ノーチート ~女神との勝負に負けた俺~ (短編)
本来ならば、異世界言語、鑑定、アイテムボックスの三種の神器が貰える筈だった、だが俺はそれを蹴った、更なる上を目指して…
この三つを賭け金とする事で二倍のチートを得ようとしたのだ、物語だったら当然勝つ流れだ、自信もあった、しかし……
「「あいこでしょ」」
じゃんけん、かつこれが3戦目の最後、両者共に白熱したあいこの応酬を繰り広げている…
方やサボりたいが故に、方や異世界での楽を求めて、真剣に勝負をしているのである。
「…ぽん、やりぃ、勝ちましたわ♪ これで三戦三勝、ほんとにありがとう、とっても楽ができますわ、ノーチート行ってらっしゃいませ」
「ぐぬぬぬ、女神め…」
「何ですか、負け犬、見苦しいですわよ、あと様をつけなさいな、勝てると思い上がりましたか? わざとあいこの演出をしているこっちの身にもなってください」
「なっ!?」
「この女神様、挑まれた勝負からは逃げません。後で大神からお叱りを受けるかも知れませんが、それはそれ、面白い遊戯でしたよ」
「はぁーー、人生はそう甘くはないか…」
「言葉も分からないあなたに朗報です、今ならランダム種族が選べます、選びなさい!、私が楽できるから…」
「強制かよ!? わぁ~た、選ぶよ、確かに赤ん坊からやり直せれば、学ぶ機会もあるかも知れねぇしな…」
「では、良き次の人生を…」
青い水の中で俺が揺れている…、そうかこれが母なる海ってやつだな、もう少しで俺も…
ちゃぷちゃぷ
「***…(はぁー、外れ商品ね、なにが意思のあるハイなポーションよ、とんだガラクタじゃない、なんか喋ってみせろつーの)」
それは只の透き通った青い水だった…
「はぇぇえええー、ポーション、俺ポーションなの!? 一回使い切り? 嘘でしょ!? 止めて、使わないで、お願いしますぅー、種族ガチャ壊れてりゅーー」
こうして彼はその店でハイポーションとして売られることとなった。彼の命の値段、金貨2枚(2万円)也。
「***…(ありがとー、またきてねー)」
時がきて、それは売れた。もうよく分からない言語を聞きながら、人や店を観察する事もない、そしてそれは必然彼の命の刻限が迫っていることも意味していた。
買っていったのはC級パーティー、彼らが怪我をした時それは使われるのだろう…
彼らが受けた依頼はゴブリンの巣の掃討、ばったばったとそれらをなぎ倒し、ある一人の少女を救出した。
使われるハイなポーションー嗚呼、俺という存在が消えてゆく、最後に人の為になれたのなら、良い人生だったかな…
こうして彼の入っていたポーションは無くなった。
彼の命の刻限:残り30日。これは彼が本当に消え失せるまで生き足掻く激動の物語。
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