表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/158

誘拐

執務室から出たラディウスは、そのまま城を出ると、領都トラディションのスラム街に向かった。

スラム街にはいくつかの闇ギルドがあるが、その全てを束ねる男に会うためだ。

ラディウスが歩いていると、いつの間にか、その後ろにアライザが続いていた。さらに歩くと、次はベララが、そして、リヴァイ、ブルドが次々と現れて、後に続いた。


スラムのある通りに来ると、道の両側の家の柱や壁に凭れていた数人の男達が、手に手に武器を持って動き出して、ラディウス達の前に立ち塞がった。

先頭の1人が、ラディウスに剣を向けて、

「ここから先は通れねぇぜ」と脅しに掛かるが、2メートル近いこの大男でも、ラディウスの肩に届かないほどラディウスが大きいので、少しおよび腰だ。

ラディウスはニヤニヤしながら、

「お前、新米か?俺が誰だか知らねえのか?」と、嘲笑った。

そのとき、道沿いの家のドアが開いて、

「おい、止めろ。そのお方は、ナザニエールのギルマスだ。お前が手を出したら、俺達にまで火の粉が降り掛かる。さっさと道を開けて、お通ししろ」と、男が怒鳴った。

ラディウスは、声がした方を見て、

「話が分かる奴がいて、良かったな。もう少しで、頭を握り潰すところだっだぜ」と言ったときには、大きな手で、目の前に立つ大男の頭を掴んでいた。その動きが速すぎて、誰にも動きが見えなかった。しかも、その大きな手で掴まれた頭の骨は、既にひびが入り、男は立ったまま、泡を吹いて気を失っていた。

ラディウスは、手に掴んだゴミを捨てるようにその男を脇に捨てると、道を進み始めた。

流石に、もう道を塞ぐ者は現れず、ラディウス達は、スラムの奥に進んで行った。

その大きな家の前では、5~6人の柄の悪そうな男達が入口を塞ぐように立っていたが、ラディウスのことを知っているのか、黙って場所を空けた。

ラディウスは、そんな用心棒などいないような軽い足取りでドアの前に立ち、ドアの取っ手を待つと、そのまま握りつぶした。

「あっ、悪いな。取っ手が潰れちまったぜ」と言いながら、むしり取った取っ手の残骸を、入口の横の植え込みに捨てた。そして、取っ手の無くなったドアを軽く押すと、ドアは枠から外れて、部屋の中に飛んでいった。ドアの後ろで剣を構えていた3人の用心棒も、そのドアに突き飛ばされて、反対側の壁に激突した。

そのまま部屋に踏み込んだラディウスは、

「出て来いや。野良犬」と大声を上げながら、腰の大剣を抜いて、上から下へと一文字に斬り落とした。

同時に、3階の奥の部屋からガタンと、何かが倒れる大きな音がした。

3階の奥の部屋にいたボスは、目の前の大きな机が、いきなり真っ二つになって倒れたことに驚いて、声も出せなかった。

「早く降りてこねえと、次は、股にぶら下がってるやつを、真っ二つに、ぶった斬るぞ」と、ラディウスが再び大声を上げた。

直ぐに、

「まっ、待ってくれ。い、今、降りていく。早まらないでくれ」と、悲鳴を上げながら、上の方でドタバタする音が聞こえると、1人の男が階段を駆け降りて来た。

その男は、転がるようにしてラディウスの前まで来ると、

「ラディウスの旦那、ひでえじゃないですか。俺の体面も考えてやって下さいよ」

と、息を切らしながら懇願する。

ラディウスは、

「お前の体面なぞ、知ったことか」と、手に持つ大剣をその男の頬に突きつけ、

「身寄りのないガキを集めてこい。100人だ。足りなけりゃ、攫ってでも数を揃えろ」

「へっ、攫ってもいいんですかい」とボスが驚いていると、

「足りなけりゃと言っただろう。死にたいのか」と、ギャングのお株を奪うような脅しを掛ける。

「わ、分かりましたから剣を退けてくだせえ」とボスが下手に出る。

ラディウスは、ここで、ようやく剣を腰に納めた。

「おい、野良犬。椅子を持って来させろ」とボスに命令する。

「ラディウスの旦那。野良犬は酷いですぜ。せめてガルムと呼んで下せえ」

「お前なんざ、野良犬で充分なんだよ。早く椅子を持ってこい」

「分かりやした」

ガルムと名乗ったスラムのボスは、手下に向かって、

「おい、この旦那方に椅子を用意して差し上げろ。ボヤボヤするな」と怒鳴った。

ギャングの手下が運んで来た椅子に、ラディウス達は腰を下した。

「おい、酒を持ってこい」とガルムが手下に命令し、手下達は、小型のテーブルと酒や食べ物を運んで来て、ラディウス達の前に並べ始めた。

しかし、ラディウス達は、誰も酒に肴にも手を出さない。

「毒は入ってねえですよ」とガルムが勧めるが、無視された。

気不味い沈黙が支配したまま時間が過ぎ、ボスの家の前に子供達が集められつつあった。

「今、何人だ?」とガルムが外に出て来て確認する。

「80と、ちょっとです」

「もうちょっとか。他の地区からも集めろ」

ガルムは、そのまま家の中には戻らずに、外で待ち始めた。

家の外に集められた子供達は、荷台が大きな木箱のようになっている荷馬車に、次々と詰め込まれていく。

さらに子供が20~30人集められて、全員が4台の荷馬車に押し込まれていく。

どの子も、怯えて泣き顔になり、中には引き付けを起こしている子もいる。泣き始めた子供もたくさんいたが、無情にも木箱の扉が閉じられた。

そこに、ラディウス達が出て来た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ