閑話休題 シチューで食事会2
食前の祈りを捧げ、めいめいにスプーンをもって食事を摂る。
ダーナは上品にサラダから。エルフリートはパンをシチューに浸して――エルフリートは種族的に霊体なので、柔らかいものが好きらしい――そしてクーはというと。
「クー、シチューを食べるたびに泣かないでよ……」
「す、すみません、どうしても嬉しくて……エリーのシチューがおいしくて……」
「もう……」
「うわすごい、私陛下が泣いてるところ初めて見た」
「あなた?」
「ごめんごめんダーナ痛い痛い痛い耳引っ張らないで」
シチューを一口口に運ぶたびに大粒の涙をその美しい緑の目からこぼすクーと、それに大笑いするエルフリート、エルフリートをたしなめるダーナ。
エリナを入れて四人しかいないのに、広すぎるともいえるこの広間が狭く感じられるのは、心を許せるひとばかりの場で、楽しく食事ができているからだろうか。
エリナは、クーが現れてから、クーと出会ってから変わった日常が嫌いではない。
いいや、はじめは、怖かったし、嫌だと思っていた。
けれど、こうやって幸せな毎日を送れるなら、これがいいんじゃないかと思えて来た。
ダーナも、エルフリートも優しいし、クーのことは好きだし。
だから、これがハッピーエンド、だなんて銘打ってもいい気がして。
そう、思って、いる。
――本当に?
ふいに、頭の中で鐘が鳴る。
遠くから響く、幽鬼のような声。幸せを否定するようなその声は、エリナの背筋を震わせた。
少し動きを止めたエリナの背を、クーの手があたたかく、やさしさをもって滑る。
それではっと我に返ったエリナは、心配げにこちらを見るクーに、どうして気付いたのかしら、なんて思いながら、シチューの続きを食べはじめた。
あの声は、何なのだろう。
クーの手によって霧散した不安ごと、エリナは不思議に思ってパンをちぎる。
今日のシチューもとてもおいしくできていた。




