地球防えい隊 源吉じいちゃん
ぼくたちは、ママとじいちゃんと弟の4人家族だ。
じいちゃんは、あまりしゃべらないし、
いつもむつかしい顔で新聞を読んでいた。
ある日、じいちゃんが消えた。
ぼくの名前は、星越文明 。
星を越える 文明と書いて、ホシゴエ フミアキと読む。
大黒柱のママは、仕事のしめ切りにおわれるSF作家として、がんばっている。
一日中テレビつけて、新聞をよんでいる源吉じいちゃんと なんでもこわす弟のタツヤ。パパは死んだんだ。
ぼくは、夏休みの工作で空飛ぶ円盤を どうやって浮かそうかとなやんでいた。
そのとき ママがいった
「あれ、じいちゃんは?」
「え? 今までいたのに・・・」
丸一日たって源吉じいちゃんが、見つかった。
10キロはなれた海 それも ステテコ姿で・・・。
それからというもの じいちゃんが変だった。
新聞をさかさまに読んでいたり
ごはんのおかわり9杯もするし
それに風呂あがりに
ママのピンクのネグリジェを着て、すましている。
じいちゃんが大切にしていた、 マツの盆さい、自分で切っちゃっているし、ぜったい変!
「ママ、じいちゃんこのごろおかしくなったよ」
「そう? その話は、お仕事終わったらね」
ママは仕事で 忙しい。
家族はだれも、気がつかない。
ピンポ~ン
ある日の晩、玄関のチャイムがなった。
「ハイハイハ~イ」
じいちゃんが、出た。
「フミアキ お友だちが、来ているぞ。」
でも、見たことない男の子なんだ。
「やあ」
といったきり
トコトコ、歩いていく
「ああ、待って」
外は まっ暗 赤い月
光るハシゴが見えた。
まぶしくって 目をつぶったら
ふわっ~と体が軽くなって・・・。
目をあけると まるい大きな部屋の中にいた。
さっきの男の子が、ゆびさした。
「ほらこれ、ひん死の地球」
それは、中から照らすランプみたいな 大きな地球だった。
じっと 見つめれば
地上のようすが わかるんだ。
あちこちで、戦争をやっているし
山火事や 大洪水が見えるんだ。
かわききった大地には
ジョロで水をかけたくなっちゃた。
「地球の技術者たちが集まってね、いろんなしかけをしているんだ」
ふりむいて見ると、大勢の人が集まっていた。
「君もなにか、いいこと考えてみてよ」
その男の子にいわれた。
ぼくは 砂ばく地帯のところどころに
深~く穴をあけた。
すると中からマグマがふき出してくる。
つまり、火山の溶岩で高~い高~い山を
あちこちに作ろうと思ったんだ。
高い山は雲をいだき、雨をよぶと思うんだ」
ある人は、炭の繊維を
汚れた海にいっぱいまいている。
ある人は大国の食糧庫の中身を
まずしい地域にごっそりしゅんかん移動させた。
山火事のところに雨雲を
吹き付けた人もいる。
一日中やって、クタクタだったけど
みんなニコニコしていた。
「じゃあ、もとの時間軸にもどすね。」
その子がいった。
「準備完りょう!」
「作戦かいし!」
戦争やテロの国は
ある時をさかいに、
バクダンではなく
きれいな打ち上げ花火にかわった。
兵士は目をぱちくり
民しゅうは、家の中から出てきて
夜空を見上げて、ほほえんだ。
その朝は、空いっぱいにUFOが音もなく飛んでいた。
朝になると、地雷のかわりに
食料品、勉強道具、いりょうひん、おしゃれな服のはいった
たくさんのプレゼントがしきつめられていた。
「あっ、源吉じいちゃん。」
ぼくは、かけよった。
じいちゃんは、ハッピを着ていた。
昔は、有名な花火師のリーダーだったと聞いたことがある。
「おじいちゃんのしわざ?」
「ああ、昔の仲間を集めてなぁ」
こんな元気なおじいちゃんは、はじめて見た。
やっぱり、家にいるおじいちゃんは
ニセ者だったんだ。
それと向こうには、となりの家の
引きこもりのお兄さんが
ひっしで、なにかのボタンをおしていた。
画面を見ると戦場にいた兵士たちは、
大じしんがおきたところへ、
しゅん時に、いどうした。
たちまち兵士は、人助けをはじめて
隊長はじんとう指揮をとった。
火山はねばり気のある溶岩をだして
山は上へ上へと 伸びた。
高い山は万年雪をいだき、谷川が流れ
あれ地は、しだいに緑におおわれた。
パチパチパチパチ
はく手されて、ぼくはうれしくなった。
「任務完りょう!」
「解散~!」
源吉じいちゃんが高らかに宣言した。
源吉じいちゃんは、地球防えい隊の全権大使だったのだ。
気がついたら家で・・・。
じいちゃんとふたりで敬礼していた。
そこへ、やっと仕事を終えた ヨレヨレのママが
部屋から出てきた。
「なに、遊んでいるの? ふたりして・・・」
ワールドニュースのアナウンサーが
取り乱したようすで、たくさんのニュースをしゃべっていた。
大雨で、花火師28人が行方不明
花火工場バクハツ7人が行方不明
火山が一日で38あたしくできました?
中東に花火?
消えた兵士1000人
砂漠に大量のプレゼントのコンテナが置いてあった?
中身は 本や、ノート えんぴつ ?
おしまい
ぼくは、あまりしゃべらないじいちゃんのことを
何にも知らなかった。
あんなにカッコイイじいちゃんを初めて見たし、
それから見る目が変わった。
人には、色んな歴史があるんだね。