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美作鎮守将軍国司-7

「呪われた一族がいた」


 と、牛塵介は見えない月をおがむ。


「数年と生きられず、人と子も成せぬ呪い」


 と、牛塵介は軽い口調で続けた。


「まっ別に人間以外なら子供作りまくりですし、人間て選り好みをしなければ、半分魚だとか、馬だとか、鬼だとかと子孫繁栄なので困らない。

 数年で死ぬというのも、急激に成長して物心、思い出も、育って老いていので問題ない、少し、早く決断しなければならんが、早く育てばかえって縁も多く、無意味に死ぬこともない。

 ようは呪いも気の持ちよう……と、達観できるものも多くはないのだろうが……生きる意味、死ぬ価値あるものを見つけられる人間が果たしてどれだけいるだろうか? 誰もが、ただただ無意味に生き死にを演じて果てていく。なぜ死にたくないのか、なぜ生きたいのか、二つは表裏ではないのにな」


 牛塵介は握り飯を食べきった。


 指先についた飯を、舐めとる。


「喋るのだな……」


 と、大葉介は目を丸くして続けた。


「呪いでも重すぎないか?」


 と、大葉介は闇を見つめながら言う。


「物心から死ぬまで一年程度だしな」


「短い……何ができるんだ?」


「なんでも!」


 と、暗い大葉介とは逆の牛塵介は言った。


「恋をして、戦って、食って寝る。ささやかな『夢』を見ながら晩年も過ごせる」


 と、牛塵介は続けて言う。


「思い悩むのにも人それぞれ、生き死にに関わるというのに、からんとくだらないことかのように命を晒せるものもおれば、それこそが至上と悩み抜き、老いて死ぬまでの問いとなる人もまたおる。大葉介様。お前、何に賭けて生きたいかは見つかっているか?」


「正義!」


 大葉介は言い切った。


 牛塵介は、苦笑した。


「早い。だが本当に? ずっと長く生きられるのだから、正しさを問い、磨き続けることを怠ってはいけない。石のように、削った覚悟で光かたもまた変わるだろう」


「気の『変わりよう』か」


「えぇ。浅はかでも答えは答え。大葉介様はまだ若い。答えをより磨けましょう。見透かされていることが不安というのであれば、何か、己が足りない自覚があり、自信が無いということ。欠けた物が何か、見透かされていると感じる、読まれたら困る相手に晒してしまうのもまた、答えに一を積めるかもしれんな」


「むぅ……」


「どうした」


「牛塵介はよく喋る」


「おしゃべりなのだ。本当はな」


「あまりそうとは感じん。厳つい男だ」


「女性と比べれば縦横が大きいだけだ」


 それに、と、牛塵介は続けたよ


「恐ろしいものであろうと意外と、があろう」


「それで──」


 大葉介の目が夜に輝く。


「──呪われた一族はどうなった?」


 牛塵介は優しく。


「?」


 笑っていた。


「常世には関係のない話だ」


「山姥と関係のある話かと思ったのだがな」


「安心して大丈夫。山姥とは無関係だ」


「なぜ、そう言える?」


「本当に何も知らないのだな」


 ところで、と、牛塵介は訊いた。


「色々聞いたので、牛塵介も訊いても?」


「うむ! なんでも『交換』したいな」


 大葉介は「なんでも訊け!」と胸を叩く。


「美作国の国司を知っているか?」


 と、牛塵介は最後の米粒を食べ言った。

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