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魔石進化

『普通の人間は、魔石を食っても進化しないのか?魔物は、どうなんだ?』

『人間であれ魔物であれ、魔石を食って進化することはないのう。魔石を食って進化するなら、そこらにいる魔物がどんどん強くなって、直ぐに手がつけられなくなるじゃろうが』

『確かにそうだな。そう言えば、オーリアとルビーに魔石進化が現れて、クレラインに魔石進化が現れていないのは何故だ?オーリアとルビーが魔石で強化されるのに、クレラインは強化できないのは痛いんだがな』

『そなたの眷属達の魔石進化は、スキルの取得とステータスの上昇があっても、厳密には進化ではない』

『えっ、俺は魔石を食って、体が大きくなったし、ステータスが上がったりしたぞ』

『それは、そなたのみが始原の魔物と同じ、進化の権能を持っておるからじゃ。眷属のスキルに現れた魔石進化は、水面に写った影の様なもので、実質的なものではない。そなたが進化したら、そなたの眷属は、皆、進化する。クレラインとかいう眷属もそのうちに進化する筈じゃ。気長に待つがよい』


フィアと話しながら数時間走り続け、アンテローヌ達が待っているところに戻って来た。

「旦那様、王都の様子はどうでしたか?」とアンテローヌが、皆を代表して聞いてきた。

「王都は大丈夫だ。街門の前まで攻め込んでいた3つの穢れを倒してきたぞ」

俺は、王都での戦いを説明して、皆を安心させた。


「このまま王都に向かいますか?」

俺と同じ馬に乗っているアンテローヌが、顔だけ振り返りながら確認してきた。

俺は少し考えてから、

「ナザニエールの冒険者は、隷属魔法を使われていると言っていたな。魔法阻害で隷属魔法が解けるなら、その冒険者達を解放してやろうと思う」

「そんなことをすれば、街の衛兵や冒険者ギルドを敵に回しますが」

「その分、冒険者達を味方につけることができるだろう」

「ナザニエールの占拠をお考えですか?」

「そうだな、冒険者達に反乱を起こさせて、今の支配者を捕らえるか」

「兵力が足りないと思いますが」

「フィアを使えば大丈夫だろう。眷属のリッチやスケルトンも召喚できることだし」


ナザニエールの街壁が見えてきた辺りで昏くなったが、夜の闇に紛れて街に入るつもりなので、そのまま進んだ。

街から1キロほどのところで馬から降り、馬は解放した。この馬たちは獣テイムでテイムしているので、放しておいても遠くに行ってしまわないだろう。

闇の中を、徒歩で進んでいく。

ナザニエールの街門は、数日前にスタンジー&ハデスに壊させたが、今では扉や街壁の修理は終わっている。夜には門が閉まり、入り込めるような壁の亀裂などは見当たらない。


「まず俺が1人で、冥界結界で街壁をすり抜ける。それから冒険者達の隷属を解いて、騒ぎを起こさせる。騒ぎが大きくなったら内側から街門を開けるから、それまで街の外で待機していてくれ」

俺は皆に作戦を伝えてから、冥界結界で自分を覆い街壁に向かった。

冥界結界の力で街壁を透過し、そのまま宿屋街に向かった。

酒場兼食堂は夜遅くまで営業しており、冒険者達がたむろっていたが、その中には、焦点が合っていない虚ろな目をした冒険者が少なからずいた。

俺は冥界結界を解除して、店の入口から店内を覗く振りをして、魔法阻害を使っていく。

「はっ、俺は何をしていたんだ?」

「うん、ここは何処だ?」

隷属魔法を解かれた冒険者達が正気に戻って、驚いた声を上げている。

素早く酒場兼食堂を回って、何十人もの冒険者を隷属状態から解放して回る。

ときどき、「コンロの火が消えたぞ」という料理人の怒りの声が上がる。

魔法阻害の影響で、魔法の火を使っていた調理場の火が消えてしまったようだ。

これには『済まない』と心の中で謝っておいた。


冒険者ギルドには、フィアを向かわせてある。


「フィア、冒険者達に隷属魔法を掛けた奴を見つけられるか?」

「ギルドの職員を一人ひとり締め上げましょう。それで見つからなければ、騎士団の幹部も絞りましょう」と、黒い眼窩の奥の赤い火を煌めかせた。

「それなら、頼む」

この世界で、さんざん悪党どもを殺してきたが、戦ってもいない相手への拷問なんかやったことはないので忌避感がある。ここは無理せずに、フィアに丸投げすることにした。

俺が、拷問に忌避感を持つのは、俺自身が、そういう目にあっていないからだろう。もし、この世界に来てから、誰かに拷問された経験があったら、躊躇なく拷問できるのかも知れない。しかし、現実として、俺は、まだ拷問を受けたことが無いし、そんな経験をしたいとも思っていない。甘いようだが、そういった暗い情念とは、縁が無いにこしたことはないと思っている。


そして、夜明け前になってフィアとその眷属達が戻って来た。

「隷属魔法の使い手を殺しましたぞ」とフィア。

「何者だった?」

「ギルドの職員に1人、騎士団の幹部に1人おりました」

「どうやって突き止めた?」

「聞かない方がよいと思いますぞ」

「バレていないか?」

「朝になるとバレましょうな。もっとも、ギルド職員と騎士団の幹部は皆、殺しましたので、バレても問題はありますまい」

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