悪女の王子様 END6 「はい」
「平民のアタシからすれば差なんてないわ」
「邪教は排除だ!」
王子クリストフが現れてしまった。差し詰めチェックメイトということであろうか。
「これからミサに行くけど、アナタもどう?」
焦る素振り一つ見せず、まるで日常会話のごとく声をかける。
その隙に金の鎧の男の振りかざした剣が腹部を貫いた。
そういって命を乞いあがくでもなく、不敵に笑いながら膝を折る。
捕らわれるわけにはいかない。残る力で拠点へワープした。
魔法陣の描かれた床から体を引き擦って、リルは彼の人を探す。
「リル!」
死は平等に訪れるもので、いつかこうなることは可能性の一つにある。
いざ目の前で息絶えようとしている姿を受け入れられるかどうかは別だ。
「もうしわけありません。少しヘマをしてしまいました」
人生はみな等しくあっけないもので、死からはいかなる賢人も逃れられない。
神の加護など存在せず、今日の生は偶然からなるものに過ぎぬのだ。
聖教は死を救いとし、邪教は停止とした。
聖教では死者の魂が冥界に留まるとし、邪教では魂そのものを否定した。
聖教では魂は転生せず、邪教では生者が意思を継ぐ。
『うさぎのメアリーがしんでしまったの……』
『大丈夫、メアリーは今も君の傍で見守っているよ』
「なら僕が意思を継ごう」
死は終わりと始まりに過ぎない。
【信徒としての最期】