【第四問】妹は唯一無二の実数だ。(Part 1)
【第四問】妹は唯一無二の実数だ。
6月29日水曜日のこと、連立高校文化祭まで残り2日となった。
「――あのー、それでー、これは……?」
「…………」
「…………」
「…………」
一番忙しい時期であるはずなのにも関わらず、ボクたちはゆっくりくつろいでいた――それも、実の妹の部屋で、のんびりと、のびのびと。さっきまで学校にいたはずなのに。
どうしてか?
それは単に作業が早く終了してしまったからだ。
例の『お化け屋敷&風俗店』も既に開店できる状態に、ほぼなったからだ。
で、それで、それから何が起こった……?
「で、だ、誰か、状況説明を……」
「…………」
「…………」
「…………」
ボク以外の人間たちはひたすら黙秘を続けている。
そして、その人間というのも――全員が女子である。本来はボクの憎むべき、忌み嫌うべき、下等生物に属する者共と称すべきだろう、彼女たちなのだ。
それが、どうしてボクの家にいるのだろうか…………?
「どうしたの、お兄ちゃん? そんなに慌てた口調で。もしかして緊張してるの?」
何処か詰るように、にやけながら聞くのは、ボクの妹――剣山恩。
「あれ、剣山貴仁さん? どうかなさいましたのですか? まさかまさか、実の妹の部屋でくつろぎながら、そして沢山の可愛い――それも二次元のように、絵に描いたように美しい女子に囲まれているこの状況に満足していないのですか?」
実に楽しそうに、面白おかしく笑みを浮かべて言うのは、礼井野伊代。
「ちょ、ちょっと伊代、人の家に来てるんだし、いくら実の妹さんの前だからって、実のお兄さんだからって、そういうことは言っちゃダメなんじゃないかな……?」
少々柔らかい口調で大切な親友にお咎めを入れるのは、筑波実輝。
「…………」
女子共の文言に狼狽し、唯一微笑を浮かべていないのは、ボク。
計四名(女子三名、男子一名)。
つまり、ボクはハーレム状態という阿鼻地獄にいるのだ。
◇ ◆ ◆ ◇
――貴仁の妹さんって、剣山恩さん?
――では今度、剣山家に遊びに行ってもいいですか――久しぶりに。
――以前にお伺いした際、剣山貴仁さんは妹と一緒に毎日ベッドの上で戯れていらっしゃったじゃないですか。
――えっとね。確かその人は、何処かの養子なんだってさ。
――伊代お姉ちゃんじゃない?
彼女らの発言を思い返して、ボクは反芻してみる。
礼井野伊代という女は、ボクの妹の真の名前を周知していた。ボクの家に来ることを『久しぶりに』と表現していた。そして、経験談――一緒にベッドで戯れていたという過去を礼井野は言っていた。
妹は礼井野伊代を僅かながらも知っている風だった。それに、礼井野伊代のことを態々『お姉ちゃん』と呼んでいた。
一体、それらの言葉にどんな意味があるのだろうか、しかし考えてみても全然分からなかった――――ただし、真実を言われるまでは。
「私は元剣山家の一員です。
本名『剣山恵』と申しますですわっ」
礼井野伊代本人がそう断言したのだった――
礼井野伊代は元々、ボクたちの母親の腹から生まれた子で、
礼井野伊代はつまり生き別れであり、そしてボクたち剣山家の元家族である。厳密に、生物学的には完全に現家族ではある――ただそれだけのことだったらしい。
「ちなみに、私の年齢は――本物の歳は十五歳で、高校一年生にあたりますですわ」
年齢差から鑑みるに、明らかにボクの方が年上で、明らかに妹の方が年下で、つまりは礼井野伊代という名の『剣山恵』はボクのもう一人の妹であり、恩の姉にあたるということになる――――礼井野の言い分を軽くまとめると、こうなる。
「何でしたら今から流行りのDNA鑑定でも行いますですか? べろ■ゅーでもって」
◇ ◆ ◆ ◇




