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美作鎮守将軍国司-2

 膳には色とりどり豪勢な食事が並ぶ。


「へへへ……人ではないような美しさ」


 国府仕えの女官を牛塵介が見ていた。


 食事の世話と、雑用を任せられる女。


 美しい座り姿の綺麗な髪の女性らだ。


 目の色は瞳を閉じていてわからない。


「なんだ?」


 と、大葉介が牛塵介の視線を追う。


 膳を摺り足で運ぶ女官の着物の尻。


 女官の桃尻が、破れた着物からチラリ。


 大葉介は牛塵介の膝を絞りつねる。


「もし。着物が破れているぞ」


「やだ!?」


 女官は顔を赤くして尻を隠す。


「お見苦しいものを……!」


 と、部屋を出ていった。


 見えていた尻を見せないよう後ろ歩きで、尻を押さえながら、戸が閉められる。


「夜這いに誘おう」


「発情した獣か!」


 と、大葉介は小さく喝した。


 酒、漬物、甘味、白米が並々。


 大葉介は、指し身を箸で掴む。


 煎り酒に身をつけて口へ運ぶ。


「美味いな」


 牛塵介にも膳は用意されている。


 乾物に米と、やはり豪華である。


 麦と白米の混じる粥を食った。


「紅雀と呼ばれる悪党が、山陽道沿いに暴れていると聞いた。目的はこくふ落としだとも。鎮兵らと何度となく刃を交えた、元鎮兵からなる組織だ」


 と、樹介が言った。


 牛塵介が目だけを動かす。


「まだ早計だが、そういう輩も活動していて、全てを合わせて山姥の被害だとされていることもありえるだろう」


「ありえない話ではないな。備州は、三石城を始めとして、あちこちで戦ばかりだ。夜討ち朝駆けにと、罪人や悪党からも兵を募る触れ書きは、何度も読んだ」


 と、樹介は大きく頷いた。


「紅雀を討つのが、山姥退治なのか?」


 と、大葉介が今後にやることを確認する。


「いや………やはり、山姥は実体が無いかも」


「どういう意味だ、樹介」


「山陽道を襲うもの全てに名前を付けたのかもしれないという話だ。山姥という名前をな」


「……山賊の一党はいたな」


 と、大葉介は顰めっ面だ。


「美作の国府や武家連中が戦で動けぬ好機か」


「検非違使の手柄にできる」


 牛塵介は聞きながら、初めて割りこんだ。


「元々、美作国で討伐できるものでもない」


「何故だ。牛塵介」


「山姥は山陽道沿いで被害を出しているが、備前国ではより甚大なものがある。美作国ではなく、備前国の鎮兵が始末するのが、備前の面目を保てるだろう。……阿久良もいるしな……。もっとも、三石城を初めとした攻防は備州のあちこちで繰り返されてはいる。山姥と比べて、果たしてどちらが被害が大きいかはわからん」


 何事も、と、牛塵介は続けた。


「優先順位がある。逆に言えば、『凶賊のように片手間で処理できないのが山姥』だ。美作国の軍団がだ」


 検非違使らは静かだった。


「京から美作国に入ったのであれば」


 はてな、と、牛塵介は目を丸くした。


「山陽道を北上する道、備前国を経由して入っているのだから話は聞いていそうなものではあるが」


 牛塵介は介佑郎と目が合う。


 睨む、怒りをこめた視線だ。


「何を見ている」


 と、介佑郎は言葉を飛ばした。


 牛塵介は麦芽の水飴に棒を突いて舐めた。

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