表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
可愛いだけの死神ちゃん  作者: カラスヤマ
27/52

28話 無題

喫茶店に彼女の姿がなかった。

若い男性店員に彼女のことを聞いてみた。


「えっ、この店のアルバイトにそんな子いたかなぁ」


「………ごめん。勘違いだったよ」


夢の中で何度か見る可愛い女の子。確か、この喫茶店で働いていた………はず。


夢と現実が曖昧で、自分でも異常なことを言ってるのは分かってる。この店員に頭のおかしい奴だと思われているに違いない。それでも何故か、無性に夢に出てくるあの女が気になり、頭から離れない。


僕は、また小説を書き始めた。でも彼女のことが気になって仕方なかった。集中出来ない。声だけでもいい。彼女の笑い声を聞きたかった。


パチッ!


急に照明が消え、店内が暗くなった。空気が重く、息苦しい。


なんだ? これ……。


先ほどの店員の姿も見えない。客は、僕一人だけ。薄明かりの中、モヤモヤした黒いものが見えた。本棚から這い出ると、その得たいの知れない異形のモノはじぃぃ……と僕を見つめていた。

恐さよりも興味の方が若干勝り、その姿、特徴を急いでノートに描き写した。


目の前に来たモヤモヤは、僕にだけ聞こえる声量で。



『ホントウ…の……オマエ…ミセロ』


そう、耳元で囁いた。


◆◆◆◆◆◆◆【無題】◆◆◆◆◆◆◆◆


彼は、普通の男だった。学校の成績も真ん中くらい。これと言った才能や特技も無い。良くも悪くも普通の人生を歩んできた彼には、誰にも言えない秘密があった。


初めて彼が、『アレ』を見たのは、三歳の時。その時からずっと彼は、『アレ』を見続け、いつしか彼の分身のようになっていた。


平凡だが、幸せな生活。しかし、そう長くは続かなかった。ある日、彼が帰宅すると強盗に家族全員が惨殺されていた。


壊された家族を見ても、なぜか涙は一滴も出なかったと言う。ただ、彼は血に濡れた両手を見つめ、初めて『アレ』に助けを求めた。


目の前にいる『アレ』

名前は、分からない。小さい頃から見えているアレに初めて声をかける。




「僕の家族を殺したヤツを自分の手で殺りたい。力を貸してくれ」



「……………」




黒い霧のような人間の形をした何か、その顔の部分だけが伸び、僕の前に来た。

ニタニタと笑っているように見える。


「オマエガ…ノゾムモノ………アタエ…ヨウ……ダカラ……ホントウノ…オマエヲ…ミセロ」



どういう意味だ?



「いや、意味が………」


アレが、指差す先。白壁に家族写真が飾られていた。幸せを切り取った家族の写真。



妻と一人息子。それと………………………………。


うん?


あれは、誰だ?


妻子と手を繋いで、楽しそうに笑っている男。知らない男だ。


あれ?


意味が、わからない。




「ホントウの……オマエ…ミセロ」



「本当の………」



「ミセロ、ミセロ、ミセロ、ミセロ、ミセロ、ミセロ、ミセロ、ミセロ、ミセロ、ミセロ、ミセロ、ミセロ、ミセロ、ミセロ、ミセロ、ミセロ、ミセロ」




もう一度写真を見た。そして、床に倒れている女と子供を見る。




あれ?




「……ってか」


コイツら、誰だ?




「ミセロ、ミセロ、ミセロ、ミセロ、ミセロ、ミセロ、ミセロ、ミセロ、ミセロ、ミセロ、ミセロ、ミセロ、ミセロ、ミセロ、ミセロ」




あ~そっか。思い出した。




僕が、殺したんだ!!




ガチャッ……。


背後でドアが開いた。


「っ、誰だ!! お前」


震えながら、僕を見ている男。写真の中にいた男だ。コイツが、本当の夫……か。




グサッ、グサッ、グサッ。




泣いているこの男に、さっき落としたナイフで背中を何度も何度も刺された。




「俺の…大事な…家族………よくも」



力をかしてよ。




『イイヨー』




黒い人間の形をした何かが近づき………僕とゆっくり重なった。




一時間後ーーーーー。




僕は、三人の死体の前でお笑い番組を見ながら、肉じゃがとご飯を食べた。熱めの風呂に入り、寝る前に甘いチューハイを飲んだ。そして、朝まで柔らかい布団でぐっすり眠った。


目覚めは、今までの人生で一番。最高の気分だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ