夜明け迎える者共よ-4
脈動し、身悶えし、手足ある肉剣を振るう。
大葉介は鎧と共に腰を落としながら、体を開き、胴の部分で肉剣を滑らせて躱すも、肉剣から数多伸びた腕が鎧を引っ掻いた。
一丈弓大鎧が野太刀を突く。
貝怪獣の顔を狙って!
──ガッ。
しかし、剣先は硬い殻に跳ね返った。
「硬いぞ」
大葉介の鎧は二の足を踏んだ。
刀が跳ね返された勢いを止める。
貝怪獣は、銛を打った。
大袖で受け止め、受け流す。
折れた銛が天上へ飛んだ。
銛……そうは言っても、貝貝がたぐれる紐のある銛だ。折れた銛の先端も含めて、巻き取られるように、貝怪獣の肉の中へと戻る。
──ガクンッ。
鎧が引っ張られた。
銛の返しが、大袖に食い込んでいた。
「殴りあいは避けたいかな」
と、大葉介は、しかし、じりじりと、貝怪獣のもとへと寄せられていた。
大袖の銛が抜けないか、揺らしてみるが、抜けそうには無い。貝怪獣と一丈弓大鎧の引っ張りで切れるようなそぶりもない。びたり──張った肉は、固く繋いでいた。
大葉介は逆に踏み込んだ。
人間の掌とは違う、一丈弓大鎧の掌が、野太刀の刃を掴んでまで短く握りこみ、突き込んだ。
「一点へ貫けば!」
あるいは貝殻を抜けるか。
剣先が、丸みのある殻を滑った。
僅かに、様々な色へ変化する白い殻の破片が舞うが、剣先は完全に逸らされていた。




