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1日お姉ちゃん

歩美「これ本当に着るの?。」

桜「当たり前でしょ。約束なんだから。」


思わず再確認する。それはそうだろう。もし桜が持ってきた服がもう少しかっこいいものやせめて中性的な服だったら僕も確認なんてしない。しかし桜が持ってきた服はこってこての女児服だった。


歩美「何でこんなことに・・・。」

桜「お兄ちゃんが腕相撲で負けたからでしょ。相変わらずの負けっぷりだったよ!。」


負けっぷりがいいなんて言われてもうれしくない。だいたい兄を妹にするなんてあまりにも無茶苦茶すぎる。しかも持ってきた服か察するに桜は僕を幼稚園児並みの妹にするつもりのようだ。さすがに受け入れられない!。


歩美「桜!。さすがにこれは・・・。」

桜「約束破るの?。」ギロッ


50センチ上から桜の目がにらみつけてくる。今逆らったらもっとひどいことされてしまうかも・・・。ドキドキする。顔が熱くなってきた。


桜「にらみつけられてそんな顔するなんてお兄ちゃんもいい趣味してるよね。」

歩美「それはどういう・・・。」

桜「まだ知らなくていいよ。」


どういう意味だ?。




 そうこうしてる間にしびれを切らした桜に女児服と一緒に部屋に監禁されてしまった。桜曰く女児服を着たら出てきていいらしい。でもこれは・・・。フリルが付いた真っ白なブラウス、赤いスカートにサスペンダー、黄色の通学帽、まるで漫画の世界から出てきたような典型的な女児服だ。仕方がないのでまずブラウスを着てみる。学校の制服のものと違いフリフリが付いていて変な感じだ。次にスカートをはく。特別短いわけでもないのになんだか足がスース―する。ふと鏡を見るとどう見ても小学生な自分が映っていた。低い身長、幼い服装、真っ赤になって湯気が出ている童顔で女顔な自分の顔、自分なのに自分じゃないような感覚。


桜「お兄ちゃん、着替え終わった?。」


待ちくたびれたらしい桜が突然部屋に入ってきた。そして僕の後ろに立つ。鏡には僕と桜の二人が映っていた。どこからどう見ても小学生の女の子にしか見えない自分と一緒にスタイル抜群のお姉さんが映っていた。恥ずかしすぎて顔が熱い。


歩美「さ、桜・・・。」

桜「ちゃんと着替えられたね。でも一つ忘れてるよ?。」


そういって桜は僕の頭に黄色の通学帽をかぶせてきた。鏡には低学年といわれてもおかしくない自分の姿が映っていた。


桜「お兄ちゃん、かわいい!。」がばっ

歩美「!?。」


く、苦しい!。いきなり桜が抱き着いてきた。僕の顔が桜のおなかに押し付けられる。本来なら妹に楽々抱きしめられておなかに押し付けられる兄なんておかしいと思う。しかし鏡に映っている光景は極めて自然なものだった。大きなお姉さんが小学生を抱きしめている自然な光景だった。何が自然で何が不自然なのかもうよくわからない。


桜「じゃあ、罰ゲームスタート!。今日寝るまでは私がお姉ちゃんだよ!。あゆちゃん!。」

歩美「はい・・・。」


今日と昨日でいろいろありすぎて反論する気も起らない。しかしさすがにすぐお姉ちゃんと呼べるほど僕も素直ではない。意地でも呼ばない!。


歩美「僕はお姉ちゃんのこと絶対お姉ちゃんって呼ばないから!。」

桜「おにい・・・あゆちゃんってそういうところあるよね。」


なぜかあきれられてしまった。僕はお姉ちゃんのことをお姉ちゃんって呼ばないって言っただけで・・・。あ。


歩美「さ、桜のことをだよ!。」

桜「あゆちゃん、かわいいなぁ~。」なでなで


頭を撫でられてむずむずする。なんだかんだ撫でられるのは気持ちがいい。通学帽ごしじゃ物足りない。でも帽子を脱ぐとなでなでも終わってしまった。悲しい。


桜「そんなもの欲しそうな目でこっちを見ないでよ~。」

歩美「み、見てないよ!。」


別に撫でてもらいたいわけじゃない。撫でられると気持ちがいいだけなのだ。だいたい桜が意地悪をするのがいけないのだ。昨日の腕相撲だって一方的だったし。もっと小柄な兄にやさしくしてくれてもいいはずだ。


桜「まぁ、いいや。ゲームしよ。」

歩美「うん、いいよ?。」


唐突な誘いに考える暇もなくOKしてしまう。でもうちにゲームって何があったっけ?。桜に手を引かれながら考える。うちにあるゲームは・・・ゾンビじゃん。


歩美「や、やっぱやめる!。」

桜「相変わらず手遅れなところまできて気付くね。」


桜はそういうと僕を膝の上に座らせて腕でホールドしたうえでゲームを始めてしまった。始まったゲームはもちろんゾンビハンターズ。怖い・・・。


桜「怖いのでやめてくだチャイ!、お姉ちゃん!。って言ったらやめてあげるね。」


突然とんでもないことを言い出した。いくらなんでも恥ずかしすぎる。おそらく桜はこうすればすぐにでも僕がお姉ちゃんと呼ぶと思っているのだろう。耐えてやる。意地でも耐えてやる。この命潰えようとも耐えて―


〈ゾンビ:ぐおおおおおおおおおおおおお~~~~~~~。〉


歩美「こ、怖いのでやめてくだチャイ!。お・・・お姉ちゃんっ!。」


僕の意思はプライドと一緒に砕けていった。あまりにも早い降伏を桜お姉ちゃんからバカにされ続けたのは言うまでもない。

次の投稿日は9月20日(日)です。

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