あんたの因縁のせいで事故に遭ったんや! と言われた時の話
またしてもサブタイトルからして強烈な感じになっちゃってるんですが、仕方が無いのです。これが私の芸風なのですから。林家ぺー&パー子がいついかなる場においてもピンクの衣装を着ている事と、同じ理由なのです。(そこまで大げさなことではない)
さて、私の生い立ちといいますか、そういうものを説明し始めるととても長くなるといいますか、たぶんメンドクサイ小説になっちゃうので、変わったエピソードだけ拾ってみようかと思うのですよ。
それで今日は「あんたのせいで事故に遭った!」と言われた話をしようかと思うのです。
まず初めに言っておくと、私は他人の車にいたずらをした事も、誰かを殺害しようという計画を実行した事もありません。子供のころに一度だけ、私を四人くらいでリンチしたやつらのボスの、チャリのブレーキをペンチで切ったことはありますが。それ以外では、本気の殺意というのを抱いて行動を起こしたことはありません。
いや、嘘でした。借金だらけの時に「五万円貸して」と知り合いに言われ、殺意を抱いた事はありました。二回くらい。あー、あとはストーカーになった友達が、妹の職場に押し掛けた時も、少し殺意を抱きましたね。殺意は、抱く事はけっこうありましたね。
というわけで、前振りはこの辺にして。
とにかくですね、私の周囲といいますか母親の友人といいますか、その人たちが、ある、日蓮宗の宗教団体に所属していてですね。母も含め彼女らは、異様に迷信深い人たちの集まりでして。なにかあるとすぐに「因縁」という言葉を持ち出し、悪いことをしないよう私などに諭していたのです。
「因縁」という言葉をご存じない方に、その概念を説明するに……「原因があって、結果がある」という考えがあるのですよ。そしてそれ自体はさほど、変わった考えでは無いと言えるのではないかと思うんですが……なぜって、悪いことをしたら罰が当たるよ、ということなのですから。
しかしながら、迷信深い人たちというのは、通常では思いもしないような範囲にまで話を広げるものでありまして。そこいら辺が、迷信の怖さといいますか、滑稽さといいますか。
迷信を馬鹿にするわけではないのですよ……かつては自分も「こんなに不幸なことが起こるのは、先祖に盗賊がいた因縁によるものだ」とか、頭弱いことを言ってた人間なので。しかし、頭の弱さというのはつまり、無知(無智)である事なのだし、無知とはすなわち暗愚でありますから、あんまり良くはないといえるのではないでしょうか。(ちなみに、暗愚の対義語は「英明・聡明・賢明」)
というわけで、そんな迷信深い女性の一人「山田さん(仮名・55歳)」がある日、自動車事故を起こした日の事をお話したいと思うのですよ。
山田さんはその日の20時頃、国道にて軽自動車を運転していたのです。軽自動車には、助手席に一名、後部座席に一名、運転手の山田さんを合わせて計三名の熟年女性が乗っていたのです。そして、運転中の山田さんの携帯電話が鳴ったのですが、よせばいいものを、山田さんは携帯に出たのです。
「もしもし、今運転中だから、あとでね」
山田さんはそう言うと、電話を切ったのです。そして、その直後ハンドルを持つ手が滑り、事故を起こしました。幸いなことに、対人事故ではなかったのですが、山田さんの車のバンパーやボンネット部分は大破し、乗っていた人たちのうち山田さんと田中さん(仮名・65)はむち打ち、吉田さん(仮名・53)は打撲をするなどのケガをしました。誰も死ななかったのは不幸中の幸いとも言える、事故だったのです。
問題なのは、その時山田さんが出た電話は、誰からのものだったのか、という事でした。そう。お察しのとおりなのであります。それは、私がかけた電話だったのです。
事故の後、ケガをしたおばさんたちが集まって、何かを話しているのを聞いたのです。それで、私はその場にいて、話を聞いていたのです。すると、むち打ちになった田中さん(最年長)が、こんな事を言い始めたのです。
「○○ちゃん(私)とこの重たい因縁を受けて、私たちはこうなったんじゃないか」と。
すると、それを聞いていた他の迷信深いおばさん達も、その意見に同意し始めたのでした。私はそれを聞きながら、いつもの事だと思って耐えていたのでありました。今だったらこう言うんですがね。「運転中に電話に出るな」って。
ちなみに、どーして私は迷信深い人々……同じ信仰の仲間……から、中世暗黒時代の魔女のような扱いを受けていたのかというと、それにはまた、話せば長くなる、ある理由があったからなのでした。
という事で、今日はもう足がむくんで痛いので、今から温泉に行きますから、お話はまた今度なのですよ。