梅と桜
梅子「今日も雑用三昧だったわね。」
歩美「うん、雑用パラダイスだった。」
いつも通り学級委員の仕事という名の雑用を終わらせた僕たちは一緒に下校していた。幸いにも今の季節は夏、まだ外はある程度明るい。でも住宅地の中ということもあり人通りはまばらだった。
梅子「あんた、背伸びた?。」
待ってました!。実は最近背が1ミリ伸びたのだ。この前お母さんに計ってもらったから間違いない。誰かに聞かれるのをずっと待っていたのだ!。
歩美「うん!、1ミリ伸びた!。」ドヤっ
梅子「あんた、1ミリだけでよくそんなに誇れるわね・・・。」
委員長にあきれられてしまった。まあいい。この調子で背を伸ばしいずれは委員長を・・・。
梅子「まぁ、私も3ミリしか伸びてないんだけどね。」
歩美「!?。」
残念ながら委員長は僕の三倍も伸びていた。今はまだ135センチと137センチで”同格”だがこのままはなされて140センチを超えられたら委員長が1ランク”格上”になってしまう。・・・頭が痛くなってきた。
歩美「はぁ・・・。」
梅子「身長で悩むのはやめなさいよ!。似たような身長の私までみじめになるでしょうが!。」
委員長の激励が飛ぶ。まぁ、悩んでも仕方ないか。そう考えていると小学校があるほうの道から身長のランクが10ランクぐらい格上な人がやってきた。桜だ。
桜「また帰り道にあったね。」
歩美「うん。最近よく合うね。」
最近よく帰りに桜に会う。この前、桜にあったときは自分より背の高い女子小学生によってたかって撫でられるという屈辱を受けてしまった。しかし今日は1人のようだ。うれしいような残念なような・・・。いやまて。うれしいだろ。年下に撫でられなくて済むんだから。ここで残念なんて言っちゃったらまるで僕は年下に撫でられるのがうれしいみたいに・・・。
歩美「うう~~~。」
桜「一人で思い出して一人で悶えるのやめてよ。隣のお友達も困惑してるよ。」
梅子「大丈夫ですよ。春川君はいつもこんな感じなので。」
いつもこんな感じではない・・・はず。
梅子「挨拶が遅れました。春川君と同じクラスの秋島梅子です。春川君にはいつもお世話になってます。・・・春川君のお姉さんですよね?。」
当たり前といえば当たり前だが委員長は桜のことを姉だと勘違いしていた。向かい合ったままなのでランドセルが見えていない状態では間違うのも無理はない。
歩美「桜は僕のいもう―」
桜「ええ、私は歩美の姉よ。いつも歩美のことありがとうね。」
なぜか歩美は僕の話をさえぎって僕の姉を演じ始めた。
歩美「ちょ、ちょっと!。桜は僕の・・・。」
桜は僕が妹だという前に頭を撫でてきた。やっぱり気持ちいい。なんだか暖かいのだ。言葉が口から出てこない。このままじゃ本当に弟ということにされてしまう・・・。
歩美「さ、桜!。いい加減に・・・。」
桜「いい加減にするのはあんたのほうよ。またお姉ちゃんを呼び捨てにして!。」
梅子「私も気になってたわ。お姉さんを呼び捨てにするのはいけないと思うわ。」
どこからどう見ても僕が正しいのに現実とは非常なもので僕が悪者にされてしまった。そして僕はこの状態から逆転する方法を知らない。もう言うとおりにするしかない。
歩美「お、お姉ちゃん・・・。」
桜「お、言ってくれた。」なでなで
梅子「まぁ、素直なのはいいことね。」
桜「梅子ちゃんもありがとう。」なでなで
梅子「・・・えへへ。」
委員長は撫でられるのが好きらしくなんだかだらしない顔になっている。まえも優斗に撫でられてだらしなくなっていたっけ。あの時は委員長も恥ずかしがっていたが今回は相手が年上だと思い込んでいるので問題ないんだろう。
桜「梅子ちゃんのほっぺぷにぷにだね。」ぷにぷに
梅子「ありがとうございましゅ・・・。」
桜「髪もサラサラ。」サラッ
梅子「それほどでも・・・。」
桜「そして何よりもかわいい!。」なでなで
梅子「えへへ・・・うれしい!。」
あの高飛車な委員長がとろとろに甘やかされている。あの委員長にこんな面があったとは・・・。ふと委員長と目があう。見られていることに気が付いたのか急に顔を赤くして桜から離れた。
梅子「こ、これは違うの!。」
歩美「い、いやまあ忘れるよ。」
梅子「ありがと・・・。」
少し気まずくなる。ふと桜を見るともう帰ろうとしていた。いやこんな空気にした責任を取ってくれよ・・・。
桜「じゃあ、私は先に帰るね。バイバイ、梅子ちゃん、お兄ちゃん。」
桜がようやく僕のことをお兄ちゃんと呼んだ。背を向けた桜の背中には赤いランドセルがある。
梅子「!?、・・・説明を要求するわ。」
いつもの調子に戻った委員長がジト目でこちらを見ていた。
梅子「・・・つまり桜さんはあんたの妹ってわけ?。」
歩美「うん。信じてもらえないかもしれないけれど。」
委員長に一通り説明した。信じてもらえないと思ったが案外あっさり信じてくれた。意外だ。
歩美「今日は妹がごめんね。」
梅子「別にいいわ。私も・・・その・・・まんざらでもなかったし。」
委員長のこういう認めることは認めるのはすごいと思う。僕だったら絶対ごまかしてしまっている。そうこう話しているうちに分かれ道が迫ってきた。
梅子「何で私がこの話をすぐに信じたと思う?。」
委員長が急に話しかけてきた。なんでだろう。わからない。考えていると。分かれ道に差し掛かった。
梅子「私にもいるの。桜さんと同じくらいおっきな妹が。」
歩美「!?。」
驚いた僕をしり目に委員長は笑みを浮かべながら家のほうに帰っていった。
次の投稿日は9月23日(水)です。




