08話 正体不明と敗走
苗字が柑子君と同じ、まさか。
彼も息を飲んでいた。
「俺の姉貴だ。」
そう一言呟いてきり、彼は話さなくなった。
気まずい、非常に気まずい。
ただでさえ彼からの僕の評価はよくないっていうのに
こんなの、ただの拷問じゃないか。
「と、とりあえず家に帰ってみたら?
お姉さんにはそこで詳しい話を聞いてみればいいんじゃない?」
なんとか場を繋ぐため言ってみた。
が、彼は無反応。かと思えば
「帰れん、ただでさえ心配かけたのに。
俺の家族は俺が行方不明になってから血眼になって探してくれたらしい。
今更、合わす顔がない。」
そうか、彼にはそんなに彼のことを思ってくれてる家族が...
家族?
少しの違和感を感じた。
何か思い出しそうな...
あぁ、やっぱり思い出せない。
「でもやっぱり会いに生きたいんだ。
少し家の中、覗くだけだから。単独行動、許せよ。」
そう言って彼は住宅街の角を曲がっていった。
さて、僕も無事に単独行動をすることになった。
依頼者とは駅近くの交番で落ち合うことになっている。
この都市にはcisの活動を支援する施設が数多ある。
交番もその一つ、
一見するとただの交番だが、cisの人間が常駐しているそうだ。
その交番に向かうと先客がいた、依頼主だ。
「こんばんは、柑子梢さんですか?」
声をかけると、そこにいた女性が振り返った。
なるほど確かに柑子君に似ている。
特に目元がそっくりだ。
「はい、先日連絡させていただきました。柑子梢です。
依頼の件、ありがとうございます。
実はどこに相談しても門前払いされるばかりで...
藁にもすがる思いで半信半疑の状態で連絡したら繋がって、
本当に良かった...]
喋りながらも時折しゃくりあげる。
何があったのだろうか。
「早速ですが、本題に入ってもよろしいですか?」
そう聞くとぽつぽつと話してくれた。
彼女は現在大学受験の年で最近は夜遅くまで塾にいること。
ある日の帰り、やはりその日も夜遅くまで塾にいたそうだ。
友達と二人で家の近所まで来たとき、何処からか見られているような気がしたそう。
何かの気配を感じて振り向くと
そこには赤い目をした何かがいたそうだ。
その何かは人間の形をしていたものの、明らかに人間ではなかったそうだ。
なるほど確かに普通の人間なら目が赤く発光することはありえない。
そして人間の形をしていた。
100%確定とは言えないが何かはあるように感じる。
「とりあえず今日は夜も遅い、お家までお送りしましょう。」
そう言うと彼女は助かりますと言って承諾してくれた。
家まで送る道中、気を付けて周りを観察してみたが特に異常はなかった。
というかあまりにも異常がなさ過ぎて、かえって不自然に感じるのは気のせいだろうか?
何事もなく彼女の家まで着いた。
「これからはあまり夜に出歩かないようにしてください、
その時一緒に帰っていたお友達も同じです。」
彼女はありがとうございますと言って家に入ろうとする。
こちらを向いて彼女がお礼を言った時
彼女は見てしまった、
自分に向けられた赤い目を。
柑子さんは叫び声をあげた。
その声を聴いて僕は一瞬戸惑う。
<<因子反応あり、近いです。>>
途端、香澄さんから連絡が入った。
周りを見回して反応の出所を確認しようとした
刹那、風が吹いた。
そして同時に何かが風を切る音。
そしてそのすぐ後に何かがぶつかる音。
音のした方を見ると柑子君がいた。
電柱に拳をめり込ませている。
その背中から非常に強い憎しみに近いようなものを感じた。
「逃がした。」
そう彼は言った。
その一部始終を見ていたのは柑子さん。
その顔は恐らくひきつっているだろう、主に恐怖で。
僕は申し訳ないことをしたなぁと顔を向けることができなかった。
ようやく決心がついて彼女の方を向くと、
彼女の顔は恐怖半分、びっくり半分といったところだった。
「…ちゃん」
柑子君がビクッとなった。
「翔ちゃんだよね?」
柑子君はフードを深くかぶりなおす。
「やっぱりその癖、翔ちゃんだよ!!」
柑子君は無視を貫く。
そして
「あんたみたいな奴は知らない。さっさと行くぞ、紫藤。」
と言って僕の腕を引っ張ってしまう。
僕のことは外ではコードネームで呼んでよという僕の声も無視して
引っ張る力だけが強くなった。
腕を引かれながら、とにかく夜に出歩かないことをもう一度彼女に注意すると
僕の首に手刀が落とされ、僕は気を失った。
僕が目を覚ましたのはあの交番。
「一人で色々と探ってはみたが、やはり何もつかめなかった。
紫藤、お前の方はどうだ?」
いきなり聞いてきたよ、この人。
自分で手刀落としてきたくせに何を平然と聞いてきてるのやら
そう思っていると、彼が僕の首の方を覗き込んできた。
「ん?お前何か首に痣みたいなのあるぞ、大丈夫か?」
さすがの僕でもカチンときた。
「なんだい、君が僕に手刀を落として気絶させたんだろ。とぼけないでよ。」
彼はぽかんとしていた。
「俺じゃない、俺はお前が急に倒れたからここに担ぎ込んだんだ。」
ん?僕と彼の認識に齟齬があるのか?
お前は仮にも俺の補佐に来てくれてる人間だ、
その人間を俺が気絶させる意味がないだろう。
その間に何かあったらどうする? と聞いてくる。
確かにそうだ。彼には僕をあのタイミングで気絶させるメリットがない。
となるとあれは誰の仕業なのか...
「考えていても始まらない、行くぞ紫藤。」
彼は交番を出ていった。
口はあれだが、何かと気が利くし論理的に物事を考えている。
あれ、僕よりもすごいのでは?
僕も交番を飛び出して彼を追いかけた。
彼も僕と同じ人工的に因子を保有させられているだけあって
やはり身体能力は一級品であった。
そしてそれに加え彼の因子、
聞くところによると飛行や浮遊であれば簡単にできるらしい。
だから、速いし中々追いつけない。
やっとのことで追いつくと彼は電柱の上で座っていた。
息を切らしている僕に気づく。
「遅かったな紫藤、今からだが二手に分かれてこの近辺を捜査する。
その方が合理的だ、何か連絡があった場合には連絡をよこせ。
異論は認めない、以上。」
そう言って、電柱から飛び降りると空をかけるように飛んで行ってしまった。
僕、一応補佐なんだけどな。
しかし、彼の言うことに異論はない。
その方が合理的だろう。
それじゃあ、僕も勝手させてもらおうかな。
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紫藤と別れて数分が経過した。
今のところ、目立ったことはない。
しかし、空を自由に飛べるのは便利だ。
町の様子を俯瞰できる。
花本香澄に叩き込まれた因子の巡らせ方はすでにある程度まではできるようになった。
あの訓練室での出来事は忘れない、
あれは今までで一番の屈辱だったかもしれない。
俺は容量がよかった。
一つ教えられれば大抵のことはできた。
だから、前のあの出来事から花本香澄を毎日連れだして練習した結果が今だ。
ふん、完璧だろう。
こう見ると夜も人は多い。
姉貴が変な奴に絡まれたのは家の近く、
つまりはあまり街灯のないところ。
そういえば学校でも暗い夜道には気をつけようと言われていたな。
俺は空中でUターンして住宅街の方へ戻った。
住宅街は街灯があるとはいえ、やはり駅前などと比べると明かりは少ない。
特にこの地域は特に明かりが少ない。
そんな中を塾帰りだろうか、女子高生らしき人が歩いている。
暗いし、最近ないかと嫌なうわさが絶えない。
早く帰ろうと足を速めたその時
彼女は曲がり角で誰かとぶつかる。
すみませんと言い、通り過ぎようと顔を上げると
そこには二つの大きな赤い目のようなものが光っていた。
そしてその目のようなものがついている顔にあたるところがパカリと割れて
彼女の頭を飲み込もうとした。
彼女は腰が抜けて立てない。
触手のようなものが彼女の顔に触れそうになる。
が、触れれなかった。
何かに弾き飛ばされたかのように飛んでいく。
「間に合ったか?」
柑子翔がその何かを上空から急降下で蹴飛ばした。
「おぃおぃ、あれはまるで昔の漫画で見た敵キャラじゃねぇかよ。
気色悪い、顔面割るなよ気持ち悪い。」
それを見た俺の初見での感想がそれだった。
人型とは程遠いが、赤い目。
そしてこんな人目のないところでのあんな行動。
完璧、確信犯だな。
まぁ、とりあえず腕試し。
最悪の場合は人間一人連れてなら逃げれるか。
そう考えている間に何かが体勢を立て直す。
「何かじゃ呼びにくいからよぉ、お前のことクチって呼んでやるよ。」
そう言うと、こちらの言うことを理解したのか
クチは触手を一気に伸ばしてくる。
遅い、遅すぎる。
柑子翔、彼からしてみれば非常に遅かった。
彼はまず女性を片手に抱え、上空で静止する。
そして女性を屋根の上に下ろすと急降下
クチの後ろに回って蹴り飛ばした。
クチはあまりの速さ、そして強さに対処しきれず
あっさりと飛ばされる。
そして空中に浮いたところを彼は見逃さない。
空中は足場がない。
故に安定しない。
だからこそ、俺が圧倒的に有利をとれる。
彼は任務に赴く前、小野道弥生に呼び出されていた。
「ねぇ君、紫藤君と同じなんだって。
いいなぁ、香澄ちゃんは一緒に訓練したんでしょ。
ずるいなぁ、うらやましいなぁ。
ということで私の言うことを一つ聞いてもらいます。」
なんて身勝手なことを言っていたのを覚えている。
「香澄ちゃんから聞いたよ、なんか飛び回るんだって?
そんな君にはこれだ」
と言って渡されたのは銃。
「相対速度って知ってる?
銃弾の速度は大体遅くとも時速400m/sなんだよ。
それに君の速さ、ありとあらゆる場所から狙えることが加われば
相手はどうなると思う?」
あの人あの後何て言ってたのだろう。
あぁ、そうだ。思い出した。
今の状況にぴったりな言葉じゃないか。
そう、確かあの小野道弥生はこう言ったはずだ。
「「蜂の巣間違いなし」」
銃の引き金を引く。
全ての弾丸が命中、まさに蜂の巣状態になった。
とりあえず、まずは一匹始末完了。
これまでやってきたサバゲーの知識が役に立った。
立ち回りや奇襲は我ながら及第点ではないか?
紫藤はどうしているだろうか。
死んでいなければいいが...
そこら中に汁をまき散らして絶命したクチを見て
彼女は絶句していた。
先ほどもそうであったが、今はさっきにも増して腰が抜けてしまっていた。
なにせよく分からない何かがよく分からない何かに銃殺されたのだ、無理もない。
そこに目つきの悪い男、先ほど自分を助けた男がふわりと降りてくる。
手には機関銃のような形状の大きな銃
全身を黒で統一してフードをかぶっている。
「あんた見たか?」
彼女は力なく首を縦に振る。
そうかと言って男はそのまま動かない。
「今から別の人間が来る、そいつについて行け。
とりあえず事情聴取だけでも受けろ。」
ぶっきらぼうにそういって、その男は喋らなくなった。
とりあえず今回の事案に関するイレギュラーは今のところこれだけ。
紫藤の方で何かあったとしても何とかするだろう。
俺はあいつの実力を知らないし、そもそも見たこともない。
まだここに来て数週間の俺に成果で負けるようなら
エージェントの立場から引きずり降ろしてやる。
処理班が到着した、ここもマニュアル通り。
今のところ狂いはないに等しい、大丈夫だ。
俺は後のことの一切を処理班に任せて、また夜の空へ飛び出した。
**************************
本部に残った紫藤は考え込んでいた。
主にバスター、紫藤について。
いくらエージェントになったからといって新人と同じようなものだ。
それに単独行動、ひいては任務の斡旋を積極的に行うのは
あまりにも不自然。
あいつは所属1か月。
ここまでの成長を見せるだろうか?
元々、科学地区を壊滅させるような力の使い方しかできなかった奴が
この短期間で狂種や他の紫を相手どれるようになった。
ここまで考えて紫藤は顔を上げる。
彼には一つの考えが浮かんでいた。
しかし彼はそんなはずがないと首を振る。
そうしてもその考えが頭から離れることはなかった。
**************************
紫藤が柑子と二手に分かれて早30分ほど経っただろうか、
柑子の向かった方向から銃声が聞こえてきた。
「彼か...多分大丈夫だろう。」
向こうもことは向こうに任せて、僕はこちらのことに集中しなければいけない。
小野道さんがメンテナンスと共に本部から見たこちらの周囲の監視映像を
見れるようにしてくれた。
このことは香澄さんにも伝わっているようである。
「香澄さん、聞こえますか?この近辺の周囲の映像を送っていただけませんか?」
<<了解、バスターからの申請により管理地区の専用監視機構を行使します。>>
因子伝導体がバラバラに分かれて空中に浮かぶ。
それぞれが空中に映像を投影する。
この映像の中から、条件に当てはまる対象を探し
見つけ次第執行する。
条件に当てはまる対象はすぐに見つかった。
香澄さんに連絡して場所を教えてもらう。
さっきの銃声は恐らく柑子君によるものだろう。
彼が武具を使ったということは何かしら今回の件に関わる対象と接触したということ。
この町ではそのような対象が複数いる可能性もある。
被害が出る前に急がなければ、
香澄さんから対象の位置を聞いた僕は、引き続き監視を続けてもらうように頼んで
その場所へ急いだ。
やはり指定された場所は明かりが少なく、人通りも少ない。
学校で口酸っぱく言われ続けたのと同じだ。
香澄さんからの連絡もない、ここで間違いないようだ。
地面に降りて伝導体が服を覆い、学生のような服装に変化する。
これも小野道さんから新たに教えられたことの一つ。
ホログラムの応用である。
とりあえずこの格好で近辺をぶらぶら歩いてみて様子を見るようにしよう。
いざとなれば香澄さんが因子反応を教えてくれるだろうから
今のところは死角なし。
<<因子反応が検出されました、2つ先の角からです。注意してください>>
了解っと短く返して気を引き締める。
さてどう来るかなと考える。
このまま行けば鉢合わせ、分で言えば五分五分。
こちらが有利をとるには...
電柱の上からその角の先を見てみる。
やっぱりいた、しかし赤い目ではあるものの人型である。
上空で自動迎撃機構を起動、同時に服装も元に戻る。
相手の死角からまずは奇襲をかける。
と思っていたものの気づかれた。
顔にあたる部分が割れて触手のようなものを伸ばしてきた。
「なんだか見たことあるなぁ、君のことは何て呼ぼうか?クチかな?」
自動迎撃機構が迎撃、触手はバラバラになった。
助かった、これで一旦は対策に集中できる。
電柱の上で動かずに触手を迎撃し続ける。
どのくらい時間が経ったのだろう。
クチはついに触手を引っ込めて、こちらに向かって飛び上がった。
避けて地面に着地すると奴は追いかけてくる。
素早い動きで接近してきて、棘のようなものを腕の部分から生やした。
近距離では棘、遠距離では触手か
触手は自動迎撃機構で対処できるだろうから、僕が気を配るべきは棘。
今は伝導体に因子を回しているだろうから、棘の一つでさえも致命傷になりうる。
現在の体内の因子充足率は約50%
自動迎撃機構の形態はなにせ燃費が悪い。
体内の因子の大半を持っていかれる。
相手の動きは速い、自己侵食も完璧ではないからそう見えるだけかもしれないが
侮れないのは事実だ。
となると相手の手を封じていくのが定石。
「自己浸食」
僕は今ある因子の全てを自己侵食にまわした
相変わらず、自動迎撃機構は飛んでいるまま。
しかしこれも無駄ではない。
ここは居住地区、立体物が多いがここは人が住んでいる。
できるだけ被害を出すわけにはいかない、
そこで考えたこと
飛び回る自動迎撃機構を足場にして疑似的な「連」を行う。
そのために必要な最低限の身体強化
そのほとんどを目と足にまわした。
よし見える、これなら大丈夫
飛び回る足場からさらに立体的な動きを加える。
「連」以上に複雑な動きが完成した。
できるだけ立体物」に被害を出さないように、
且つ立体物を遮蔽物として用いることで相手の背後をとった。
「背中がら空き、いける。」
最後の足場を蹴って僕は相手に触れた。
奴の体に僕の体組織が侵食、内側から崩壊させる。
最期の声を上げさせることなく、執行が完了した。
僕たちの存在が知られることはあってはならないと香澄さんから
何回も念を押されている。
今の感じなら物音で気づいた人もいないだろう。
「執行完了しました。」
<<ひとまずはお疲れさまでした、まだ他にも反応が検出されたら連絡します。>>
やっと一息つける、それにしても柑子君、銃なんかぶっ放して。
周囲に被害が出たらどうするつもりだったのか?
あれは帰ったら香澄さんから大目玉喰らうんだろうなぁ。
とりあえずもう一度見かけを変化させて周囲を歩いてみる。
特におかしなところはないし、反応も検出されていないようだ。
そうこうするうちに処理班の人たちがやってきた。
確かに道には飛び散った肉片やよく分からない液体があるため、
このまま日が昇ると、猟奇殺人の現場みたくなる。
一般人にばれたら大変だ。
ありがとうございますと声をかけようとすると
処理班の人たちは僕の方に駆け寄ってきた。
ここに来る道中、何やら怪しいものを目撃したそう。
それは赤い目に人型をしたものであり、低いうなり声をあげていたようだ。
さっきのが本命だと思っていたのだが...どうやらそうではなかったらしい。
教えてもらった場所へ急ぐことにする
香澄さんにもその旨を伝え、その周囲の監視映像をもらった。
なるほどいるいる
<<おい紫藤、聞こえるかD4地区に因子反応が検出された。
花本からの連絡だ、すぐに向かえ。俺も今向かっている。>>
柑子君から連絡が入った。
残念、こっちは一歩早くついてるんだよなぁー。
なんて考えながら地区の境界で彼を待っているとすぐに来た。
「早いな、行くぞ。」
そう言ってそくさくと行ってしまう。
「俺とお前で挟み撃ちにする、俺は西からお前は東から行くぞ。」
とだけ短く告げて行ってしまった。
僕はインカムで彼と連絡をとりながら東へと回る。
<<因子反応の増強を確認、注意して下さい。>>
香澄さんから連絡が入る。
いざという時のために体を侵食させておく。
侵食により機能が向上した肉眼により彼の位置と因子反応の出所の位置が把握できた。
その時、彼が飛び出す。
そういえば挟み撃ちにするとは言っても同じタイミングでとは言われていない。
補佐ならばこちらに合わせろとでも言いたいのか?
そんな感じだった。
補佐と言っても彼と僕はほとんど経験で言えば同じ合わせられるはずがなかった。
僕が飛び出すまで一瞬の間が空く。
その一瞬が命取りだった。
香澄さんに範囲を広げてもらって探してもらった因子反応
検出された3つの中で最も強かったのがこの地区で検出されたものであった。
因子反応が強い
すなわち因子の保有者の能力も相応のものとなる。
柑子君は上から奇襲を仕掛けたが、すぐに気付かれた。
相手は手を広げ上に向ける。
そうすると柑子君は空中でバランスを崩して落下する。
しかし彼もなかなかのものだ、すぐにライフルのような武具を取り出し発砲する。
かなりの数、発砲したためその衝撃波で土煙が上がった。
土煙が晴れた後、僕が見たものは衝撃的なものだった
彼が腹部から血を流して倒れている。
僕は一瞬止まった、
その後相手がゆっくりとこっちを向く。
赤く光る眼がこちらをはっきりと捉えるとともに、ゆっくりと歩きだす。
刹那、奴は僕の目の前に現れた。
嘘だ。あの距離を一瞬で詰める、しかも僕はこの間瞬きもしなかったはずだ。
そこから考えると、距離を詰めたというよりも目の前に現れたような感じ。
目の前に現れた相手の攻撃を間一髪で躱す。
躱したというよりも体が勝手に動いた感じがした。
はっと我に返った僕は自動迎撃機構を起動させ、
柑子君を吊るすと、撤退することを選んだ。
恐らく今のままでは、どうにもならない。
そう考えて僕は急いで彼を本部へ連れ帰った。