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可愛いだけの死神ちゃん  作者: カラスヤマ
42/52

43話 怒り

異変に気づいた死神と悪魔は、慌てる様子もなく、誰もいない、ベッドごと消えた無人の部屋をしばらく無言で見つめていた。


「……………」


「…………………」


最愛の彼の匂いと、彼を消した女の残り香。血と彼が焼けた臭い………。


先に動いたのは、悪魔の方だった。ウサギがプリントされた可愛いエプロンを脱ぎ捨て、部屋を出ようとする。その後ろ姿に声をかける死神。


「どこに行くの?」


「決まってるだろ! あの糞女をぶち殺して、アイツを取り戻す」


「無理だよ。お姉ちゃんは、今のメリーザより強い」


悪魔の細い右腕を掴んだ。


「離せよ。その腕、引き千切るぞ」


「離さない……。絶対に。メリーザだけ行かせない。それに、今の怒りに任せた行動は、お姉ちゃんの思うツボ。あまりにも無謀すぎる」


「そんなの知るかっ!! お前だって、知ってるだろ。地獄に堕ちたアイツが今、どれだけ苦しんでるか。一秒でも早く行って、助けない…と……アイツ………アイツ…は」


悪魔は、道で転んだ幼子のように大声で泣き叫びながら、死神に抱きついた。


「私だって、今すぐ彼を助けたい。私達から彼を奪ったお姉ちゃんをめちゃくちゃに殺してやりたい。でも……分かっ……て。少しだけ、私に時間をちょうだい。お願いだから」


…………………………。

…………………。

…………。


しばらく戻れないであろう愛の巣を離れ、死神と悪魔は町を離れた。


彼女達の前に白いローブを纏った巨大な神の使者が立ち塞がる。前に死神が殺した奴等とは、威圧感が全然違っていた。


「神の命により、お前達を」


言い終わるより早く、使者の舌を引き抜く悪魔。その使者の顔をデコピンで吹き飛ばす死神。


「「邪魔すんな」」


声を合わせた両者は、憎らしげに使者の亡骸に唾を吐いた。



◆◆◆◆◆◆【怒り】◆◆◆◆◆



雲間から見える大きな顔。

顔と言っても、あるのは目と口だけ。

だから男なのか、女なのか分からない。


あれは、いったい何なのか?


誰に聞いても分からない。


…………分かるはずない。


アレは、僕にしか見えないんだから。



いつもは、無表情。ただ、この表情が変わる時があって。


例えば、笑顔ーーー。


笑顔の時は、次の日必ず晴れた。

だから、遠足の日とか家族で出かける時は、前の日に必ず空を見る癖がついた。


泣いている時。泣き顔の次の日は、雨になる。



テレビの天気予報なんかより、この顔の表情の方がよっぽど信用出来た。



笑った顔。


泣いた顔。



だけど、なぜか怒った顔は見たことがなくて……。見てみたいと言う欲求が、日に日に強くなっていった。なんで、こんな話をしたかって言うと。昨日、初めて怒った顔を見たんだ。



今。


僕は外に出て空を見上げている。

僕だけじゃない。近所の人も。もしかしたら、世界中の人が空を見上げているかもしれない。


絵の具で描いたような真っ赤な空だった。ぼとぼと、空から鳥が落ちてくる。

目の前に落ちたカラス達は苦しそうに喘ぎ、赤い泡を口から漏らし、震えながら死んだ。



きっと明日は、もっともっと狂った天気になる。人類最期の日になるかもしれない。



だってさ。


怒った顔が今は八つも見えているんだからーーーー。


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