夜明け迎える者共よ-5
巨重同士が踏み鳴らした。
小さな物であれば、それだけで、耐えられず転ぶほどの激しさでぶつかっていた。
貝怪獣が肉剣を水平に振るう。
一丈弓大鎧は宙へ飛んで剣線を躱した。
肉剣から伸びる皮のない手らは惜しいとばかりに、跳んだ一丈弓大鎧へ届くはずのないものを伸ばし渇望していた。
激しい地響きと、一丈弓大鎧は地に降りた。
「鎧があれば、勝てると思っていた」
大葉介は止めていた息を浅く吐いた。
下から振るうままに野太刀で斬り上げた。
轟音がうなりをあげて剣線にいる全てを払う気を放っていたが、貝怪獣の肉の剣にあしらわれる。削ぎ落とされた腕らが血肉に成り果てこぼれた。
「獣なものか。強すぎる」
と、大葉介は貝の怪獣を見据える。
一丈弓大鎧の肉に包まれたまま、鎧の目を通して、指先に同じように感じる野太刀からの反動を確かめるように、柄にかかる指を整えた。
「どうしてそう一所懸命になる」
と、貝怪獣は口を開いた。
「喋れる、のか!?」
「ふんっ、不快な驚きかただね」
貝怪獣は、どこか女のような声色で続けた。
「ほぉ……ほぉ。美作の人間じゃない、外から来た検非違使だとは『知った』よ。三人の検非違使の一人、大葉介ちゃん」
大葉介は、痛む脇に力を入れた。
「なぜとは言わない。ときに、貝から疫病が広まると言う。ならば、近辺での疫病の根源が、お前であるならば、眷属も同然だ。……大葉介の腹の中にもいるのだろう」
「誰かが入れ知恵したらしい。いかにも、お前の、とくに肝には、忌々しいことこの上ない蟲どもが巣食っているとも」
と、貝怪獣はまるで同情するかのようだ。




