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謁見

ナザニエールを出てクラガシアに着いた俺達を、王家の遣いが待ち受けていた。


そして今、王都にあるローザリア王国の王宮に招かれている。

場違い感が半端ない俺は、周りを見ないように気を付けていても、無意識のうちにキョロキョロしてしまっているようだ。

「前をお向き下さい」

直ぐ後ろを歩いているアンテローヌに、頻繁に注意されながら歩いている。

どこをどう曲がったのか、まったく分からないうちに、大きな扉の前に辿り着いた。

ただただ先導してくれる騎士の後をついて来ただけだ。

扉の前に立っている2人の騎士が扉を開ける。

『入れっていうことか』


扉の向こうには赤い絨毯が、奥のひな壇まで続いている。

本来なら、その絨毯の左右に王国の重鎮達が居並んでいるのだろうが、今は緊急事態なので重鎮達はいない。

真正面のひな壇には大きな椅子、玉座が置かれている。玉座の主は、当然のことだが、俺がその前でひざまづいてから現れるのだろう。

『こんなところへ来たくなかったんだけどなぁ』と内心で愚痴りながら、俺は赤い絨毯の上を歩いていく。顔を上げないように注意を受けていた為、足元を見ながら歩いていく。


「そこで止まって」

後ろからアンテローヌの囁きに従うように足を止め、前もって教えられた通りに、頭を下げたまま床に片膝をつく。

そのままの姿勢で暫く待たされる。

その待ち時間の間に緊張が高まる。

『早く帰りたい』と、内心で弱音を吐いていると、衣擦れの音が聞こえてきた。

絨毯の毛足が深いので、足音はまったくしない。

視線より上にあるひな壇の玉座に、誰かが座る気配があった。

玉座の方から、内容までは分からないが、声を落としたやり取りが聞こえてくる。

暫くして、

「ローザリア王国女王のテレサ・ローザリアである。面を上げよ」と声が掛かられた。

その声に応えて顔を上げると、玉座に座った女性が目に入った。

顔が、あまりにもテレナリーサに似ているので、一瞬見詰めてしまった。もっとも、雰囲気が少し違う。

「無礼であるぞ」と玉座の横に立つ年配の貴族に嗜められて、

思わず、「ははっ」と言いながら頭を下げた。

すると、

「よい、よい。あまりに似ているので、驚いたのであろう」と、玉座の女性がとりなしてくれた。

「そなたの働きは、アレから聞いておる。そう固くならずともよい。此度は褒美を取らせる為に呼んだのじゃ。あれを、これへ」

その声と同時に、ひな壇の傍から、トレーのようなものを両手で捧げ持った女官が出てきて俺の前までやって来た。

上に何かが載っている。

「それは、そなたの為に用意した辺護騎士証じゃ。それを身に着けている間、そなたは辺護騎士として扱われる。そして、そうじゃな、辺護騎士には、辺境伯と同等の地位を与えるとしよう」

ここで女王は、意味深な笑顔を見せた、

「叙爵までは叶わなかったのは許せ。此度の国難を救ったそなたの働きに、この程度では報いたことにはならぬのは承知している。そこで相談だが、我がローザリア王国の北辺ロデリアを、蛮族から取り戻してくれぬか?今回の内乱に付け込んで、北方大森林の蛮族がロデリアに攻め込んで占領してしまいおった。これを追い払ってくれれば、ロデリア辺境伯の地を、そっくりそのまま、そなたの領地として与えようぞ」

このとき女王は、視線を俺から外し、アンテローヌを見据えて、

「アンテローヌ。そなたは、この者の家臣団になると宣誓したらしいのう。ロデリアの地で、新しい貴族家を起こしてみるか?」

と、少し挑発するような口調で言った。

「仰せのままに」と、アンテローヌが答える声が聞こえた。


女王との謁見から解放されて王宮から出た俺達は、ひとまず第3騎士団の宿舎に向かった。

久しぶりにテレナリーサの執務室で、向かい合ってソファに座っている。

「それにしても似ているな。まさか、本人ってことはないよな?」

という言葉が、思わず口から出てしまった。

「私がか?バカなことを言うな。血筋の濃い親戚だから、このように似ていることは、たまにある。あっちが歳上だから、知っている者は見間違うことは無い。もっとも、似過ぎていると弊害があることは確かだ。だから、私は顔を隠しているのだ。私の顔を知る者は限られている」

なる程、それでテレナリーサは、いつでも仮面を着けている訳か。彼女の謎の一つが明らかになった。


「先程の話にもあったように、王都の北西にあるロデリア辺境伯の領地に、北方大森林の蛮族が攻め込んで占領している。最初は、サンクストン公爵軍と王国騎士団が、蛮族を領都に押し込んでいたが、大森林から援軍が流れ込んでいて、日増しに蛮族の数が増えているとのことだ。最初は6万か7万程だったが、今では15万ほどに膨れ上がっているらしい。このため公爵軍と王国騎士団は、サンクストン公爵領の領境まで押し返されたということだ」

「そんな大規模な戦争に、俺が加わってどうにか出来ると本当に思っているのか?」

と疑問をぶつけると、

「リッチを3体も従えているのだろう。ならば、国の一つや二つ、簡単に落とせる戦力を持っているということではないか。それに、そなた1人を行かせるわけではない。私も第3騎士団を率いて参戦する」

「王都騎士団が、王都を離れていいのか?」

「私は護国騎士だからな。私の権限で、第3騎士団を臨時に護国騎士団として再編成する」

「テレナが一緒に来てくれるなら心強い。とはいってもだな、俺に過大な期待をかけ過ぎじゃないか?」

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