ダブリン 13
アレックスに洞窟の入口を見張らせて、俺はまたクレラインの所に戻って来た。盗賊が溜めていた干し肉を取り出して、部屋に転がっていた鉄鍋に入れ、水魔法で水を出して、肉鍋の用意をした。土魔法で、竈らしきものをつくって鍋を置き、下から火魔法で鍋を煮た。
暫くして鍋が煮立ち、干し肉の煮込みが出来たので、その辺に転がっていた木の器に入れ、クレラインを起こして、肉汁を飲ませることにした。
「クレライン」
クレラインはゆっくりと目を開けた。
「これを飲んでおけ」といって、頭を支えてやって、肉汁を飲ませる。
クレラインは、ゴクゴクと煮汁を飲み込んだ。その後で、また薬酒も飲ませる。
「ありがとう」というと、クレラインは、また目を閉じた。
クレラインが寝息を立て始めたので、俺はその隣で干し肉を食い、水を飲んでから、改めて自分のステータスを確認した。
筋力 B++
耐久 C++
俊敏 B--
魔力 C++
抵抗 D
固有スキル スキルドレイン(接触時) 魔石進化(魔石吸収時) 魔力ドレイン(接触時)
飛行1、羽刃1、嘴攻撃1、鉤爪1、風魔法5、警戒1、身体強化2、喧嘩1、威圧1、格闘1、詐欺1、気配察知3、投擲2、噛み付き1、穴掘り1、夜目1、敏捷3、繁殖力1、土魔法3、成長加速1、棍棒術2、悪食3→4、仲間呼び1、跳躍2、聴覚強化2、突進1、皮膚硬化2、剣術3、短剣術2、斧術1、蹴り1、踏みつけ1、頭突き1、脅し1、裏切り1、逃げ足1、誘拐1、統率1、大剣術4、怪力4、眷属強化1、異常耐性1、火魔法3、水魔法2、闇魔法2、ゼネラルアーマー召喚、ゼネラルソード召喚、眷属召喚1、暗器術1、操毒1、盾術1、隠密1、マインドブロック1、床上手1、狼爪斬1、長駆1、俊足2、遠吠え1、剛力3、頑丈1、雄叫び1、無敵1、オーク召喚1、隠蔽1、槍術1、魔力探知1、毒薬調合1、鑑定1、魔力回復1、気力譲渡1、目くらまし1、強打1、強襲1、騙し討ち1
パラメーターに変化はないが、スキルはどんどん増えている。
『今、特に必要なスキルは・・・。探すのに時間がかかる。そうだ、鑑定だ』
鑑定を自分に使って自分のスキルみると、スキルを整理できそうな気がした。
武器系
大剣術4、剣術3、短剣術2、棍棒術2、斧術1、槍術1、暗器術1、盾術1、投擲2、強打1、強襲1
格闘・身体系
格闘1、喧嘩1、噛み付き1、跳躍2、突進1、逃げ足1、蹴り1、踏みつけ1、頭突き1、
能力上昇系
怪力4、剛力3、敏捷3、身体強化2、皮膚硬化2、頑丈1、聴覚強化2、夜目1、俊足2、長駆1、穴掘り1、
隠蔽系
隠密1、隠蔽1、目くらまし1、騙し討ち1、裏切り1、詐欺1、誘拐1
探査系
気配察知3、魔力探知1
魔法系
風魔法5、土魔法3、火魔法3、水魔法2、闇魔法2、魔力回復1
支援系
気力譲渡1
召喚系
ゼネラルアーマー召喚、ゼネラルソード召喚、眷属召喚1、オーク召喚1
支配系
統率1、眷属強化1、仲間呼び1
精神制御系
マインドブロック1、警戒1、威圧1、脅し1
調剤系
操毒1、毒薬調合1
その他
鑑定1、無敵1、悪食4、異常耐性1、成長加速1、床上手1
魔物スキル(使えない)
飛行1、羽刃1、嘴攻撃1、鉤爪1、狼爪斬1、遠吠え1、雄叫び1、繁殖力1
『これでだいぶすっきりした』
その後、横になって暫く眠った。
朝になったので、また干し肉の煮込み鍋をつくった。
肉鍋の匂いに釣られたのか、クレラインが目を覚ました。
「傷の様子はどうだ?」
と聞くと、
「だいぶ良くなったわ」
「歩けそうか?」
「まだ無理みたい」
「背負って、街まで帰ろうか?」
「それは恥ずかしいかな。そいえば、ダブ、体が大きくなった?」
「ああ、大きくなった。ハイオークの魔石を食べたからな」
「ハイオークを倒したの?」
「いや、それがな。言いにくいんだが、オーリアが自分を売って金を作ってくれてな、その金でハイオークの魔石を買った」
「オーリアが自分を売った?」
「金貨25枚でな。だから、早く戻って、買い戻したいんだ」
「お金はあるの?」
「盗賊が溜め込んでいたのを貰った。金貨が50枚くらいある」
「それなら、早く戻ってオーリアを買い戻してやって」
「お前を連れて帰りたいんだ」
「なら、背負ってくれてもいいわよ」
「それなら、決まりだ。まずこの肉汁を食ってくれ。それと薬酒も飲んでおいてくれ。俺は、荷物をまとめてくる」
と言って、隣の大部屋に行った。
幹部の部屋に戻るとクレラインは起きて、盗賊の持ち物にあった男物の服を着込んで、腰に剣を吊るして出かける準備を終えていた。
俺は、食料や水を入れた袋、金目の物や武器や魔道具などを入れた袋をいくつかアレックスに背負わせ、俺もいくつか背負った。
その上で、クレラインを抱き上げて洞窟を出た。
俺がクレラインを抱っこしているのは、俺は手が塞がっていても、魔法で攻防ができるからだ。アレックスには、荷物は背中に背負わせ、両手が自由に使えるようにした。
街に着くまでの道中で、幾度も魔物に襲われたが、俺の魔法とアレックスの斧で蹴散らした。街が見えるところまで来る頃にはクレラインは自分で歩けるまでに回復していたので、アレックスに持たせていた荷物を全て俺が持ち、アレックスの召還を解除して街に入り、そのまま奴隷商に向かった。
奴隷商の扉をくぐったとき
「だから売れないって言っておりますでしょう」と店主が声を張り上げ、
「俺に盾突いて、この街で商売がやっていけると思っているのか」と、別の声が怒鳴り返している。
それを無視して
「昨日売ったオーリアを買い戻しに来たぞ」と大声を上げると、
店の奥で言い合っていた2人の男が俺の方を見た。
「おお助かった。お兄さん、この人が、あの娘を買いたいと言ってきかないんだよ」
奴隷商に今にも掴みかかろうとしていた肥満気味の男は、俺の方を見ると、こっちにやって来て、上から下までジロジロ見下ろした後、
「小僧、あの女はお前にはもったいない。俺が買ってやる」と、上から目線で言ってくる。
「何だ、こいつ。オーリアのことを言っているのか?」と店主の顔を見ると、店主は頷く。
俺は肥満気味男に「オーリアは俺の女だ」と言い返すと、
「やかましい。平民が、俺に口答えするとは無礼だぞ。行儀を教えてやる」と言って腰の剣を抜こうとしたが、それまで店の隅でひっそりと立っていた執事服を着た男が素早く肥満男に近づいて、その動きを静止した。
「ぐっ、なぜ止める、グレイド」
「ブラッド様、このようなことで、平民相手に騒ぎを起こしては、お館様のお叱りを受けますぞ」
「お前は、あいつらの味方をする気か?俺は、どうしてもあの女奴隷が欲しいんだ」
「店に置いてあっても、先に買うと約束した者がいれば、その約束が優先されるのは、誰もが認めている商いの決まり事ですぞ。それを、貴方様が踏みにじっては、お館様の顔を潰すようなものですぞ」
「それなら決闘だ。決闘なら、親父の顔を潰すことはない。おい、お前」と肥満男は俺に人差し指を突き付け、「あの奴隷女を掛けて決闘だ」と叫んだ。
「騒がしい奴だね。何を勝手に盛り上がってるんだい。オーリアがあんたなんかの奴隷になるわけないだろ」
クレラインが店の中に入って来て、肥満男に、馬鹿にした言葉をぶつける。
「何だと」とブラッドと呼ばれた、どうやら身分のある男の息子らしい肥満男は、
「う、美しい。お、お前もだ。お前も買うぞ。いくらだ?」と、急に話題を変える。
「クレラインも俺の女だ。勝手なこと言うな」と、俺が話を遮る。
「お前の女だと?嘘をつけ。その女は俺が連れて帰る」とクレラインに腕を伸ばしたが、その腕を俺が払った。
「痛っ。貴様、貴族に手を出したな。死刑だ。衛兵に突き出してやる」と、肥満男が気色ばんだところに、
「あんた、もう、家督を継いだのかい?さっきの話からすると、ご当主は健在で、あんたはまだ貴族じゃないんだろう。それとも、現在のご当主に対して、今ここで引退宣言を出して、あんたが家督を引き継いで貴族様を名乗るつもりかい。それは立派な謀反だよ」
クレラインが肥満男の言い分の欠点を見事に突くと、肥満男は、言葉に詰まって蒼ざめた。
「ま、まて、いや、そんなつもりじゃ」
「なら、あんたが謀反を起こしたって私たちが騒ぎ出さないうちに、さっさとこの店を出ていきな」
クレラインに言い負かされて
「くそ、くそ、覚えていろ。おい、グレイド、帰るぞ」と言って、肥満男は店を出ていく。その後ろを追いかけるように執事服の男も出ていくが、扉の所で振り返って、軽く頭を下げていった。
そんなひと幕の後、オーリアを無事に買い戻したが、
「あんた達、早くこの街を出た方がいいよ。あいつはこの街にいる貴族の息子だが、素行が悪くて街中の嫌われ者さ。この街にいると、どんな難癖をふっかけられるかわからないからね」と奴隷商に忠告された。
俺達は礼を言って奴隷商館を出た。




