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可愛いだけの死神ちゃん  作者: カラスヤマ
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35話 特別な関係

【 死神ナタリと魔王の娘メリーザの仲良し日記~ 】


「やっと……お姉ちゃんから解放された。もう手が、ぷるぷるの真っ赤。うぅ~、痛ぃ……」


でも明日からは、バカな悪魔を討伐する為、しばらくお姉ちゃんと離れ離れ。嬉しいような、寂しいような。複雑な気分。


先週、悪魔が私達の国に無断で侵入したらしい。ここ百年は、悪魔も静かにしてたのに……。最近、魔王の娘が父親に代わり、軍隊を指揮するようになった。もう、やりたい放題。早く侵攻を止めないと、過去のような全面戦争に発展する恐れがある。




私は自分の兵隊、約一万の天使を引き連れ、天の国の端に向かった。国境近くまで行くと、ねっ……とりと体にまとわりつくような不快な闇が、辺りに漂い始めた。


闇の中で私達を待ち伏せしているんだろう。


「昼夜問わずの移動で、疲れたでしょ? あなた達は周囲の警備を固め、少し休んでいなさい」


「はい。畏まりました」


大天使達は、頭を下げると周囲に散らばる。私は、霊獣グリフォンにまたがると、風のように闇の中を突き進んだ。



急に闇が晴れると目の前にロリータドレスを着た少女が現れた。


「なんだ? お前」


「ここは、天の国です。早く去りなさい。さもないとあなたを消さないといけない」


「やってみろよ、糞が」


これが、私とメリーザの感動的な出会い。


…………………………。

…………………。

…………。


私は、左右の手に双剣を持ち、目の前の悪魔に狙いを定める。


悪魔は、座っていた巨石から音もなく降り、小さく闇の詞を口にした。


モリモリモリ………。


赤土が盛り上がり、地面の割れ目から見たことのない黒刀が姿を現した。

その割れ目からは、今も地獄の黒炎がチラチラ見えている。その刀身を愛おしそうに指先で撫でている。


「どうして、こっち側に来たんですか?」


「お前には、関係ない。さっさと、死ね」


「そうですか……」


私は、神速で悪魔との距離をつめると刃を振るう。この悪魔は、無音で私の攻撃をかわし、私の背後に回ると頭上から黒刀を振り下ろした。


地面が遥か先まで裂けた。凄い攻撃力。


私が、ギリギリで攻撃を回避した先に、ケラケラ笑う足の生えた、すっごく気持ち悪い木箱が数個設置されていた。


この悪魔。私の動きを先読みしてる……。



「ババーーーーん!!」


笑う箱の口が開くと、周囲を吹き飛ばす大爆発が起きた。


私は、隠していた六枚の羽根を全開し、爆風よりも速く、空に逃げた。


その空には、鎧を着た黒龍が待ち伏せしていて、私に真っ赤な炎を浴びせた。

持っていた双剣がどろどろに溶ける。炎の勢いが凄まじく、両手を前に出し、造り出した神の防御壁も簡単に炎に押された。容赦なく、地面に叩きつけられた。


「っ……」


受け身が不十分で、中の臓器を少し損傷したみたい。左手もヤケドを負い、しばらく回復に時間がかかりそう。


幼い、私と同じくらいの悪魔は無言で倒れている私を見ていた。黒刀をだらんと下げ、攻撃する意思を感じなかった。


「もしかして、この程度で勝ったつもり? 笑わせないで。私は、これでも神(見習い)なんだから」


私は再び、天から神器を呼び出した。神々しく光を放つ、長い銃を手にする。


「勝ってない。お前は、ぜんぜん本気じゃないから…………。それより、さっき攻撃した時さぁ、一瞬躊躇して剣の向きを変えたよな? なぜ、あんなことした? あれがなければ、結構なチャンスだったのに」


「あなたが、その服の中に何か……隠してた。何かは分からなかったけど、大事にしてたみたいだったから」


悪魔は上着の中に手を入れる。取り出したソレを優しく握っていた。


今も小さくチィーー、チィーーーと鳴いている。どうやら、ドラゴンの赤ちゃんみたい。


「コイツが、母親から離れていなくなったから探してた。可愛いだろ? 上空を旋回してるあの漆黒のドラゴンがママなんだ。大きくなると可愛さゼロだけどな」


私に近付くこの悪魔は、慈愛に満ちている。私は、悪魔がこんな優しい顔をすることに驚き、動揺した。攻撃を仕掛けるタイミングを完全に逃した。


「この子を助ける為に危険を冒してまで、こっち側に来たの? あなた以外に他の悪魔はいないみたいだけど……。一人で来たの?」


「まぁ…………うん。そんな感じかなぁ。私に仲間なんかいない。必要ないし」


寂しそうに笑う幼い悪魔。嘘を言っていないことは、その表情からすぐに分かった。



仲間がいない?


じゃあ、軍隊を指揮して最近暴れているっていう情報は嘘なの?


誰が………。


そんなデタラメな嘘を?



その時、私達の前に双子の大天使アギスとアザマが現れた。


「どうされました? ナタリ様。さっさとその悪魔を殺して下さい」


「そうですよ~。早くソイツの腐った臭~い首を持って帰りましょうよ~」


両者のその顔は、隣にいる悪魔とは比較にならないくらい、何倍も胸くそ悪い笑顔をしていた。



◆◆◆◆◆【特別な関係】◆◆◆◆◆



「よぅ! 久しぶりじゃん。また帰ってきたの?」


地元の長野に帰省した時、偶然立ち寄ったコンビニで高校時代の女友達に会った。


「また……ってなんだよ。今は、夏休みだからさ」


「ふ~ん。大学生は、お気楽だ」


「そうでもない。今は、卒論で忙しいし。明後日には、また帰る」


「明後日? もっとゆっくりしていけばいいのに」


酒とツマミだけ買って、店を出ようとすると


「あっ! 待って。これ、持っていきな」


赤い傘を渡された。


「……いや、雨なんか降らないでしょ」


苦笑いしながら店を後にした。




「あっ」


店を出て、すぐに雲行きが怪しくなり土砂降りになった。そういえば、アイツには昔から特別な力があった。人間を越えた力。


どっちが、お気楽だよ。


「お前が死んで、もう三年……。似た者同士だよなぁ。また懲りもせず、お互い会いに来てさ」



赤い傘の中、アイツの優しい匂いがした。苦笑いと落ちる涙は、毎度のことだ。


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