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セレストリ辺境伯

セレストリ辺境伯の城で、アリシア達と不謹慎なことをしているうちに、辺境伯が帰還した。

「閣下がお戻りですよ」

お付きの侍女に、そう言って起されたアリシアは、

「大変、お出迎えに行かなくては」と叫んで跳び起きた。素っ裸のままでシャワールームに飛び込むと、

「ねえ、身体を拭きに来て」と、まだベッドにいる俺を呼ぶ。

俺が、大きなタオルを持って、シャワールームに入ると、肌を濡らしたアリシアが、こちら向きで、両手を上げて、

「さあ、拭いて頂戴と」と、俺を挑発する。

俺は、タオルを広げてアリシアの身体を包むと、タオルの上からその身体を抱きしめた。

アリシアが、ぐっしょり濡れた髪を手櫛で掻き上げると、その下から現れたふっくらとした唇に、俺の唇を重ねた。

「ん、ん、ん、もっと、こうしていたいんですけど、急がないといけませんの。あなたも、シャワーを浴びて下さいな」

と、俺の身体をやんわりと突き放しつつ、自分の身体にタオルを巻き付けて、シャワールームを出て行った。

取り残された俺は、仕方なしに、シャワーを浴びて身体を洗った。

俺がシャワールームから出たときには、アリシアはもうドレスを着て、2人の侍女に髪を結わせていた。

もう1人の侍女が俺に新しいタオルをくれた。

俺が、身体を拭いている間に、その侍女が新しい服を用意して、両手に捧げ持つようにして待機している。

侍女も美人揃いだなと思っていると、

「侍女に手を出したら承知しませんわよ」と、いつになく真面目な声で、アリシアに咎められた。

「この娘達は、セレストリ家のものです。侍女に手を出したいなら、ダブリン家が雇った侍女にしてくださいな」

貴族の奥方が、浮気をしかけたダメ亭主を叱りつけるような口調で言われた。

『アリシアって、亭主を尻に敷くタイプだよな。げっ、尻に敷かれるのは俺じゃないか。これって不味くないか?』と心配していると、アリシアの言葉を聞いた侍女達が身を固くしていた。

俺が侍女たちに手を出すと聞いて、恐れているのかと思ったら、

「お嬢様、いつダブリン家になられたのですか?ダブリン家になられても、私達はお嬢様にお仕え致します。今すぐ、ダブリン家としてお雇い下さい」と、3人の中で1番歳上に見える侍女が言う。

その言葉に気を取られていると、俺の服を持っている侍女が、

「今夜、お待ちしておりますわ」と、俺に囁いた。

すると、それを聞き咎めたアリシアに、

「あら、モテるのね。でも、まだ、手を出したらダメですよ」と注意された。そしてその侍女に対して、

「それにエラ、もし、お手が付いても、妾止まりですよ。それでもいいなら、好きにしなさい」

エラというのは、俺の服を持っている侍女の名前のようだ。

しかし、侍女までが誘ってくるとは、この奔放さは、セレストリ家の家風なのか?

しかし、俺も、これ以上女を増やすのは不味いと思っている。王都には、まだ7人の女が待っている。全員満足させるのは、そろそろ限界のような気がする。

俺がそんなバカなことを考えていると、アリシアは、

「父上にお別れの挨拶をしてからでないと、お前達を雇えないので、暫くお待ちなさい」と、まだ侍女への注意を続けていた。

『家を興したら、使用人まで雇わないといけないのか?すると、金と家が必要だな』

そんなことを考えながら服を着終えた俺は、ベッドに座って、アリシアの化粧が終わるのを待つ。

1時間も待たされて、やっとアリシアの準備が終わった。


「父上に会いに行きましょう」とアリシアに促され、階段を降りて、1階の謁見の間に入ると、長身痩躯の白髪混じりの男が玉座に座っていた。

辺境伯というから武闘派の脳筋タイプを予想していたが、全く外れた。

鋭い眼光と高い鷲鼻、薄くて大きな唇が特徴的な顔で、見るからに、頭が切れて、意志が強そうだ。

その前に、アリシア、シモーヌ、俺、アンテローヌの4人が跪くと、

「「「「御戦勝、目出度き儀にございます」」」」

と、アリシア達に合わせて、俺も教えられた言葉を昌和する。

「うむ、留守の守り、ご苦労であった。ときに、アリシア、その男は誰だ?」

と、いきなり俺について問いただす。

「はい、私が嫁いだお相手となります」とアリシアが答えると、

「手紙に書いておった婿殿か?もう、婚姻したのか」

「家臣団の宣誓を済ませました」

その返事に顔を顰めた辺境伯は、

「セレストリの名を捨てたか」

「はい、ダブリン家を興すことに致しました」

「戦から帰って来て、いきなり、そのような報告を受けるとはな。シモーヌ、そのほうもか?」

「はい、父上。私も宣誓を済ませました」とシモーヌ。

辺境伯は、アンテローヌを見て、

「ランズリードの跡取りも、ランズリードの名を捨てたのか?」と聞いた。

「はい、ダブリン家となりましたので、今後、よろしくお願い致します」

「ランズリードも、よく承知したな」と呟くと、辺境伯は再び俺の方を向いて、

「セレストリの跡取りにしようと思っていたアリシアを娶るには、力を見せてもらわねばならぬ。覚悟は、おありか?」

と、俺を睨み付けた。

するとアリシアが、

「ダブリン様は、無敵で御座いますわ」と、勝手に答えた。これに、辺境伯は高笑いをして、

「無敵とは、大きく出たものだ」と言いながら玉座から立ち上がり、

「見せてもらおう」と有無を言わせない態度で、先に立って歩いて行く。

その後を付いて行くと、コの字状になっている城に囲まれた中庭に出た。

「ここは、練兵場としても使っておってな、ここで吾輩のアイアンゴーレムと戦って貰おう」

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