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可愛いだけの死神ちゃん  作者: カラスヤマ
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21話 砂漠の海

立ち入り禁止になっている学校の屋上。普段は不良達のたまり場になっているが、今の季節は寒くて誰も来ない。


フェンスに寄りかかり、灰色の世界をぼんやりと見ていた。


「黄昏過ぎじゃない?」


「ここから見る景色が好きなんだ」


「私も好き。はぁ~~。今日は、バイト休みだから自由だぁあーーー。シャーーーー!!」


背伸びして、拳を天高く突き上げる少女。足が、プルプル震えていた。


「………いやいや、バイト中も好き勝手やってるじゃん。ところで……あ、あのさぁ。えっ……と、ん~~んん~~。そろそろ一緒に住まないか? ナタリもアパートの家賃払うの大変だろ。僕、一人だからさ………。空いた部屋使えばいいし」


「…………エッチなことしない?」


「それは、約束出来ない。ごめん。ただ、今よりももっとナタリと一緒にいたい。それだけなんだ。いつも………僕のそばにいてほしい」


「うん……分かった。あっ! 頭にゴミがついてるよ。今、取ってあげるね」


ゴミを取ったついでに、神様は母親のような優しさで、僕の頭を撫でてくれた。誰にも見られたくない姿。


「今だけは私のこと、ママって呼んでもいいよ? 帰ったら、いっぱいいっぱい膝枕して甘えさせてあげるね」


「やめ…ろ、それ……」


「ハクシは、こういうの好きだと思ったんだけどなぁ?」


意地悪く笑う。


「…………」


カリっ!


「そんっ、なとこ……噛んじゃ…ダ…メ」


甘噛し、照れ隠し。こういう行動が、いかにもガキっぽい。

夕陽よりも頬を染め。新たな癖が発動しそうな自分を必死に抑え込んでいた。


◆◆◆◆◆◆◆【奇妙な話:砂漠の海】◆◆◆◆◆◆


あの日ーーー。


世界が、壊れてしまった日。


僕たちは、確かに学校の屋上にいた。


そして、今もこうして屋上にいる。僕たちは、この場所から出ることが出来ない。



出れないのは………きっと。


ここで死んでしまったからだろう。肉体は滅びても、僕たちの魂だけが、この場所に囚われている。


「大丈夫?」


「うん。平気」



僕たちの前には、果てのない砂漠が広がっていた。終わりがきた世界は、恐ろしいほど静か。人間も動物も。一匹の蟻ですら、この世界にはもういない。


「恐い?」


「………恐くない」


「嘘だ。震えてるよ」


小さな体が、さらに小さくなり、今も何かに怯えていた。


「私たち、死んだの?」


「うん。……たぶん」


「…………そう…だね」


「ごめんね。僕が、屋上に呼び出したから」


「ううん、いいの。気にしないで。ここに来たのは、私の意思だし。きっと、どこにいても生き残れなかったよ」



卒業する前に、どうしても君に伝えたかったこと。


言うタイミングは、きっと今じゃない。


だけどーーー。



「好きなんだ。こんな状況なのに告白してごめん。でもさ、でも……」


「うん」



容赦のない朝日が、砂漠の海を黄金に染めていく。目を開けていられないほど眩しかった。



数秒後、再び目を開けると。



彼女の姿が消えていた。どこを探しても見当たらない。僕は、本当に一人になってしまった。この誰もいない壊れた世界に一人。言葉に出来ない孤独感。唯一の救いだった君は、もうこの世界にはいない。



僕に残されたのは、最後に見た彼女の笑顔だけ。

僕は、彼女との思い出にすがって今も屋上に立っている。


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