夜明け迎える者共よ-7
一丈弓大鎧の『肉』が震えた。
後付けの鎧の大袖が剥がれた。
あらわれたのは『鱗の肌』だ。
指の先、鋭い爪が、伸びた。
「蜥蜴風情が!」
と、貝怪獣は腕だけで滑るようにぶつかってきた。肩を当てて、大葉介の一丈弓大鎧を軽々と抱え上げて、足を地から引き剥がし、しかし勢いはそのまま、壁まで押し潰した。
「誰が!」
大葉介の肌がさざなみを打つ。
瞳孔が、変わった。
「蜥蜴だって!」
大葉介の鎧が、両手の指を絡めて一つの槌のように、貝怪獣の背中を、殻ごと叩きのめした。
砕けなかった殻がついに、割れた。
「なっ!」
「貝てのは、何層も殻を重ねるのさ!」
割れた殻が『ズレた』ことで滑った。
薄い表面が粉々に割れたが、すぐ下にはまた、新しい殻の層が揃っていた。
「ならば何度でも叩いて割ってやる!」
大葉介が両手の拳を何度も叩きつけた。
貝怪獣は、ムキになっている大葉介の一丈弓大鎧、その脇に、銛を何十と同時に打ち出した。
一丈弓大鎧が、浮いた。
鎧が打ち抜かれ、血をこぼした。
勢いのまま地面を転がり壁に激闘し止まった。
大葉介の鎧は、肉を垂らしながらも立つ。
「世界を! 神は自由にする権限がある! 神にならなくちゃ何も手に入らない、残らない、邪魔をするな!」
貝怪獣が駆けた。
殻の破片をキラキラとこぼしながらだ。
たった二本しかない腕の二本で、必死に走って、駆けていた。肉の刀は口で噛み、悲鳴をあげるほど強く噛み、血を流させながら、剣先を突き立てた。




