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【第一問】女子共はキモくてウザくて仕方ない。(Part 4)

This novel will be abandoned.


◇ ◆ ◆ ◇


午後4時45分、部活に所属していないボクは、そのまま帰宅。

だから、きゅんきゅん可愛い後輩キャラの『せんぱ~い♪』も勿論ない。

無論、それはボクにとっては非常に嬉しいことで、非常に喜ばしいことだ。

「ただいまー」

ボクはお決まりの挨拶を口にし、外靴を脱ぎ、ドアが不意に閉まっている洗面台に向かった(玄関の広さは一般家庭通りで、向かって正面に洗面台がある)。

そのまま洗面台の方へ進み、ドアを右へスライドして開ける――と、

「あ、お帰り、お兄ちゃん」

妹の(しだ)がそこにいた。

そんな恩の今はというと、Yシャツ姿で、且つビショビショに濡れていて、さらに下半身丸出し状態だった(水色のパンツは着用している)。

「って、何でビショ濡れになってんだぁぁぁぁぁ! ブラ透けてるぞぉぉぉぉぉ!」

Yシャツは水に浸ると、当然身体が透けて見えてしまうので、身体のあちこちがいやらしく見えてしまう。

何だか普通に自主規制が必要になってしまう程に酷く可愛い(?)容姿だった。

ひょっとして下校中、誰かに水でもかけられて、挙句の果てに写真でも撮られたのか!?

いや、もしかしたら学校で暴力的ないじめにあって、それで透け透け姿を男の面前で晒されたとか――一応あり得ない話という訳ではない!

「ボクの大切な妹の身に、一体何が起こったんだぁぁぁぁぁっ!?」

「見て分かんないの、お兄ちゃん? この姿態を見て分かんないの、お兄ちゃん?」

妹は顔を傾げながら平然とボクに言う。

「姿態というよりほぼ裸体だろ……」

って、ちょっとちょっとちょっとちょっとちょっと!

目の前にいるのはボクの妹だ! 紛れもなく可愛い、清楚なはずの妹だ! 大好きな妹で、そして唯一無二の妹なんだ! だけど、だけど! 今はそれよりも……!

ボクは妹の濡れた両肩を揺さぶり、必死に聞いた。

「お、お前、何があったんだ!? お兄ちゃんに相談しろよ!」

「? シャワーに入ったからだよ? どう、この姿。ファッション誌並でしょ」

妹は何の変哲もないような風をして、淡々と答えた。

何処がファッション誌なんだよ!? 18禁同人誌の間違いじゃないだろうか?

「Yシャツ脱がずにそのままシャワーに入ったということか?」

「うん、脱ぐの忘れてた――というよりも脱ぐのが面を倒して臭かったから!」

「というかそんな姿をいつまでもボクに見せてんじゃねーよ。とっとと衣服を着れよ」

いくら家族でも歳が歳だ。年齢的にはとっくに思春期を迎えている。それに、ボクだって一応は男子高校生で、そして当の妹は中学三年生――色々と女らしく成長する時期で、やはり胸とかその他諸々の部位も大人びてきている。もしもボクが正常な男子だったら、思わずえっちな奇行に走ること間違いないだろう。勿論、そんなことはしないよ?

「え? お兄ちゃんは私のえっちな身体想像で絶賛興奮中じゃないの? このブラジャー透け透け状態に見事に欲情してるんじゃないの? 新品でピンクの色花柄ブラに甚だしくテンションマックスになってるんじゃないの?」

「しねーよ! 実の妹するか! そんなこといいからさっさと服を着ろ! 自分が可愛いからっていつまでもそんな格好してんじゃねーよ。それに風邪引いたらどうするんだ!?」

「可愛いだなんてありがと、お兄ちゃん」

「いい部分だけ聞き取ってるんっじゃねーよ!」

「というか裸でもいいじゃない。だってここは私の家だよ? それなのにどうして服なんか着なきゃいけないの。私の自由じゃない。それにせっかくサービスしてるのに」

「だから、そんなサービスいらねーって言ってるだろ……」

何度も言うが、ボクは平凡の男子高校生ではない――萌えや甘えに寛容ではない。

それはつまり、通俗的な感性だとか、平均的な見方とか、常識的な見解を、一男子高校生として持ち合わせてはいないということを示している。したがって、妹のサービス裸体はボクにとって何ら効果はないし、ありがた迷惑の部類に属するということだ。

「あ、そういえばお兄ちゃん。さっきお母さんから電話がかかってきて、それで今日はどうやら久しぶりに家に帰ってこれるらしいよ! これじゃあ今日は大好きなお兄ちゃんと寝れないなー」

「お前となんか寝ねーよ――って、母が帰ってくるのか……」

母のことを『お母さん』とは表現しない。

「ま、まあ、報告ありがとう。……で、何時くらいに帰ってくるんだ?」

「時間は言ってなかったよ? そっか、お兄ちゃん――」

妹はボクの心中を察してくれたのか、ちょっと悲しげな表情と口調で、

「お兄ちゃん、お母さんのこと好きじゃないもんね――……」

と、何処か口惜しむように言った。

「……ぃ、いや」

しかし、ボクは否定する。

「ボクが嫌いなんじゃなくって、あっちの方がボクのことを……」

ボクは母親に嫌われてる――それ相応のことをしたから、嫌われている。

「でもさー、お兄ちゃんがあんなことしたからでしょ――――近親相姦」

「そんなことしてねーよ! 真顔でそんなこと言うなよ!」

「ま、どもそれはお兄ちゃんの自業自得のような気もするけどね」

妹は微動だにせず、無表情でさらりと言う。

「…………」

「…………」

場が一気に気まずくなり、そして数秒、嫌な沈黙が続いた。

「ご、ごめんね、お兄ちゃん。その話はしない約束だったね」

「……ぃ、いや、もういいよ。それは終わったこと、過去なんだから」

「……じゃ、じゃあ今日は、よ、夜、な、何食べたい?」

妹は平凡な会話に戻そうと躍起になって言うが、やはり気まずさは残存してしまう。

「今日の夜ご飯か……、何か美味しいものがいいなー」

「あ、今日のお昼の弁当、美味しかった?」

「う、うん。そ、それなりに美味しかった」

味自体は確かに高レベルだったけど……

お昼にあんなことがあったから、な……

「あれ? お兄ちゃんの顔があんまり冴えてない。本当は美味しくなかったの? お世辞で言ってもらってるんだったら止めてくれる? 自分の為にならないし、成長できないじゃん。もっと料理について勉強しよって気にならないじゃん」

「逆にそれで不味かったって言ったら、傷付いちゃうじゃん」

「え? そんなことないよ? 私、こう見えてドMだから!」

妹がドMな訳ないだろ! どちらかと言うとドSじゃないか? いつもいつも性的暴言でいじめてくるじゃないかよ!

「……ドSとドM、いじめ……」

喜入(きいれ)(よい)――と、ボクの脳裏にその名が()ぎった。

「? どうしたのお兄ちゃん。やっぱりお世辞だったの? それとも何かあったの?」

ボクは妹に小さく頷き、「……ぅん。まあ、ちょっと色々」と、渋々言った。

「もしかしてあのオムライスに違う女の涎でも入ってたのに気づいちゃったの?」

「そもそもオムライスに唾液が入ってたこと前提かよ!?」

「ま、隠し事しないで言ってくれる? 何、お昼に誰かと喧嘩したの? 友達いないのに」

「……おいおい、よく分かったな。超能力者かよ、お前は」

「だっていつも隣にいる人なんだよ? 大体何を考えてるのかくらい、すぐに察しがつくもん。私の現時点の予想としては、誰かにあの件に関して触れられて、それでお兄ちゃんが気をまずくして、それで私の作ったオムライスが不味くなった、的なことがあったと」

「怖ぇぇぇぇぇっ!? 何で千里眼使ったみたいに、全部お見通しなんだよ!」

それともボクの顔にそう書いてあったのだろうか?

「やっぱりそうだったんだー。ま、そんなことだろうと思ったよ」

妹は同情するように言い、自然に流す。

流石は妹――ボクの唯一の理解者だ。

「はぁ……、じゃあ分かったよ、全部話すから」

とうことで、ボクは喜入との喧嘩について、終始一貫説明することにした。

「へー、お兄ちゃんって学校でもドMなんだ~。良かったね、ドS系の女子がいて」

「いやいや、そいつは別段ドS系って人じゃ、そもそもないんだ。ボクが学力で負けててそれで植民地支配を受けてる? 普通ならばあり得ない話で、アニメや漫画みたいだけれど、でもあいつだけは普通じゃない。頭も心も身体も胸も」

「胸も?」

「何でもない」

それはさておき、喜入に普通という概念が存在していないとボクは思う。

何をするにも平凡的な要素はあいつには絶対的にない――ボクと同様に。

「へー、身体もいいんだその人。私のとその人のおっぱい、どっちが大きい?」

ちなみに、ボクは妹に詳らかに昼の出来事を話したが、しかし『喜入宵』という名前を予め伏せておいた。下手に教えると――あの件を想起してしまいそうだから。

「いやいや、知らない知らない知らない」

「お兄ちゃん、残念だけどもうバレてるよ? そんな意味深な反応で否定している時点で何もかもお見通しだよー」

「ほ、本当に見てないし確認したこともないし知りたいとも思わないし」

実際はまあまあ大きいが、ボクは口が裂けても言いたくなかった。

一応勘違いされては困るので言っておくが、ボクはおっぱいも好きではない。

てか、どうして女子(メス)だけ、胸が大きくなるのだろう……? 甚だ疑問である。

いや、ボクにとっては超絶興味のないことだ。

「それに女の身体について、ボクは無関心なんだよ」

「またまた嘘言って、本当は見てるんでしょ? 触れちゃってるんでしょ?」

「っ!? 確かに今日はちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、事故で触れた……けど、だからと言ってサイズまで分かる程触れてない! それにあっちの方から身を寄せてきたんだ! ボクは無実だ! 清廉潔白だ! 完全たる被害者だ!」

「も、もしかしてお兄ちゃん。一緒にえっちしようとして、それを事故扱いにして――」

「そんな訳がねーだろぉぉぉぉぉ!」

大体、喧嘩中(仮)みたいな人物と、そんな如何わしい行為ができるはずもないだろうに……、というか、話が大胆にずれている。


その後、妹は自分の部屋に行って、桃色の土日祝日限定の浴衣姿に変身した。

妹はそのままキッチンへ料理を、ボクはそれができあがるのをリビングの白いソファーで待っていた――我が家はキッチンとリビングが隣接しているので、妹と直に話せる。

「ねぇ~」と言いながら、妹はボクを可愛らしく呼び、

「どうかな、今日の私の格好? 先週の紫の柄物より可愛いかな?」

「勿論可愛いよ。よく似合ってる。お前って浴衣が似合う、ザ・浴衣女子って感じがするな。日頃から見慣れてる所為かもしれないけど」

妹が土日祝日限定で浴衣姿になるってのはちょっとおかしな話で、聊か二次元世界の女性ヒロインのような気もするが、でもボクはその和装姿を案外気に入っている。

見ていると、何だか心がほっとする。

「そう?」

「ああ。でも何で土日祝日だけそんな姿になるんだ? これから夏だから衣替え?」

「え? キャラ作りだよ、キャラ作り――じゃなくって、単に私の好きな小説シリーズの主人公の妹が年中浴衣だから、それを真似してるんだけだよ」

「どんな理由だよそれ、その小説の原作者に謝れ!」

本当に本当に本当に、どんだけ二次元好きなんだよ、この妹。

「どう? 恋愛的な意味で惚れた? 私の晴れ姿に」

「惚れねーよ。いきなり突拍子もないこと聞くなよ」

妹にそういう意味で惚れるとかあり得ないだろ!

妹と恋愛とか――青春とか、三次元じゃあり得ないだろ!

まあ、そうは言うものの、しかしボクは今現在、この妹を家族的な意味で結構好きになっているのは事実(勿論、そういう禁断の道に落ちる方の好きじゃない)。

「何で惚れないの? 女として見てくれないの? 私のこと」

「お前のことは女として見れるけど、でも妹要素が絡んでる時点で、ボクという兄がお前を女と見做したら、大問題になるだろ!」

カレーのいい香りがし始める中、ボクは叫んだ。

「って、今日はカレーか。美味しそうだな」

「カレーと言えば、やっぱり隠し味だよね、お兄ちゃん」

地味に声を弾ませて、妹は言った。

「隠し味、ね」

「あれあれ? もしかして私が唾液を注入しているところを、また回想してるの?」

「そんなことしてないから」

と、そうこうしているうちに、カレーが完成した(本当はまだまだ妹と会話していたのだが、今回は割愛させて頂く――どうせ汚い話なのだし)。

「ほら、もうカレーできるから食卓テーブル綺麗に拭いてくんない? ついでに私の穴も汚れてるから拭いて、お兄ちゃん! 大丈夫、えっちな方じゃないよ?」

「自分の穴は自分で拭け! お兄ちゃんにやらせるな!」

そして、妹の飯が完成し、ボクたちはテーブルに並んでそれを食べる――そんな最中、

「ただいまー、恩」

「あ、お帰りお母さん!」

お母さんという名のお母さんは帰って来た。

「…………」

「…………」

ボクは勿論一切顔を合わせようともしないし――

「お帰り」とか「ただいま」とか、そういう挨拶なんてしない。

そもそもお母さんを『お母さん』と呼ぶ権利は、もうボクから剥奪されている。

ちなみに、お父さんはとっくの昔に死んでいる――自ら死んでいる。

自殺している。


This novel will be abandoned.

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