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04話 侵食

因子は他に干渉する

これは因子を保有するすべての者が知っている。

しかし、これは先天的に因子を保有していた場合の話。


彼の場合はその例外になる、因子が人為的に投与されている。

その場合、因子の干渉対象となる「他」とは何か?

自分の周りのもの?

否、自分であり自分以外である。


**************************


彼がそのことに気づくことは、先ほどまでの形勢をひっくり返すには十分すぎる要素だった。


「自己侵食」

僕は気づいた。この因子の本質、僕だからこそできること、反撃の一手に。

体の中の因子が細胞の一つ一つに流れるのを感じる。

彼の体に異変が現れる、一束の髪が紫に染まった。

狂種が動き出したが、さっきとは違い目で動きが追える、遅い。


目の前を自動迎撃機構が横切る。

僕は目の前に来たそれを殴るようにして勢いよく手を当てる。

手の形に合わせ手を覆うようにして、それは変形した。


さっきよりも数段遅い狂種に向けてその拳を放つ。

狂種は弾かれたかのように飛んだ。

さらに距離を詰め、一発さらにもう一発。

狂種が起き上がった。さっきよりもスピードを上げて応戦してくる。

こちらの攻撃を受けても、すぐに立ち上がりこちらに距離を詰めさせない。

こいつ、学習している。さっきまでのやり方じゃあ通じない。


ふいに頭に浮かんだインスピレーション。

それはあの時の刀を持った老人の攻撃、流れるような無駄のない連撃。

相手との距離を詰めるより速く、相手に反撃もとい思考の隙すらも与えない

今の僕ならばできるんじゃないか。

いや、やるんだ。必ず帰ると約束したはずだろ。


体中に因子が巡らせる。体が熱い、燃えそうだ。

それでも

ここでやらなくちゃ、僕がここで必ず因子を断ち切る。

目が紫の光を帯びる。

僕は地面を蹴る。さっきと同じくまずは直線、対応された。

こちらの力を受け流して反撃の体勢をとられる、さっきまでならこれで終わりだっただろう。


しかし

よける、先ほどまで頭のあったところ。

予想通りだ、頭に血が上るほど頭を狙ってくる。

思い切りのけぞるようにして、身をかわした。

そのまま足で蹴り上げる。

「グルッァァァァァァ」

狂種が苦悶の声を上げた。

まだだ、まだ終わらない。

低い体勢から地面を再度蹴る。あの老人のように僕は武器を使いこなすはできない。

だからこそ、自分の体を武器とする。あの老人の攻撃、剣術、剣の動きを自らの体で再現する。


縦横無尽に倉庫の中を駆けまわる一筋の紫、その光の筋は数を増していく。

そのうちの一つが狂種に衝突した。狂種が弾かれる、その先でまた弾かれる。

その間隔がだんだんと短くなる、数多もの方向からあたる攻撃に狂種は徐々に対応ができなくなる。

狂種のその隙を彼は見逃さない。

渾身の一撃を打ち込む。


「連」


**************************


最後の一発を叩きこんだ後、狂種は動かなくなった。

恐らく気を失っている。少しずつ顔色もよくなってきている。

あぁ、この人はもう大丈夫だ...

そう思った途端、頭が割れるような頭痛がして僕は気を失った。

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