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辺境にて

蛮族との戦争は呆気ない幕切れを迎えた。


再び、大本営用の大テントが立てられ、王国騎士団団長とテレナリーサによる作戦会議が開かれた。

サンクストン新公爵は、あのとき戦場から逃亡を図り、そのまま自領の領都まで逃げ帰っているので、この会議からサンクストン公爵軍は排除されている。


「新公爵は、明らかなる敵前逃亡。後日、何らかの沙汰は免れまい」というのが騎士団団長達の一致した見解だった。

「あの戦場が、アンデッドの原になってしまった。このまま領都ロデリアを目指すと、無用な犠牲者が出る」と王国第4騎士団の団長が訴える。


「我らは、蛮族が退却すれば王都に戻ることになっていたので、これから王都に戻る」と、王国第2騎士団団長は離脱を宣言した。

「我らも、最初の予定に従って、サンクストン領の警護に当らなばならぬ」と、続けて離脱宣言をしたのは王国第3騎士団団長だった。


「我らが、これ以上ここにいる理由はない。これにて失礼する」

「我が騎士団も同じだ」

そう言い残して2人の騎士団団長は席を立って大テントから出て行った。

残されたのは、王国第4騎士団団長とテレナリーサだけになった。

「つれない奴らだねぇ?」

彼等が出て行ったテントの入り口を見ながら愚痴を溢すのは、王国第4騎士団団長、グレナーデ・ジエゼッベリ子爵だった。

「まっ、むさ苦しい男どもがいなくなって、清々するけどね」とテレナリーサに大袈裟なウインクをする。

「姉上、その言は、聞かれると不味いのではないか?」

テレナリーサが姉上と呼ぶように、グレナーデとテレナリーサは血縁関係にあった。もっとも、王国騎士団も王都騎士団も、団長達はいずれも縁戚関係にある。


貴族家に連綿と受け継がれ秘匿された力が、絶対的な力であるこの世界において、有力な血族同士が縁戚関係を結び、更に力を増していくのは避けられない。

従って、この世界の貴族では、血の繋がりのない養子を迎えて跡取りにして家名を継がせるなどという風習はない。家名の尊貴など存在せず、血脈、地球でいえば遺伝に当たるものだけが重視されている。


そういった事情から、王国の有力な貴族同士は、お互いの子孫同士を結婚させ、濃厚な血縁関係を結んでいる。

グレナーデとテレナリーサも、従姉妹よりも少し遠い血縁関係だが、女同士ということもあり、言葉のやり取りにも砕けたものがあった。

「で、これからどうするの?私達は、ロデリアまで行かなきゃならないし、アンデッドの原を東に迂回するけど」

「私の目的地もロデリアだ。だけど、我らはアンデッドの原を突っ切って行くつもりだ」

「テレナの居候君がいれば、アンデッドは襲って来ないって、本当なの?」

「恐らくな」

「私達も守ってくれないかなぁ?」

「人数が多すぎて無理だろう」

「一度、聞いてみてくれないかなぁ?。東に迂回すると、十中八九、難民に出くわすだろう。そうすると、難民の保護なんていう仕事ができちゃうんだよね?。面倒臭いからね。そうだ、ここに呼んでみてよ。私が直接頼むから」

「姉上、それは・・・」

「それに、その居候君にちょっと興味があるし。だから、お願い」と、テレナリーサを拝む様な仕草をする。

「頭を上げてくれ。呼んでみよう。どういう結果になっても知らないぞ」とテレナリーサは、大テントから顔を出して、テントの入口横に控えたアンドレラに、俺を連れてくるように言ったらしい。


俺が大テントに入ると

「キミが、テレナの居候君かい。ハンサムじゃないか」と、声を掛けられた。

声のした方を見ると、栗毛色のロングヘアーに、グリーンの瞳の美人が椅子に座ってニコニコしながらこちらに、小さく手を振っている。

「こちらの方は?」とテレナの方を見ると、

「こほん、まず、そなたから名乗るのが礼儀だ」と、テレナに諭された。

「え~と、ダブリンと申します」と美人に向かって頭を下げる。

「うん、気に入った。テレナ、この居候君を借りるよ、いいね」と言って椅子から立ち上がった。スラリとして背が高い。

「私は、グレナーデ・ジエゼッベリ子爵だ。王国第4騎士団の団長を務めている。そこのテレナは、私の妹のようなものだ」と言いながら俺に近寄って来ると、俺の手を取って、自分の大きな胸まで持ち上げて、押し当てた。

俺が驚いて何も出来ないでいると、

「今、キミは、私の胸を触ったぞ。その罰として、これから私の相手をしてもらう。さっ、私のテントへ行くぞ」

と、俺の腕を引っ張ってテントから出ようとするので、助けを求めてテレナに視線を送ると、

「お相手をして差し上げろ」と死刑宣告をされた。


「居候君は、どういう手管を使って、あのお堅いテレナを落としたんだい?」

グレナーデの団長用の豪華なテントに連れ込まれ、これまた豪華なベッドに座らされて、最初に聞かれたことがこれだ。

「落としたと言われても・・・」と俺が戸惑っていると、グレナーデは、俺の膝に跨るように乗ってくると、

「さっさと白状しないとお仕置きしちゃうぞ」と言いながら、俺をベッドに押し倒してキスをしてきた。

「ぐっ、うんっ」

口の中に舌を押し込んで、舌を絡ませてくる。

「ふふふっ、居候君には相手が多いんだって?だけど、私をテレナの次にしてもらおうかな。これは、命令だからね。私が呼んだら、私の相手をしなくちゃダメだよ」

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