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獣性

カロンの船の中で、俺が受けた重力攻撃について考えていた。

あれは、間違いなく重力魔法だ。しかし、倒した貪欲からスキルをドレイン出来なかったので、重力魔法はステータスに表れない応用魔法なのだろう。空間魔法の上位魔法なのかも知れない。

そんな考えに浸っていると、カロンに『着いたぞ』と告げられた。


顔を上げると、河岸に石の桟橋があり、カロンの船はそこに横付けされたので、俺は桟橋に飛び移った。

河岸からかなり離れたところに、大きな建物が見えていた。その建物は城ではなく、巨大な円筒形の外観は、地球のコロシアムに似ていた。

『コロシアムということは、今度は試合形式か』と考えながら、門のところへ行くと、門の兵士に、

「挑戦者はこちらへ」と案内された。俺が来ることが、分かっていたらしい。

兵士の案内で闘技場の端に出た。すると、向こうの端にも人影があった。

しかし、その人影は、頭部がおかしい。獅子の被り物を着けているようだ。

闘技場の中央へと進んでいくと、その頭は被り物ではないことが分かった。

『獅子の獣人なのか?この世界で初めて見たぞ』

2メートルを超える大きな身体に、アンバランスなほどに大きい頭部が乗っている。

腕も太く、前腕から先がライオンの前脚の様になっている。掌は、30センチ以上ありそうだ。その先に、大きな鉤爪が、今は隠されているけど、出てくるんだろうな。

脚も、爪先がライオンの後ろ脚のようになっている。この爪先にも、爪が隠されているようだ。そして、太い尻尾まであった。


その獅子の獣人が、反対側からこちらに向かって歩いてくる。

2人の距離が50メートル位になったところで、俺が立ち止まると、相手も同じように立ち止まった。

「逃げずに来たのは褒めてやろう」と獅子の獣人が吠えるように言った。

「お前は、獣性か?」と相手を確認すると、

「はっはっはっ!この姿を見れば、確認するまでもあるまい。さっ、つまらぬことを気にせずに、殺し合おうではないか」

俺は、ハデスを装着しようとしたが、呼び出せなかった。

「このコロシアムでは、身体一つで戦うのがルールだ。鎧も武器も無しだ」

獣人は、そう言うなり、こちらに向かって駆け出した、

ゼネラルアーマーもゼネラルソードも召喚出来なかった。ということは、魔法とスキルだけで戦いを組み立てなければならない。

獣人の足が速いので、考える時間がない。取り敢えず無双と瞬動のスキルを発動して、迎え撃つ。

50メートルの距離を、瞬き一つの時間で詰められた。

気が付くと、右手の爪が上から襲って来た。瞬動と回避で、辛うじて躱して、衝撃波魔法を撃つ。だが、相手にダメージはなく。次は、左手の爪が、アッパーカット気味に下から襲って来る。

次々と襲って来る爪の攻撃を、瞬動と回避で、何とか躱しているが、反撃のチャンスが掴めない。三半規管破壊魔法も効かない、

気が付くと、壁際に追い詰められようとしていた。

『不味い』

このままだと躱し切れなくなるので、一か八かで、ドッペルゲンガーを出して、俺の身体から分裂したように動かす。

獣人は、これに引っ掛かって、ドッペルゲンガーを爪で切り裂いた。その瞬間に俺は身体を沈め、怪力、剛力、金剛を同時に発動させて、相手の左膝にローキックを叩き込んだ。

手応えを感じたと思った次の瞬間、俺の頬を、相手の右手の爪が抉った。

普通なら顔の半分が無くなっていたところだが、金剛を発動していたので、頬に爪が食い込むことはなく、その代わりに、盛大に跳ね飛ばされた。

幸運にも、闘技場の中央まで、跳ね飛ばされたので、態勢を立て直すことが出来た。

だが、獣人も縮地で直ぐに俺に追い付いて、爪で襲って来る。

ここで俺は、まだ実戦で使ったことがない空間魔法を使った。

空間魔法は、アンテローヌからドレインしていたが、使い方が全く分からず、どうしても発動しなかった、

それが、この追い詰められた状況で、使い方が閃いたのだ。

バックステップで攻撃を躱すと同時に、俺と相手の間の空間を、空間魔法で拡張した。

獣人は、俺がバックステップするのを予期して深く踏み込んで攻撃してきたが、僅かに拡張された空間のせいで、爪が空振りした。

すかさず、俺は身を沈め、右膝にローキックを叩き込む。怪力と剛力と身体強化の同時発動だ。金剛は、一度使ったのでクールタイムに入っていて、まだ使えない。

似たような効果のあるスキルを順番に使ってクールタイムを回避しながら、ヒットアンドアウェイで、左膝を攻撃し続けた。

そして、遂に、獅子男が片脚の動きがぎこちなくなった。しかし、それは擬態だったようで、よろける振りをしながら俺に抱きついて来た。両腕で抱え込んで、牙で攻撃するのが狙いだったのだろ。

抱え込まれると負けるので、その寸前で、もう一つの切り札を使った。

「スタンジー」

俺と獅子頭の間にスタンジーが召喚され、スタンジーの体積に、俺も獣人も、跳ね飛ばされた、

鎧や武器は召喚出来なかったが、やけくそで眷属を召喚したら、成功した。

俺は、スタンジーの股の下を潜って獣人に肉薄すると、更に、左膝を蹴り続けた。

スタンジーは、たぶん獣人に勝てないので待機させておいた。

遂に、攻撃が本当に効いて、獣人は片足を引き摺り始めた。

ここが勝負どころと感じた俺は、温存しておいた無敵を発動させて、獅子頭の背後に回って首に腕を回し、一気に首を捩じ切った。

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