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屋根裏の君は幸福を探して 共通1

少女は屋根裏部屋にいた。彼女の一日はそこで終わる。

村の人々には体が弱いと伝わっている。しかし、彼女は健康そのものだった。

ある日、村に魔導戦士の一家がやってきて、一人息子が窓辺の少女を見つける。

どうして病気でもないのに彼女がそこから出てこないのか、少年は気になって毎日訪ねた。


『どうしてきみはそんなところにいるの?

外で遊びたくならないの?』


家を出てはいけないと、両親が言うから出ない。

自我の目覚める前の子供は親の言うことをきくしかなく、それ以外に選択肢がないから。


庭のソトってどんなところ?

少女はそこで初めて広い世界が気になった。


少女は絵本の文字を指さす。


“ことばはなせない”


少女は魔力の弱い人間が近づけず、教えるものがおらず、誰も読み書きを教えられなかった。


これはもっと小さな頃に近づいても平気な旅人に貰った。

文字は読めなかったが絵を見て笑っているところが好きだった。



訪れて数日で気がついたことだが、少女は強い魔力をまとっている。

魔力が高いほど髪の色素は明るいもので、少女の髪は金、両親は黒と焦げ茶。

たまたまだといえばそうなのだが、子供ながらに親の髪色は子に移るものと認識していた。

特に少年の一族は魔導師の中でも高位にあたる。故に髪色と目の色は一族の特色が出る。

たとえば少年の父は他の一族からの入り婿のため緑、しかし母は一族の家長で赤髪だ。


もしかすると、両親が少女を閉じ込めているのはそのせいだろうか?

よくわからないけれど、あのままなんてかわいそうだ。

子どもらしく正しくないことへのいら立ちが沸き上がる。


少年は両親に思うことを感情交じりに話す。

母親は真っ先にボコりに行こうと言い、父親はそれを諫める。

まずは大人同士で話してみるからと、泣きそうな少年を宥めた。


少女の両親は仕方がないんだと言った。

あの娘は、ルーチェは強大な魔力を持っている。

村に魔術師はおらず、屋根裏に置いた舶来ものの封石がなければ周囲に影響を及ぼしかねない。


そうなるべくして生まれる一族とは違う。

生まれてはならないところに突然変異で誕生したのだ。


泣き崩れる夫妻を咎めることはせず、疑問を投げかけた。


『ならば王都へ向かえばよいのでは?』

『……村から王都へ向かう費用もなければ、転移魔法も使えません』


赤髪の女は彼女のことを引き受けると言う。


『よろしいんですか?』

『うちは女系(アッゾマネス)でね、娘がほしかったんだが……

将来はハイロダルタンダを継いでもらうかもしれない。それでもいいかい?』


あの子はそのほうが幸せになれる。両親はそういった。


『父上と母上がいいっていうから、ここを出よう!』


外の世界があることを、少年は教えるのだった。

当然言葉はまったくわからなかったので、少年に微笑んだ。


それから10年が過ぎると、ルーチェは師とする少年の母の影響か、勇ましい女戦士になっていた。


「ぐは!」

「次!」


青い鳥を肩に乗せた金髪の少女が、大男を吹き飛ばした。


「今度やったら、自首にも行けない体にしてやる!」

「お~しばらく見ない間にめちゃ強くなってんな」


「イリス」

「ルーチェ、鍛錬がんばってんじゃん」


王都マージルクスは村と違い、魔力があればあるだけ困らない。

ギルドでも評判の冒険者と呼ばれている。


「大変だ! アタイに勝てる男がイリスしかいやがらねえ!」

「……なんでこんな口悪くなったんだよ?」


言葉を話せるのは喜ばしいが、身近な人間から言葉を教わるだけで、

どこかの不良のような口調になっているではないか。なぜこうなったと落胆する。


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