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妹とステイホーム

 この話は2020年のコロナウイルス流行中に書いたものです。時事ネタとして書きましたがぶっちゃけこの話以降は話に出てきた新型ウイルスは出てこず普通に遊びに行ったりカラオケしたりします。この世界では流行が1か月足らずで終わったと考えていただければ助かります。

歩美「暇だ~。」


 僕の中学校は新型ウイルスの流行で1日の臨時休校になっていた。何やら感染者が出たらしく校内を全部消毒するらしい。幸いにも感染者は回復したらしいが念には念をということなのだろうか。


桜「私も暇~。」


桜の小学校も消毒になり僕と同じく休校になっていた。何やら中学校の感染者が小学校にも出入りする立場の人物だったらしい。まあどっちも公立だしそういう人も案外多いのかもしれない。僕も桜も急な休校だったので宿題が出ていない。なので暇なのだ。まさかこのご時世に出歩くのも無理だし。


桜「お兄ちゃん、ゲームしよ。」

歩美「ゾンビは嫌だよ?。」


桜はゾンビゲームがしたかったらしく僕がこう言ったらまた難しい顔をして考え始めた。この前いきなりゾンビを見せつけておいてまた一緒にやるつもりだったのだろうか。僕にも心があると言ってやりたい。


桜「じゃあ、相撲しよ!。」

歩美「嫌だ。密になるし。」


もちろん密になるからというのは言い訳に過ぎない。だって勝てるわけがない。135センチの僕がいくら頑張ったところで187センチの桜にとっては蚊がさしたようなダメージしかないだろうし何より桜のツッパリ一発で勝負がついてしまう。さすがに桜も冗談で言ったのかまたほかの案を考えていた。


桜「じゃあ、双六しよ!。」


双六か。これなら対等に戦えるしルールも二人ともわかっている。やるのは久しぶりだがたまにはいいだろう。桜に了解の返事をすると喜びながら自分の部屋に道具を取りに行った。こういう姿を見るといくら大きくてもまだまだ小学生なのだと少しほほえましい気持ちになる。


桜「お兄ちゃん持ってきたよ。」


桜が持ってきたのは市販の双六ではなく桜の自作と思われる双六だった。桜が作った双六。嫌な予感しかしない。


歩美「僕やっぱりやめようかな・・・。」

桜「男に二言はないんだよ?。それともお兄ちゃんは女の子だったの?。」

歩美「男だよっ!。」


ここまでいわれて引き下がるわけにはいかない。桜の思い通りになってたまるか!。変なマス一つも踏まずに1位になってやる!。


 まず僕からサイコロをふる。出た目は5だ。幸先のいいスタートといえるだろう。桜は4。僕より数字は少ないがマスに何か書いてある。


〈相手の頭を撫でられたら3つ進む。〉


歩美「撫でさせるか!。」


僕は手で頭を覆って撫でさせないようにする。桜はどうせ力ずくで来るだろうが負けない。


桜「これじゃ撫でられないね。」


僕の予想に違反して桜はあきらめたような顔でそう言った。なんだか少し寂しい気持ちになる。桜があきらめたので僕も手を戻してサイコロをふろうとする。


桜「いまだ!。」なでなで


桜は撫でるのをあきらめていなかったようで僕はなすすべなく撫でられてしまった。これはずるいでしょ!。


歩美「もお~、ずるいよ!。」

桜「ごめん、ごめん。でも撫でられないと分かったときのお兄ちゃんの顔寂しそうだったよ?。」ニヤニヤ


そんなことを言われたら僕は顔を赤くするしかない。心のどこかで妹である桜に撫でられるのを待っている自分はいなかったか自問自答する。答えはNO!。そんな気持ちは持ち合わせていない。たぶん。


歩美「少しリードされてしまったがまだまだ逆転は可能!。いくぞ!。」


勢いよくサイコロを振る。出た目はまた5。今日はついている。マスには文字があった。


〈相手の頭を撫でられたら3つ進む。〉


さっき桜が止まったのと同じ内容のマスだった。よし、僕もなでてやる!。


桜「いいよ撫でて。私は逃げも隠れもしないよ。」ニヤニヤ


そういって。桜は立ち上がった。そう立ち上がったのだ。僕も立ち上がったが僕の目の前には桜のおなかがある。僕は思いっきり手を伸ばす。背伸びもする。でも僕の手は桜の肩に触れるのが精一杯で頭はおろか顔にも届かない。


歩美「う~ん!・・・。届かない。」

桜「仕方ないな!。お兄ちゃんのために特別サービスだ!。」


そういって桜は僕のわきに手を入れて僕を持ち上げた。顔を見るに特に重くはなさそうだ。妹である桜に持ち上げられるのは屈辱以外の何物でもない。しかし今回勝つためにはこの屈辱も受け入れなければ。


歩美「わっ!?。でもこれで撫でられる!。」なでなで

桜「えへへ。お兄ちゃんに撫でられるの変な感じ~。」


身長が逆転する前はよくなでていたが桜はそんな昔のことは覚えていないのだろう。そもそも妹に撫でられる兄のほうが全体で見るとはるかに希少で変なはずなのだが。とにかくこれで僕も3マス進める。


~1時間後~

 勝負は終盤、僕と桜の駒は同じ場所にありゴールが5つ先にある。そして次にサイコロを振るのは僕。今回のすごろくでは5がいっぱい出た。この勝負もらった!。


歩美「やった、5だ!。」


ここぞというときに僕の運は答えてくれた。双六の中では桜にさんざんいじめられたが最後にゴールしたのは僕だ!。


歩美「やった!。桜に勝った!。」


桜に何かで勝ったのはいつぶりだろう。桜は大きくて賢いので何かと僕がいつも負けていた。とてもうれしい。


桜「おめでとう、お兄ちゃん!。でもゴールにも何か文字があるよ?。」


嫌な予感がする。恐る恐る読んでみる。


〈ゴール、おめでとう。敗者は勝者に祝福のハグを。〉


歩美「こ、こんなの聞いてないよ!。」

桜「うん、言ってないもん。じゃあ、やるね。」


悪びれもせずそういった瞬間、桜は僕に抱き着いてきた。く、くるしい・・・。そして桜は僕を抱いたまま横になった。


桜「少し疲れちゃったし寝よっか。」なでなで


横になって妹に抱かれながら頭を撫でられる。とても屈辱的だが大きな存在に守られているようで心地よい。意地もプライドも放り出して僕は眠りについた。

次の投稿日は2020年9月6日(日)です。

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