夜明け迎える者共よ-2
「古い王国の墓の上に色々たかってる。舟も、町も、人やそこからでるものも」
と、牛塵介は先へ進む。
「古い王国の墓と言うが、墓の上に町など作るものなのかな。縁起が悪いというかなんというか、おそれしらずというか」
と、大葉介は訊いた。
「それほど古い時代なのだ。美作国……もっと古くには、備前、備中、備後と合わせて吉備王国で、吉備大王が支配していた土地だった。時の朝廷に解体されたのから数えても、六〇〇年は昔のことだが」
と、牛塵介は答えた。
虚舟と牛塵介が呼んだものの奥へと進む。
牛塵介の足に迷いはなかった。
鉄でも、岩でも、木でもない。
えたいの知れぬ何かの腹の中なのにだ。
「奥には何がいるんだ?」
と、大葉介は訊いた。
「虚舟の中身は、高天原から送られてきた、現世でまだ不安定な神なことがある。これも、そうだったのだろう」
「……だった?」
「中身を知っていれば、弱い神を食べて、強い力を吸い出してしまおうとする者もいるんだ。いるのは純粋な神じゃない」
「討伐するわけか。牛塵介の目的なのだな。と、言うことは、みんなを利用してだな。国府を襲わせて鶴山の町を揺さぶって、弱体化した軍団はもとより、集まりつつあった、外からの力も町の外へ出した。鶴山の町の重石を抜いて、虚舟の中身を浮上させるために」
「虚だしな。高天原や妖精郷に立ち入るのは難しい。体を得てからでないと触れないものだ」
「牛塵介は何が目的だったんだ」
「『怪獣』討伐だと、大葉介は言っていたでしょうに。怪獣を討つんだ。人間の手じゃ難しい。難しいから善行を積める。生涯に一度は、意味のあるものをしたいだろ。それだけだ」




