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豪華な自宅

 もしも、このゴールデンウィークに「絵日記を提出しなさい」とでも言われたら、きっとこの日のことを一番力強く、気合いを入れて書くだろう。


 初日の撮影が終わり、次の日撮影、午後は多々良さんと姉さんと一緒に何故か(女装姿で)中華街へ行き、三日目は榊原と一日中ゲーム。

 そして、いよいよ迎えたのが四日目の楪のご自宅での生徒会選挙準備会であった。


 話は戻すが、何故この日を一番力強く書くと言ったとのかというと―――


「……えっぐ」

「……凄い豪華な部屋だね」


 俺と榊原の眼前に広がるのは、開放感溢れるリビング。全面が窓で覆われており、高層ビルやらが一望できるほど。

 ソファーやテーブル、テレビなど上質か高級の二文字しか出てこないほどパッと見で凄く、加えてキッチンはカウンター。大きなグリルに四口コンロ。シンクは蛇口が伸ばせて、食器洗浄機が完備。

 ここに至るまでのエントランスや外観はもちろん凄かったが、部屋に入ると開いた口が塞がらない。


「ふふっ、新鮮な反応で嬉しいですね」


 出迎えてくれた動きやすい部屋着の楪が俺達を見て笑う。

 新鮮と彼女は言うが、この部屋を見て無反応な人間がいるのだろうか? いたら教えてほしいものだ。


「お邪魔しまーす! あ、竜胆くん達来てたんだ」


 ……いたわ。


「お、おまっ……この部屋を見てまず先に俺達に反応示すとかってどうよ? 若い内から目が肥えてたら将来苦労するぞ!?」


 俺だってそれなりに金は持っているつもりだが、あくまで一般的にだ。

 この部屋を買うとなると、俺が何年ローンを組んで頭金を払わなければいけないことか。


「いや、奏ちゃんのお家って何回も来てるし」

「そりゃ、流石に慣れるよ」


 ひょっこりと、後ろから幾田が顔を出す。

 どうやら二人一緒に来たみたいだ。


「ちなみに、私も竜胆達と同じ反応だった」

「あ、やっぱり幾多さん達もそうなんだ」

「ちなみに、久遠は写真撮りまくって自分の母親に自慢してた」

「桜坂はやっぱり人とズレてるよな」

「てへっ☆」


 あら、お可愛い。

 姉さんに引け劣らないほどのあざと可愛さだ。


「改めて思うけどやっぱり凄いよね、楪さんは」

「ふふっ、私が凄いのではなく両親の頑張りの賜物ですよ。まぁ、いずれ私も自分のお金で同じような家を買いたいとは思っていますが」


 ひけらかすことなく、楪は俺達を中へと促す。

 とりあえず「荷物はこちらに置いてください」と別室に置かされ、再びリビングへと戻ってソファーへと座る。

 四人が腰を下ろしてもまだまだスペースがあるとは、触れてこなかった高級家具にドキドキしてしまう。飲み物を溢さないようにしないと……って―――


「楪、飲み物俺も手伝うぞ」


 楪が一人で巨大な冷蔵庫から飲み物を用意しようとしていたので、俺は腰を上げる。

 続いて榊原も同じように腰を上げたが、楪が片手で制してきた。


「いえいえ、おもてなししている側にお任せください。今日は私のために集まっていただいたのですから、これぐらいしないと」

「いや、だがな……」

「竜胆くん、ここは奏ちゃんの意思を尊重してあげて」


 ねっ? と。桜坂は腰を上げた俺の裾を摘む。

 確かに、今日は楪のために集まった会だ。そこまで気を遣わなくてもと俺達が思っていても、本人は「せめて」と申し訳なさを感じているだろう。

 桜坂の言う通り、ここはご厚意に甘えた方がいいのかもしれない。


「ありがとね、楪さん」

「ふふっ、こちらこそありがとうございます」


 榊原が先に腰を下ろす。

 なので、俺も同じように座り直した。

 そして、それからすぐに楪が俺達の前へお盆片手に飲み物を持って来て、そのまま並べてくれる。


「「「「ありがと」」」」

「こちらこそ、どういたしまして」


 さて、と。

 お盆をテーブルの下に置いた楪は長いソファーの対面に座り、頭を下げた。


「皆さん、本日はお集まりいただきありがとうございます。手伝っていただけて本当に嬉しいです」


 律儀というかなんというか。

 こうして改めてお礼を言われると気恥ずかしいと思うのと同時に、真面目に取り組もうと思える。


「私は由香里さんと一緒に演説原稿のチェックをしますが……」

「じゃあ、僕はそっちを手伝おうかな。無関係な第三者の意見も必要だろうし」

「あ、それ助かる」

「じゃあ、私と竜胆くんはビラの続きを……って、パソコンがない!?」


 幸先不安の相方で真面目に取り組めるか心配である。


「はぁ……一応、ノートパソコン持って来たよ。ツールも学校のよりかはいいし、これで進められる」

「ありがとう、竜胆くんっ! ……ハッ! いいやつになったってことはまた一から使い方覚え直し!?」


 ……ハッ! 盲点だった!


「ちくしょう……これじゃあ、今日一日で完成するか怪しくなる!」

「さ、最悪私一人だけでもお泊りするから……竜胆くん、安心して前を向いていいよ」

「桜坂……お前」

「え、何このシチュエーション?」

「名シーン風に言ってるけど、単に久遠の頭が悪いから始まった話なのよね」


 桜坂、お前ってやつは……へっ、お前を一人にさせるかよ。

 逝く時は、最後まで一緒だ。


「ふふっ、では皆様……各々頑張りましょう」


 お淑やかな楪の笑みから、各々動き始める。

 丸一日。ゴールデンウィークが明ければ、すぐに生徒会選挙。

 そのために、俺達は気合いを入れるのであった。

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