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王都攻防2

一騎打ちの相手が俺に倒されたのを悟った銀鎧の騎士が、何か言いたそうに近寄って来たが、それをテレナが手で制して、

「南門も頼めるか?」と聞いてきたので、

「任せてくれ」と俺は頷いて、冥界結界で自分を覆い、南門に向けて駆け出した。


「あの者は?」と銀鎧のクロイス総督が、銀仮面の騎士テレナリーサに尋ねる。

「ふふふっ、私の隠し玉です。叔父様」

「あれが、そうなのか」

短いやり取りの後、クロイス総督は周囲の騎士達に、

「敵の親玉は討ち取ったぞ。このまま総攻撃じゃ」と檄を飛ばした。


冥界結界の中に入った俺は、人も街壁も建物も全て透過しながら、南門へと急いだ。

南門では、雲を突く黒い鎧の大男が、長身痩躯の青銀色の鎧の男と撃ち合っていた。

大男が振り回しているのは方天戟に似ているが、もっと複雑な形状をした武器だった。先端が槍の穂先になっているのは同じだが、穂先のすぐ下に取り付けられた三日月形の月牙が、方天戟では左右2枚だけなのに、この武器では十字方向に4枚取り付けられている。しかも、4枚の月牙のそれぞれの下側に鎖分銅が取り付けられていて、穂先を避けても、一瞬ずれたタイミングで複数の鎖分銅が襲いかかかって来るので、攻撃を避けるのが難しそうな武器だ。

一方、長身痩躯の男は、長剣とカイト・シールドで武装しており、ライオット伯爵の攻撃に対応している。キケラデス将軍の戦い方で特徴的なのは、長いカイトシールドの下端を支点にジャンプして斬り掛かることで、長柄武器に負けない攻撃間合いを確保していることだった。

こちらでは、派手な攻撃魔法の応酬は無いが、風魔法が支援魔法として使われていることは明らかで、両者とも、音を置き去りにするほどの高速で動いている。もちろん、普通の者の目では、彼らの姿を追うことも出来ない。


個人的には、この戦いの決着を観たかったが、生身の人間が穢れを倒すことは出来ないので、不本意だったがその戦いに介入した。

穢れの指輪から感じる力で、大男が暴虐に穢されていることが分かる。

冥界結界で姿を隠したまま大男の背後に近付き、チャンスを待つ。長柄の武器は、頻繁に持ち手を変える為、一瞬だが動きが止まるときがある。

両者の攻防が激しく、なかなか動きが止まらなかったが、遂に、長身痩躯の男がバランスを崩しかけた。そこに、必殺の一撃を入れるべく、大男が武器の柄を持ち替えた。俺は、その機を逃さず、冥界結界を解除して、ガントレットの上から左手の中指の付け根に斬り付けた。

パリンと、ガラスが砕ける様な音がして、指輪が砕けた。

「グァアアアアアッ」と、大男は悲鳴を上げて膝を着いた。

俺の姿を見た長身痩躯の男は、一瞬、身構えたが、直ぐに警戒を解いて、

「貴殿は、第3騎士団の居候か?」と聞いてきた。俺のことを知っているようだ。

俺は、バイザーを上げて、

「その通りだ」と答えると、

「助力、かたじけない」と頭を下げてきた。

「気にしないでくれ」とだけ答えて、俺は直ぐに冥界結界で姿を消して、そのまま、アンテローヌ達のところに戻る為に駆け出した。

王都の東門と南門のそれぞれの外側で、3つの穢れが滅ぼされた為、指導者を失った反乱軍は、王国騎士団と王都騎士団にあっけなく制圧された。


ナザニエールを目指して走り出したところで、頭の中でアナウンスが流れた。


全ての穢れの指輪の討伐を確認。

穢れの女王は、冥界に封印されます。

冥界の戴冠者は、真なる冥界の戴冠者になります。


少しスピードを落として走りながら、ステータスを見ると、ジョブと称号にあった冥界の戴冠者が、真なる冥界の戴冠者に変わっていた。

他のステータスやスキルに変化はないようなので、これって意味のある変化なのか分からない。そこでフィアに聞くことにした。

『なあ、フィア。地上の穢れを全て倒したら、ジョブと称号が、真なる冥界の戴冠者に変わったんだが、これはどういうことだ?』

『そなたが、地上で唯一の冥界の権能を司る者になったということじゃ。穢れの女王は、地上に出て来れぬということでもある』

『なるほど、冥界の権能を競う相手が居なくなったということか?』

『その通りじゃ』

『あの恐ろしい存在が封印されたというわけか。ほっとするよ』


『しかし、なぜ俺が真なる冥界の戴冠者になったんだ?』と自問自答すると、

『我れの魔石を食ったであろう。そのときに、我の持つ、冥界の力を取り込んだ故じゃ』

『フィアの魔石?そうか。リッチの魔石を食ったときか?そのとき、冥界の力を取り込んだのか?』

『普通の人間の魂なら、冥界の力に耐え切れず、狂うか死ぬかするものじゃが、そなたは違った。もっとも、普通の人間ならば、魔石を食って進化することなど起こるはずがないがのう』

『俺は普通じゃないと言いたいのか?』

『きわめてイレギュラーじゃのう』


今は、王都からクラガシアへ向かう街道を、時速100キロ位で走っている。

冥界結界のおかげで、風の抵抗もないし、誰かに見られることもない。

馬車で数日かかる距離を、2時間もかけずに走破した。

クラガシアの街を迂回して、また街道に戻り、ナザニエールへと向かう街道を走る。

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