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人外兵器の運命録《ディスティニー・アーカイブ》  作者: かつをぶし
東都混沌編
16/35

14話 東都中央地区混沌戦⓪

二人は東都タワーへと急ぐ

そのうちにも刻一刻とタイムリミットは迫ってきていた。


東都タワーに着くとバスターとバレットしかいない

まだ混乱して十分な人員がいない。

妹は背中から降りてバスターのところへ向かった。

本部の方でもあの因子反応は検出されているだろう、

だが詳しい場所はまだ特定できていないはずだ。

あれは巧妙に隠されているのは妹以外発見できない。


ジュリは思想のもとへ駆け寄った。

紫藤は驚いた顔をしている。

「どこに行ってたの?大丈夫だった?」

私は聞かれると答えようとしたが言葉が詰まってうまく出てこない。

バスターは私に目線を合わせて、ゆっくりでいいよと言ってくれた。

しばらくして言いたいことがまとまる。

「あのね、因子反応はね、タワーのてっぺんにあるの。」

私のその言葉にバスターは頷いて、どこかに連絡した。


本部に連絡しているようだった。

そして私のところにも連絡が来る。


<<東都タワー付近に待機している、総員に連絡します。

因子反応は東都タワー頂上より検出が確認されました。

直ちに排除してください。>>


バスターにも連絡がまわったみたい、

横にいたもう一人の人と何か話している。

再びバスターはこっちを向いて言った。

「ありがとうね、ジュリ。

君のおかげで特定できた、香澄さんも感謝してるってさ。

あとは柑子君がどうにかするって言ってくれたから

心配しなくて大丈夫だよ。」


この人はこの人を置いて逃げた私にも、

こうやって優しくしてくれる。

「何で優しくするの?私逃げたんだよ?」

涙が流れる


その様子をバスターは黙ってみていた。

「君が逃げたのは知ってるよ、香澄さんから聞いてる。

でも君は戻ってきた、自分と向き合って今ここにいるんだ。

僕にはそれができなかった、

えらい、えらい。」

そう言って頭をなでてくれる。


自分の居場所を失うのがいやで、だからこそ戻ってきて

そんな自分勝手な理由でもいいのだろうか?

そう言うと彼は

僕だってそんな感じの理由だからねと言って

顔に差した影をごまかすかのように力なく笑った。


**************************


因子反応の発信源の特定から数分後

バレットは展望デッキが崩壊したことで地に落ちた上層部に向かっていた。


ジュリからの報告で東都タワー頂上、電波塔としての役割を担う部分に

何かがあるとのこと。

崩壊して地に落ちたとはいえ、崩れ落ちた上層は

随分と向こうの方に着地しており、そこそこ距離が離れている。

紫藤に頼まれ、行くことになったのは自分だった。

自分ならば障害物関係なしに一直線にいけるとあいつは判断したからだそうだ。


感じる因子反応は徐々に大きくなる

なぜこんな大きな反応の発信源が特定できなかったのかは未だ謎ではあるものの

排除要請が出たからにはためらう必要はない。

上層部が着地した地点にはすぐに到達した。


そこでいったんのインターバルを挟む。

連続した因子を用いた飛行を行うと、徐々に因子の干渉能力が低くなっていき

スピードが遅くなる。

今回の場合は飛行や浮遊を多用したため当然の結果だった。

急ぐからこそ、必要なインターバルはとらなくてはいけない。


10秒ほどその場で足や体を伸ばし、再び因子を使う。

ふわっと空中に体が浮かぶ、

数か月前まではただの学生だったというのに

この慣れようには自分でも驚きだ。

そんな無駄なことを一瞬考えて

俺は電波塔の役割を担う頂上に向かって飛んだ。


高度が上がるごとに徐々におかしくなってくる。

最初はわずかな違和感だった。

スピードが落ちている。

そこから高度を高くなるごとに

因子の自由が利かなくなってきた、

具体的には空気に干渉する力が弱くなっている。


俺は空気に干渉して揚力を生み出すことで体を浮かせている。

ただその揚力が頂上に近づくにつれて徐々に弱くなってきている。

さっきインターバルを挟んですぐ後のため因子の連続した使いすぎではない。


そして考えながらもあまり問題なく飛行していて

頂上まであと数10メートルまで近づいた時のこと、

干渉能力が完全に打ち消された。


あ?


何が起きたか分からないまま落ちていく。

再度干渉しようとするもできない、

そのまま速度を増して落ちていく。

地面が迫る。


背中に付けている器具からパラシュートが展開される。

落下する速度が大幅に落ちて、地面に衝突する心配もなくなった、

恐らく俺の因子反応の消失を感知した本部から連絡がまわって

あいつもすぐここに来るだろう。

ほら来た。


紫藤は俺に駆け寄るなり

大丈夫か、体に異常はないか聞いてきた。

その後開いたままのパラシュートが笑われる。

いや、笑ったのはこいつじゃない。

紫藤が背中に背負ってるガキだ。

パソコンをいじったまま笑っている。

俺は突如、干渉能力が消えたことを伝える。

「俺はまだ因子が使えない、あと少しすれば完全に元通りになる

そうしたらもう一度、試すことにする。」

おれはそう言いながら手を広げたり閉じたりしながら

感覚を確かめる、若干の違和感は残るものの少しずつ感覚が戻ってきていた。


さっき感じた消失感、

あれは因子の干渉能力を打ち消したように感じなかった。

もっと言えば因子すら消された感覚、

因子が体の中から消えたような感覚だった


ジュリがパソコンはいじりながら、僕の因子伝導体も使って計算を行っている。

こんな使い方もあるのかと感心していると

彼女の顔が青ざめる。

あ、あ、あ、と短く声を発した後

「伏せてっっ!!」

今までの彼女からは想像もつかないような声で叫んだ。

その声は因子伝導体を通して

付近にいるすべての関係者へと伝わる。


刹那、東都タワーの頂上から紫の光が空に向かって伸びた。


ジュリはあ...と言ってその場にへたり込んでしまった。

紫の光、因子反応


まさか

そう思った直後

本部からの連絡が入る。

香澄さんの慌てたような声が耳に飛び込んできた。

<<東都中央地区全域から因子反応検出

因子の型をデータベースと照合、紫“狂信”です。>>


まさか、狂信?

ボクと同じ紫の因子、そしてその中でも遭遇したことのある唯一のそれ。

それが何の目的で?


本部からcisの関係者は一旦、本部に戻るよう指示があったため

素直に従っておく。


本部に戻るとそこはまるで一連の騒動により、目が回るような状態だった。

その中で香澄さんは僕たちを見つけ

別の場所に連れていく。


そして深刻そうに話し始めた。

「事態は思った以上に深刻です、

東都タワー電波塔から発せられた紫の光は狂信の因子であることは確定しました。

そしてこのことからこれらの騒動を仕組んだのも“狂信”と考えて間違いないでしょう。

相手がどう出てくるか、何がしたいのかは分かりません

現状、上空に因子反応が検出されているのみで一般人に被害は出ていません。」

そう言うとジュリの方を睨みつける。

「あなたがもっと早くにこの情報を渡していれば防げたようなものです。

あなたなら出たベースに侵入、照合して狂信の因子だとわかっていたのでしょう。

そうすればも少し早く対処できたものを...」

そう言っていたから僕は柑子君から聞いた話を伝える。


なるほど...と彼女は冷静さを取り戻して話が続いた。

つまり、私たちが阻止しようとすることを分かったうえで仕掛けたということですか

と彼女に聞かれる。

大方、僕の考えと同じだったため同意した。


その後、彼女は再び管制室に戻り僕はジュリをロミの元まで送ることにした。

ロミは案外簡単に見つかった。

僕を見つけると彼は力なく笑う。

「ボクがもっとしっかりしていれば妹をもっと早く決断させていれば

こんなことにはならなかったんでしょうか?」


僕はそうは思わなかった、

ロミはさっきこう言った。

「決断させていれば」

つまりそれはジュリ本人の意思ではなく、彼女に受動的に決断させることになりかねない。

「ジュリは自分で決めたはずだ、

その意志の力こそが尊いんだ。」

僕はそれ以外に答えが見つからず、ジュリをロミに渡してその場を去った。

後は二人でどうするべきか考えるのもいいだろう。


正午のニュースによると午後から東都は全域雨が降るらしい。

東都全域に雲と傘のマークがついていた。


しばらくすると東都に雨が降り始める。

これがさらなる災禍を引き起こすことを誰も知る由はなかった。


東都に降雨が確認されて数分後、

管制室では莫大な数の因子反応が検出され始めた。

香澄は慌てて発信源を探す。

先ほどまでは東都中央地区全域に一つの反応があっただけだが

今回は違う、何が起こったのか。

その時彼女の目に飛び込んだのは携帯に表示されている天気予報。

東都は午後から雨が降るとある。


まさか、

急いで彼女は検出された反応の発信源を拡大する。

その発信源は移動していた、

そして同じ場所の監視カメラと画像を照合すると...


因子反応の発信源は一般人だった。


紫藤さん及び柑子さんに連絡を入れる。

彼はすぐに応答した。

<<紫藤さん、雨です。

相手の目的は中央地区への降水だったんです。

雨に溶けた因子が人体に触れることが本当の目的だったんです。>>

二人はすぐに反応して被害が出る前に対処すると言ってくれた。


これは最悪の場合、パンデミックになる可能性もある。

迅速に対応せねば。


**************************


香澄さんから連絡を受けてボクと柑子君はすぐに出る準備をしていた。

そこに二人、人が立っていた。

ロミとジュリだ。

「元はと言えばボクが妹に与える選択肢を間違ったせいです。

僕なんかでよければ、尽力させていただけませんか?」


「あのね、私がね、お兄ちゃんに頼りすぎなきゃ

こんなことにはならなかったと思うの、

私も行かなきゃって思うの。」


妹もこう言っていますし...とロミも言う。

それを聞いた柑子君は二人の方を見た。

「知らん、勝手にしろ。

お前らがいたところで何が変わるということもない。

お前らは一度俺たちを裏切ったんだ、

期待する方がおかしいだろう。」

そう言い捨てて彼は行ってしまう。

ジュリはあまりの気迫に泣きそうになっていた。

あまりにもかわいそうだったため

来てもいいって言ってるんだよと耳打ちしてあげる。

ジュリは涙を必死にこらえて分かったと言った。


彼の言う通りこの2人は一度は僕たちを裏切った

でもそれが自分の考えを見つめなおすきっかけになったのなら

この2人には必要なことだったのだろうと

いつか自分の力で歩んでいく未来を切り開くための回り道であったなら

それも悪くないんじゃないのかなと感じた。


同じような干渉能力を持つ柑子君とロミ、

そして僕はジュリと行動を共にする。

柑子君はジュリと一緒にすると本格的に泣かせる心配があるため別々にした。


他のエージェントにも出動命令が下りたらしい。

さすがに4人では厳しいと思っていたところだからありがたい。


東都中央地区のあちこちに繋がるゲートの前には

既に赤嶺さんと氷室さんがいた。

「遅い、既に事は進んでいるというのに。被害が出たらどうするんですか?」

「まぁまぁ、ひと悶着あったみたいだからよ。許してやれよ、青。」

氷室さんが僕に文句を言い、赤嶺さんがそれを拾う。


いつも通りだ、

でも上では人々がいつも通り送っていた生活が、そうではなくなってしまっているかもしれない。

人々のいつも通りを、日常を取り戻す。


それぞれがゲートをくぐり、射出機の中に入る。

では、またと言った直後

射出機は上昇を始める。

次に会うのは、中央地区の狂信の因子を全て抹消した後になる。


射出機が止まる。

出て周りを見ると、普段と何も変わらないような街並みだった。

しかし人が見当たらない、今は昼時だから普段なら人がたくさんいるはずだった。

空は厚い雲に覆われ、今も雨が降り続けている。

この雨が止まない限り、人々は因子を無意識のうちに浴び続けることになる。

 

管制室とジュリの二人三脚でサポートをしてもらう。

とりあえず周りをよく見るために5階建てくらいのビルの上まで移動した。

柑子君と違って浮いたり飛んだりはできないので普通に階段を使いました


上から眺めても人っ子一人見当たらない。

ジュリにはここで待機してもらうように頼む。

何かあった時のため、自動迎撃機構を彼女の周りに飛ばせておいた。


ビルから建物越しに飛び移って周囲を詳しく見て回る。

ホントに人の気配がしない

微かに人の声のようなものが聞こえてくる。

ジュリの頼んでボクの近くの因子反応のない生体反応を探してもらった。

すると近くがヒットしたそうだ。

その方向に足を進める

その先にはよく見るとバリケードのようなものが作られている。

そしてその周り、

まるでゾンビ映画かのように何かが群がっている。

その群がった何かは人間だった、

しかし少し様子が変だ、目が紫になっている...


恐らく屋外にいたことで雨に降られた人たちが

狂信の因子に支配され、あのようになってしまったのだろう。

この人たちは死んでいない、まだ因子による支配さえなくなれば

正気を取り戻すに違いない。

まずはバリケードから遠ざける必要がある


僕は近くに着地すると支配された人たちが一斉にこちらを向く。

恐らく彼らは今は洗脳されている、

ここまで大規模に因子を展開したとなると効果も薄いはず。


それでも後々、どんな騒動が起こるか分からない。

これが火種になる可能性も十分に考えられる。

今のうちに鎮圧するに越したことはない。


その人たちはこちらを見るや否や走ってきて

僕を捕まえようとする。

見ると彼らの体には紫の模様が浮かび上がっていた、忌々しいあの模様が。


手を伸ばしてきた男性を体制を低くして躱し

そのまま因子を侵食させる。

狂信の因子を体内から除去した後、僕の因子を体からきれいに抜き去る。

身を躱しながら、因子を打ち込む作業をバリケードに向かって走りながら

10人程度の人にを行った。


僕の因子を打ち込んで狂信の因子を取り除いた人たちが倒れている。

その人たちをバリケードの近く、雨の当たらないところまで運んで寝かせておいた。


その際、バリケードにの人たちには軽く事情を説明しておく。

雨に濡れてはいけないこと

寝かせている人たちは安全だということ

そして絶対に口外しないこと

この3つを約束させて僕は次に指示された場所へと向かった。


雨がしのげるところが近くにある場所、近くにない場所で

被害の規模は大きく変わる。

さっきの場所は前者だった、だからこそあれで済んだのだろう。

僕は目の前の光景に唖然としている。

目の前ではいくつかのビルから煙が上がり、

道端の車からは火の手が上がっている。


人々は互いに争い、殴るけるの応酬をしていた。

いくら因子による洗脳とはいえここまで差があるものなのか。


とりあえず道端に降りてはみたものの

みんなわき目も振らず、いがみ合っている。

そしてついに一線を越えてしまいそうな者が現れる。

工事現場の一角にいた一人の男が鉄パイプを手に取った。

そしてそれを目の間にいる人に叩きつけようと...


させるわけないだろう

自動迎撃機構で鉄パイプをはじき、僕は件の男を地面にねじ伏せ

因子を強めに流して動けなくする。

よかった何とか間に合ったと思ったのもつかの間、

それを見た人たちは僕が危険であると判断したようだ。


一斉にこちらを向くと手に何やらバールやら鉄パイプを持って向かってくる。

それ普通にやれば犯罪だからね。

機動局と裏で全てを計画した者が繋がっている以上

機動局がまともに機能しているとは思えない。

全員を相手にするとなると、巻き込まれて二次被害を被る人間がいる可能性がある。


結論、全員まとめて一斉に無力化して因子を消しましょう。


はぁ、なんてこった。もう少しばれないようにやった方がよかったかな?

考えても仕方ない。


ここに来るまでにジュリと打ち合わせて考えた方法がある。

僕が因子を直接打ち込むと元からあった因子は消せるが

今度は僕の因子を抜き取らなければいけない。

この大人数だと絶対に間に合わない。

ジュリはパンデミックの可能性、大人数の因子処理も視野に入れていた。


因子伝導体を起動、

4つに分かれると全員を囲むように地面に突き刺さった

ジュリにつなげる、今のみ操作権が彼女に移っていた。

いきますっという声がインカムから聞こえると同時に

4本の伝導体の間に紫の光が走る。

光がやむころには青の中にいた人々の因子反応は消えていた。


これは殲滅型ライフルの技術の応用で範囲内の因子を殲滅する。

その範囲指定のためのデバイスが因子伝導体というわけだ。


とりあえず彼女が指定してくれた場所は対処した。

中央地区は残り3か所、

他のみんななら大丈夫だろう。



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