アリアの夢 (改訂版) 共通1: かたき討ち
『アリア大変だ! お父さんとお母さんが!』
また幼い頃の夢を見ていたのね。最近は定期的に幼い頃のことを見てしまう。
あれは音楽家の両親が王都ジュグで王様に演奏を披露しにいった日。
両親が出かけて一週間が経っても戻らず。街の人も帰りが遅いと心配していた。
もうすぐ帰ってくるよと近所のおばさんが励ましてくれたりした。
「あの人はどうしてるかな……」
両親を待つ間は当然林檎やパンを買って生活することになる。
その帰り道に林檎をかじっていると、家の近くに青年がいたのだ。
彼は不思議な雰囲気を持っていて、長い紺色の髪とマゼンタの瞳が綺麗だった。
『お兄ちゃんどうして悲しそうなの? どこか痛いとこあるの?』
『いいや、どこも痛くはないさ。……ただ、私はどうしようもなく
埋めようのない孤独を感じているんだ』
だから私も寂しくて幼い頭でどうしたらいいか考えた。
あの人の寂しい気持ちとどちらが大きいかなんて関係なく、ただ寂しさを分かちたかった。
『あのね、寂しいとママがぎゅーってしてくれるんだ』
幼い私には言葉を紡ぐ力がなく、そのばに座る彼へ黙ってしがみつくことしかできなかった。