続いた。

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