midnight
初めて書いた小説です。頑張って書いたのでどうぞよろしくお願いします。
今から20年程前のことだった。
深夜2時30分、黒い空と黙を切り裂くようにして隕石が降ってきた。
大きさは大体3メートルくらいだろうか。とある山奥に落ちた隕石は、異様な瘴気のようなものを放っていた。
ところが、この隕石のことを知る者は、ほんの一握りしかいなかった。
それ以外の者は、ただいつも通りの、ごくありふれた日々を過ごしていくのだった。
表向きは。
時は現代。
とある警察署の地下室でなにやら会議が行われていた。
「新人諸君、こちらのモニターを見て頂こう。」
頬の髭が目立つ男がそういうと、モニターに二つの簡易的な頭の図が映し出された。
「左が一般的な人間の脳、右がネクストの脳だ。一度この二つを見比べて欲しい。そう、左の脳と比べると、右は眼窩皮質と扁桃体周囲の活動が低下していることがわかる。」
会議室が騒つく。
男は気にせずに続けた。
「これらの活動が低下すると、情動に関する認知の機能に乏しいが、理性的な認知の機能は活発なままである、俗に言う所のサイコパスになる。そしてこちらの映像をご覧頂こう。」
するとモニターが別の映像に切り替わった。液晶には、夜の道路にぽつんと立っている40歳くらいの痩せこけた中年が映し出されている。
中年が目の前にいる女性を睨むと、女性の体が真っ二つに割れた。中年は女性だったものに駆け寄ると、女性の腋を犬のように舐め出した。
中年は笑みを浮かべながら無心で腋を舐めている。
一通り舐め終わると、右腕を腋ごともぎ取って去っていった。
男は語る。
「このようにネクストは、超常的な能力に加え、人を人と思わないような異常な思考を持ち合わせており、その結果、このような行動を起こす。」
画面が再び切り替わり、今度は田んぼに生足が大量に埋められた画像が映し出された。
部屋の中が静まり返り、何人かは顔色を悪くした。それこそ映像の女性のように、死んだような顔になっている者もいた。
男は構わず続ける。
「これが我々特殊人類課の戦う相手だ。いいか、奴らは人の姿をしているが、中身は化け物同然だ。情は捨てろ。警察として人々を守りたかったら奴らは切り捨てろ。これで話は終わりだ。」
そういうと男は部屋を出た。
途端に静まり返った部屋はにぎやかさを取り戻した。
「てか、ネクストってやっぱヤッベーな、なあ清水?俺田んぼらへんで気持ち悪くなっちまったよ」
大柄な青年が、横にいる生真面目そうな青年に話しかけた。
「そうだな田代、こいつらを倒さないといけないんだな、俺たちの手で......」
苦い表情で返す清水に、田代は笑いながら言った。
「なんだよそのくっせえ台詞はよ?今時ヒーローものでももっとマシな事言うぜ?ってかそんな事言うけどお前怖くないのかよ?あんなの見てもよ?」
「そら怖いさ。でも市民の為に......でも......」
清水は言葉に詰まった。田代はそんな彼の肩をポンと叩き、また笑ってみせた。
「まあまあ肩の力抜けって。とにかく一緒に頑張ろうや?」
清水は黙っていたが、少し空いて口角を上げて答えた。
「......ああ、そうだな。」
「そうだな......ここの答えをじゃあ佐伯!」
背広をきっちり着た中年の声が教室に響いた。
中年の視線が一人の気怠けな少年の方へ向く。
髪は碌に手入れしていないのかボサボサで、体格は同じ歳の男子と比べて小さく、そして細かった。
「サンバルテルミの虐殺......」
少年は容易く掻き消されそうなか細い声で答えた。が、案の定その声が中年に届くことはなかった。
「ちょっとわからなかったかー、じゃあ吉田!」
聞き取ることを放棄した教師は、手前に座っている眼鏡をかけた少年を当てることにした。すると当てられるとは思っていなかったのか、眼鏡の少年は軽く取り乱す。
「ひえっ、あ、いや、わかりません......」
先生はやれやれと言った表情を浮かべた。
「どうも難しかったみたいだなー、えー答えは『サンバルテルミの虐殺』だ。覚えづらかったらサンバル照美って芸人が暴れてる所でも想像するといいだろう、次に_____」
眼鏡は一安心と言った様子で溜息を吐き、気怠けな少年は何事もなかったかのように気怠けに前を向いていた。
大抵のクラスメイトは特に気にしていなかったが、ただ一人、胡桃色のボブヘアが印象的な少女がその様子をじっと見ていた。
授業の終わり、気怠けな少年、佐伯が机に突っ伏して寝ていた。
するとさっきの少女がかけ寄り、朗らかな笑顔を佐伯に近づける。
「さーえーきっ!また寝たフリ?」
「皆実さん......今度は何のよう?」
佐伯が徐に顔を上げると、皆実は顔を膨らませて言った。
「さっきの授業、あのーサンバルなんたらって奴佐伯答えてたよねー?なんでもっとハッキリ言わないの?」
少年は少しだるそうな表情で返す。
「ええ......めんどくさいし......」
「めんどくさいー!?あのねえ、そんな事ばっかり言ってるといつか取り返しのつかない事になるよ!ちゃんとものごとをハッキリと言いなさいよ!」
皆実はそう言って顔を更に近づけた。
「あうぅ......わかったよ......」
佐伯は少し面食らった様子で返した。
「ほんとにもー!でさあっ」
彼女が何か言いかけたその時だった。
「結衣ー!」
「あっ、ゴメン!ちょっと呼ばれちゃったから......じゃねっ!」
皆実は少し申し訳なさそうにして彼の元を去った。彼女が去るのを確認すると、少年は再び狸寝入りを続行するのであった。
夜の道路、小綺麗な格好をした若い女性が一人歩いていた。
家へ向かって歩いていると、何処からか奇妙な声が聞こえてくる。
「年齢は27歳、誕生日は1995年6月23日......」
女性は怯えた様子で辺りを見回す。
声は続く。
「ヒップサイズ83.7cm、身長155cm、アンダーバスト70、トップバスト85、これは俗に言うCカップ!」
女性は泣きそうになりながら必死で首を動かす。
彼女が下を向いたその時だった。
「キャアアアアアアアア!!!!!!!」
女性は耳が潰れそうな程甲高い悲鳴をあげた。そう、声の主はなんと足元にいたのだ。
「おめでとう、アナタの躰は実に芸術的だ。ご褒美に僕のアートになってもらおう!」
センター分けに眼鏡を掛けた青年が、嬉しそうに言った。
女性は一目散に逃げ出そうとした、が、そう思った時にはもう遅く、気がついたら彼女は青年にバックハグされていた。
その頃、警察署の地下室に一本の知らせが入った。
「都或川沿いの土手にネクストらしき人物がいたとの連絡が入った。清水、田代、池田、現場へ向かえ。」
顎髭の男が、厳格な表情で指示をした。
三人は真剣な眼差しで返事をした後、現場へ向かった。
三人が土手に着くと、そこにはあの青年がいた。
土手にたどり着いた青年は、四肢と顔を切り取った女性の躰を地面に置いた。
そこには同じようにされた躰が大量に積んであった。
「これだけ有ればいいかな?」
青年はそう言うとだるまみたいになった躰を並べていった。
池田は息を殺し、銃を構えた。
「A、B、C、C、Cカップ〜、カタチが至高、Cカップ〜♪」
青年は奇妙な歌を歌いながら躰を円状に並べていた。
池田が引き金を引こうとしたその時だった。
「よくないなあ、背後から打つなんて」
青年は立ち上がり、常人の倍の速さで三人に近寄った。
「僕の得意分野は解析さ、頭の中を覗いていろんなデータやこの先の行動を見るのさ。君たちの動きを読むなんて朝飯前なんだ」
池田は震えながらも引き金を引こうとした。ところが池田は驚いた。
ないのだ。拳銃が。
池田が硬直していると、気が付いたら心臓を撃ち抜かれていた。
「ほーらね?言ったでしょう?」
青年は拳銃をクルクル回しながら笑っていた。
清水は池田の身体を必死に揺さぶり、田代はただ震えて立っていた。すると青年は再び引き金を引いた。
弾は田代の太い脚に直撃した。
田代はその場にうずくまってしまった。
「やっぱり、警察なんかただ殺してもつまんないもんな。僕さあ、昔よくアリの脚一本一本引っこ抜いて遊んでたんだよねぇ」
清水は顔を白くして立ち上がった。
そして警棒を構えて青年を睨んだ。
「どうした?そんなモン使おうとしても無駄さ。ぜーんぶ予測しちゃうからね」
青年がヘラヘラ笑っていたその時だった。
「後ろから......誰か来る、ね」
二人が振り向くと、佐伯が両目を光らせてゆっくり近づいて来る。しかし昼間の気怠けな様子とは異なり、真剣な表情をしている。そしてその肌はまるで鋼のようになっていた。
「どうやら君もネクストのようだね、ネクストだろうと僕のアートを邪魔するならゆるさ___」
そう言いかけたその時、彼の自信満々な顔は宙に浮かんでいた。
(あ゛っっっっ!コイツっっっっ!)
佐伯は彼と背中合わせに立っており、刃物のようになった右腕は血に濡れていた。
(コイツの思考はっっっっ!読めないっっっっ!!)
佐伯は首から上のない青年を担ぎ、そのまま去ろうとした。
清水はその様子をただ茫然として見ていた。
その時だった。
突然、佐伯は振り返り、殺意に満ちた眼差しで清水を睨んだ。
清水は警棒を強く握り、佐伯を睨み返した。
to be continued......
最後まで読んでいただき本当にありがとうございました。さまざまな試練の前に悩み苦しむ佐伯や、ネクストと戦う清水、そして皆実さんの今後にご期待ください。