夜明け迎える者共よ-3
虚舟の最深部──。
「突き当たりだ」
大葉介は一丈弓大鎧を進ませる。
牛塵介は肩に載せていた。
「何か、いる?」
大葉介の瞳が丸く広がった。
大きい。人間ではなかった。
一丈弓大鎧が太刀を向けた。
「幾星霜待ったか」
大葉介は生唾を呑む。
細まる瞳孔は、見た。
「ともがらの肉では足りず、獣は無価値であり、神とはかくも邪智と知り」
起き上がる。
巨影──巨人。
半分は貝殻の。
人魚というには人間に近すぎた。
下半分の貝は渦のように巻いていて、幾つもの管を伸ばして、霧のようなものを吐いていた。
「鎧に任せた!」
「あっ、牛塵介!」
牛塵介はそそくさと逃げた。
脱兎とはこのことかと、怪獣に背を向けた。
一丈弓大鎧の絡繰を着た大葉介は逃げない。
絡繰の足下を大葉介が走り抜けていくとき。
大葉介は一丈弓大鎧の絡繰に見合った、野太刀を抜いた。天上は高く、存分に振るえるだけの間──だが、怪獣は、鎧が刀を振り下ろす前にすでに、全身をぶつけてきた。
鎧の背中が、虚舟の壁を破壊した。
砕かれた欠片が降り注いだ。
貝怪獣の人型から腕が伸ばされ、鎧の頭を押しのけてくる。大葉介は感覚を繋いだ鎧越しに指を食い込ませ、爪を立て、激しく組み合う。
野太刀の柄を利用して、貝怪獣の背を打つ。
甲高い悲鳴があがった。
下からすくいあげる拳が鎧の顎を狙い跳ねた。
鎧の顎になるのだろう部位に拳がめりこみ、両足が浮いた。鎧の背中が壁を削りながら、横に吹かれてとぶ。
大袖から、鎧は倒れた。
大葉介は鎧を慌てて転がす。
貝怪獣の肉が膨らむ。
打ち出されたのは、骨質の銛だ。




