夜明け迎える者共よ-9
「いってぇ〜!?」
瓦礫を吹き飛ばして、一丈弓大鎧のジメジメした肉の布団の中から這い出た大葉介は、そんな風に叫んだ。
崩落した虚舟と、巻き込まれた地上の、鶴山の町の土砂や建物の残骸が宙を舞った。
「あっ、生きてるのが」
と、軍団の絡繰らに助け出された。
「酷い戦じゃないか。何があったんだ?」
と、軍団兵は、大葉介に言った。
「我らは吉野から来た。西はこんな戦をしているのだな。衛士の前は、東にいたので知らなかった。おぉ、そうだ、坂東の戦は南朝が勝ったぞ!」
「悪いが、深編笠の男がいなかったか?」
大葉介は探していた。
怪獣は討たれた。
全てが終わった。
「牛塵介を知らないか!?」
方々に走り、訊いて回る。
しかし誰もが首を横に振るばかりだ。
「……」
──そして。
大葉介は、見つけたのだ。
森と山の境界。
彼岸花ではなく夏水仙。
花に囲まれていたのだ。
いつぞやの彼が言った。
「死ぬならば、彼岸花か水仙か……」
美しい花に囲われて死にたい。
牛塵介だったものの周りには数輪の花。
枯れ果て、醜く腐った彼岸花のなれ果て。
牛塵介は困ったような、しかし、充分だと、口元を歪めて、身を還していた。
ただ──それだけである。
「満足そうな顔が、なぜできる」
牛塵介の顔は確かに、笑った。
膝を屈し、伏せていて、なお。
大葉介の体から力が抜けた。
得る物は、何もなかった。
喪うだけの道中の果てだ。
大葉介は踵を返した。
「怪獣は倒した。『これから』を考えるよ」
抜いたままだった。
刀を鞘へおさめる。
「長い人生、ですからね」
鬼国で剣を抜く・完




