表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
53/65

閑話休題 シチューで食事会2

 食前の祈りを捧げ、めいめいにスプーンをもって食事を摂る。

 ダーナは上品にサラダから。エルフリートはパンをシチューに浸して――エルフリートは種族的に霊体なので、柔らかいものが好きらしい――そしてクーはというと。


「クー、シチューを食べるたびに泣かないでよ……」

「す、すみません、どうしても嬉しくて……エリーのシチューがおいしくて……」

「もう……」

「うわすごい、私陛下が泣いてるところ初めて見た」

「あなた?」

「ごめんごめんダーナ痛い痛い痛い耳引っ張らないで」


 シチューを一口口に運ぶたびに大粒の涙をその美しい緑の目からこぼすクーと、それに大笑いするエルフリート、エルフリートをたしなめるダーナ。


 エリナを入れて四人しかいないのに、広すぎるともいえるこの広間が狭く感じられるのは、心を許せるひとばかりの場で、楽しく食事ができているからだろうか。


 エリナは、クーが現れてから、クーと出会ってから変わった日常が嫌いではない。

 いいや、はじめは、怖かったし、嫌だと思っていた。

 けれど、こうやって幸せな毎日を送れるなら、これがいいんじゃないかと思えて来た。


 ダーナも、エルフリートも優しいし、クーのことは好きだし。

 だから、これがハッピーエンド、だなんて銘打ってもいい気がして。

 そう、思って、いる。


 ――本当に?


 ふいに、頭の中で鐘が鳴る。

 遠くから響く、幽鬼のような声。幸せを否定するようなその声は、エリナの背筋を震わせた。


 少し動きを止めたエリナの背を、クーの手があたたかく、やさしさをもって滑る。

 それではっと我に返ったエリナは、心配げにこちらを見るクーに、どうして気付いたのかしら、なんて思いながら、シチューの続きを食べはじめた。


 あの声は、何なのだろう。

 クーの手によって霧散した不安ごと、エリナは不思議に思ってパンをちぎる。

 今日のシチューもとてもおいしくできていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ