公爵様の嫁は笑わない
「す、すみません。」
謝罪する公爵は申し訳なさそうにしていた。
私、アリーシャ・ルーブスは行き遅れである。生まれたのが13番目と言う理由から周りから厄介がられた。そんな私を嫁に貰いたいなんて人はいなかった。
そんなこんなで16歳になってしまった。だが、私は公爵家へ嫁ぐ事になる。公爵家のデブ公爵、リオン・デールはその醜い見た目から周囲に付けられたあだ名は豚公。誰も嫁に行きたがらない彼から、妹にお見合いの話しを持って来られたのだ。だが、妹はそれを断り私に擦り付けた。
私は複雑な心境だった。私の様な行き遅れで不吉な生まれの人間なんかでいいのだろうかと思ったからだ。でも、きっとこれを逃せば結婚など二度とできないと思った。
「お見合い相手が僕なんかで、すみません。笑っちゃいますよね。こんな醜い豚が婚約を申し込むなんて……ははっ」
「笑いませんわ。」
「へ?」
「笑わない。私だって不吉な生まれで行き遅れよ。笑っちゃいますでしょ?」
「笑いません。生まれて来る事は悪いことではないのですから。それに結婚だけがすべてじゃない。行き遅れだなんて周りの評価は気にしないでください。」
「妹じゃなくてすみません。」
「あ、いえ、仕方ないですよ。僕なんかじゃ誰とも釣り合わない。」
「そんな事はありませんわ。自信を持ってください。」
「ありがとう。」
そんなこんなで婚約することになった。リオン様は確かに少し、いや、かなり太っている。だが、それ以上に素敵なところは沢山あった。ピアノも引けるしバイオリンも弾けてバイリンガル、さらに剣術にもたけていて、これで痩せていたらモテモテだったろうにと思う。
皆見た目で決めつけるのは間違いだと思った。一方、妹は私に上手く嫌な婚約を変わって貰えたので喜びに浸っていた。屋敷に戻った私を見て嫌な笑みを浮かべながら
「お姉様、変わっていただいてありがとうございます。さぞ素敵なお見合いになりましたでしょ?」
なんて言ってくれる。
「ええ、もちろんよ。」
それ以外に答えられる言葉がなかった。相手は嫌味で言っているのだろうけど、私にとってはいいお見合いだった。
「お姉様のおかげで私も婚約が決まりましたの!」
ニヤニヤ笑う妹セルビは口火を切る。
「第2王子に嫁ぐと事になりましたわ。」
「そうなのね!おめでとう!」
「っ!……ありがとう、ございます。」
嫌味の通じないアリーシャにイライラするセルビはそのまま怒ってどこかへ行ってしまった。私の悔しがる姿がみたかったらしい。
そして、ついに公爵家へと嫁ぐ事になった。向かえにきた馬車から降りて来たのは優しそうな細身の男性だった。
「あの、公爵様は?」
「へ?僕がリオンだけど?」
「え?」
「ダイエットしたんだ。君のために。僕を笑わないと言ってくれた君のために少しでも努力したくて、痩せたんだよ。」
それをみた妹は顔面蒼白した。第2王子よりもイケメンだったからだ。
「さあ、手を。行きましょう。」
「は、はい。」
こうして、無事に公爵家に嫁いだアリーシャは幸せに暮らしました。