夜明け迎える者共よ-6
金砕棒が貝怪獣を支える腕の一本を打った。
牛塵介だ。
彼は、貝怪獣の隙を狙った。
比べれば遥かに矮小の身だ。
しかし渾身の金砕棒の一撃に、意味はあった。
均衡を崩されて、体を乱した貝怪獣の、大きな瞳が、信じられないと見開いていた。巨大な頭が落ちる、巨大な瞳に、金砕棒を持つ、深編笠の男を映していた。
「どうして」
大葉介と鎧から目を離した貝怪獣の頭に、したたか、野太刀が打ち込まれた。
一丈弓大鎧の野太刀だ。
櫓も一撃で両断する一閃だ。
──斬れてはいない。
貝怪獣の硬い肌は、野太刀の刃を受け止め、強靭な肉は野太刀の衝撃を吸収していた。
しかし完全に防いだのではない。
貝怪獣の裂けた肉から血が滝のように流れた。
「なんで……どうして……」
貝怪獣の肉の剣が、凪いだ。
ひしめいていた腕、伸ばされていたそれらが、枯れたように白く、倒れていく。
固く、硬く──鋭く。
渇望するよう伸びていた指手が、鋭利に。
肉の剣が薙いだ。
水平に、一閃した。
「見え透いている」
と、大葉介の鎧は胸を逸らす。
胸の鎧を肉の剣が滑るばかりだ。
削るが、それだけで意味はない。
逆に鎧の守りのまま、肉の剣を押した。
肉の剣を封じながら、野太刀の上段だ。
「肌が斬れずとも命は絶てる!」




